米アマゾン・ドット・コムはこのほど、米南部フロリダ州に人工衛星を打ち上げるための準備施設を建設中だと明らかにしたロケット人工衛星を接続するための施設で、建設に1億2000万ドル(170億円)を投じる。

JBpressですべての写真や図表を見る

人工衛星とロケット接続する施設

 施設の場所はケネディ宇宙センター内。面積は約9300平方メートルで、大型ロケットペイロードフェアリング(ロケット先端部分)を収容するための高さ約30メートルのクリーンルームを備える。

 米CNBCによれば、これは衛星を打ち上げるための最終段階の1つを担う施設。製造オペレーション担当副社長のスティーブ・メタイヤー氏によれば、2024年内に建設を完了し、25年初めに量産衛星の接続作業を開始するという。

アマゾンの衛星通信「Project Kuiper」

 アマゾンは「Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)」と呼ぶインターネット衛星ネットワークの計画を進めている。計3236基の人工衛星を打ち上げ、それらで構成する通信衛星ネットワークで世界中に高速ブロードバンド接続を提供する計画だ。

 アマゾンによれば、今後数カ月以内に2基のプロトタイプ衛星を打ち上げ、24年にも企業顧客用試験サービスに向けた衛星を打ち上げる。

 これに先立つ20年、アマゾン人工衛星の研究開発拠点を米ワシントン州レドモンドに開設した。22年10月には専用製造工場を同州カークランドに開設すると明らかにした。敷地面積は、それぞれ2万平方メートルと1万6000平方メートル。フロリダ州の打ち上げ準備施設では、ワシントン州で製造された人工衛星をフロリダ州に運び、最終的にロケットと接続する。

大型ロケットも確保、準備着々

 米アマゾンは、大量の衛星を打ち上げるため77基の大型ロケットを確保している。22年4月には、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏率いる米宇宙開発ベンチャーのBlue Origin(ブルー・オリジン)や、米United Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス、ULA)、フランス商業衛星大手Arianespace(アリアンスペース)の3社とそのための契約を結んだ(発表資料)。

 一方、衛星通信サービスを利用するには利用者側で、アンテナなどを組み込んだ専用端末が必要になる。アマゾンは23年3月、Project Kuiper専用端末3種のデザインやサイズ、性能仕様を公開した(発表資料)。

 Project Kuiperには現在、約1400人の従業員が携わっている。前述したワシントン州のレドモンドやカークランドのほか、カリフォルニア州サンディエゴ、テキサス州オースティン、ニューヨーク市、首都ワシントンにもプロジェクトの拠点がある。ロイター通信によると、アマゾンはProject Kuiperに総額約100億ドル(約1兆4200億円)を投じる計画で、今回のフロリダ州での投資はその一環となる。

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  iPhone 14の「緊急SOS」でスマホ衛星通信の競争勃発

[関連記事]

ベゾスもついに宇宙に!宇宙空間を巡る米中覇権争いのリアル

宇宙利用時代の深刻問題、中国・ロシアがまき散らす宇宙ゴミ

(写真:アマゾンHPより)