生まれ持った家庭環境が、子供に与える影響は計り知れない。何不自由なく、愛情たっぷりに子供を育てる親がいる一方で、過干渉や暴言、暴力などで子供を思い通りに支配したり、自己愛が強く子供を構わない「毒親」と呼ばれる親も多い。

【漫画】「男だから我慢しなさい!」っておかしいよね?

そんな「毒親」だった両親と、分籍・住民票閲覧制限で絶縁したことをきっかけに「そんな親、捨てていいよ。~毒親サバイバーの脱出記録~」「こんな家族なら、いらない。」などの漫画を執筆した、漫画家・尾添椿が、毒親による“虐待”を受けた子供たちのリアルを徹底取材。

実際に、虐待を受けて育った子供たちは、どのような人生を歩んでいるのか―。著者の取材後記を踏まえ、本記事を「それって、愛情ですか?」と題してお送りする。今回は、幼少期に「男の子だから我慢しなさい」と言われて育ったコウジさんのエピソードを紹介する。

※この記事には不快に感じる可能性のある描写が含まれます。ご了承のうえ、お読みください。

――今回、コウジさんを取材してみていかがでしたか?

コウジさんは、私が漫画家デビューする前からの作家仲間で、彼が家庭内暴力に耐え兼ねて父親と絶縁しているのは知っていたんです。男尊女卑や家父長制の犠牲になるのは、女性や子供だけではなく、体裁を保つために“消費されてしまう人”だと感じました。コウジさんと家制度の話題になったときに『昔、襲われたとき“男なんだから我慢しろ”と言われ被害をなかったことにされた』と聞いたんです。そのときに『男が背負い込む社会構図ってよくないな』と思ったのをよく覚えています。人権が踏みにじられてはいけないと思いますね」

――このエピソードを通して、伝えたいメッセージとは?

「女性の性被害者が声を上げ始めてから、社会は動き始めました。そして昨今も、さまざま問題が取り上げられ、社会が大きく変わろうとしています。誰にも言えず、自分でも認められず、被害と認識するのも苦しく辛い性暴力を軽視してはいけない、声を上げることの大切さを伝えたいです」

過去を乗り越えて今を生きるすべての人に、明るい未来が待っていることを願いたい。

「それって、愛情ですか?」より/漫画=尾添椿