夕食の最中に入れ歯を失くした88歳の女性が、家族とともに救急外来へやってきた。女性は痛みなどを訴えていなかったが、念のために検査を行うと、女性の胃の中から入れ歯が発見された。女性は認知症を患っており、医師によると「入れ歯を飲み込んだことを忘れてしまった可能性がある」ということだ。この事例は、2020年に老人医学を扱うオンライン学術誌『Geriatrics』で発表されたものだが、高齢者の誤飲に対する注意喚起のために米ニュースメディア『Fox News』などが改めて伝えている。

米テキサス州ダラス市在住で当時88歳の女性はある日、家族とともに夕食を楽しんでいた。しばらくすると下の歯の入れ歯が無くなっていることに気付き、周辺を捜してみたが見つからなかったため、同市にある医療センター「UT サウスウェスタン・メディカル・センター(UT Southwestern Medical Center)」の救急外来を訪れた。

医師らは女性を診察したが、女性が痛みを訴えることはなく、脈拍や血圧などのバイタルサインは正常だった。しかし女性が認知症や脳卒中、脳リンパ腫の既往歴があることから、入れ歯を飲み込んでしまった事実を忘れてしまったか、あるいは飲み込んだものの何が起きたのか理解していない可能性があると考え、内視鏡検査を行うことにした。

胃の中にカメラを入れて確認してみると、医師の予想が的中し、入れ歯が見つかった。レントゲン撮影を行うと、胃の部分に弧を描いた入れ歯がはっきりと写っていた。すぐに入れ歯を摘出する処置が行われ、胃内部を傷つけないため内視鏡先端部に専用プロテクターを付けて、鉗子を使って入れ歯を取り出した。摘出には2時間かかったが、女性に大きな異変はなく、翌日には退院している。

同医療センターの医師は、老人医学を扱うオンライン学術誌『Geriatrics』で2020年に掲載された論文にて「入れ歯は成人が誤飲しやすい異物の一つです。成人の誤飲、特に高齢者の誤飲の危険性は軽視されがちですが、死亡などの深刻な事態に繋がりかねないほど危険なものです」と説明しており、アメリカでは誤飲が原因で年間1500人が亡くなっているという調査結果も論文の中で引用している。また、この論文では「大きめの部分入れ歯であっても飲み込んでしまう可能性があるので、特に認知症の方は細心の注意が必要です」と呼びかけていた。

ちなみに2019年にはブラジルで、祖母の入れ歯行方不明になったが、犯人は飼い犬だったことが判明し、入れ歯をはめた犬の表情に笑いの声が寄せられた

画像は『New York Post 2023年7月23日付「Doctors discover 88-year-old woman’s missing dentures during endoscopy」(UT Southwestern Medical Center)』『Fox News 2023年7月23日付「Texas woman accidentally swallows partial dentures, here’s how a medical team saved the day」(Jam Press)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)

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