女子高生殺害事件の被害者遺族らを傷つけるネット投稿など、裁判官としての威信を著しく失う非行をしたとして訴追された、仙台高裁の岡口基一裁判官(職務停止中)の弾劾裁判の第8回公判が7月26日、裁判官弾劾裁判所(裁判長:船田元議員=衆・自民=)であり、岡口裁判官側の冒頭陳述がおこなわれた。

弁護人はまず、弾劾裁判は憲法で保障される裁判官の身分保障の例外であるなどとして、適正な手続きと適切な判断をするよう要求した。

岡口裁判官が遺族に対して不適切な投稿を繰り返したことは認めつつ、亡くなった女子高生の命日である2019年の11月12日に、遺族が「洗脳」されていると投稿したことについては、偶然で命日だったとは知らなかったなどとした。

岡口裁判官の訴追理由の1つは、この女子高生殺害事件の判決URLを貼ったSNS投稿だが、その判決は本来公開されないはずだったのに、裁判所が誤って公開したものだった。

弁護人は、山中理司弁護士が当日に公開した裁判所ホームページの判決掲載基準について書かれたブログ記事を紹介するために投稿したもので、命日をねらったわけではないと説明した。

このほか、もともと裁判所側からツイッター利用について圧力をかけられていたことから、対裁判所の意識が強く、遺族への配慮を欠いた対応をしてしまったなどともして、悪意があったわけではないことを強調した。

岡口裁判官は2024年春に任期満了となるが、最高裁に再任を希望しない届出をしたといい、罷免されてもされなくても裁判官ではなくなる。仮に任期満了までに罷免されると、「5年を経過し相当とする事由がある」ときまで弁護士にもなることができない。

弁護人は、岡口裁判官の言動は、裁判官ではなくなることに加え、法曹資格まで失わせるほどには至っていないと考えている、とまとめた。

次回期日は9月13日

●弁護側がスクリーン用意、傍聴席に投影

この日の期日では、弁護側が2枚のスクリーンを用意し、裁判員と傍聴席に向けてスライドや証拠を投影した。

第2回期日や第7回期日でも、訴追委員会側の証拠調べでスクリーンが使用されたが、裁判員側しか向いておらず傍聴席は見えないとして、弁護側が異議をとなえるシーンがあった。自ら裁判公開の原則を実践した形だ。

なお、この日の裁判員は山本有二裁判員(自民・衆)が欠席。予備員の補充がなかったため、裁判員は13人だった。山本裁判員はここまでの8回の期日のうち、半分の4回を欠席していることになる。

「命日の投稿、わざとじゃない」 岡口裁判官の弾劾裁判、弁護側ターンへ