現在、露空軍の300機がウクライナ南部上空の航空優勢を獲つている。対地攻撃機Su25が、跋扈し、次々とウクライナ陸軍を掃討している(写真:柿谷哲也)
現在、露空軍の300機がウクライナ南部上空の航空優勢を獲つている。対地攻撃機Su25が、跋扈し、次々とウクライナ陸軍を掃討している(写真:柿谷哲也

ハイマース(高機動ロケット砲システム)から発射できる射程300km地対地ミサイル「ATACMS」の米国からウクライナへの供与が噂されるなか、クラスター爆弾の供与が決定した。さらにフランスからはストーム・シャドウ長距離巡航ミサイルが供与され、さらに自国製の無人自爆艇も稼働するようだ。これらの兵器は最前線でどう使われるのだろうか。徹底解説する。

【画像】ウクライナに供与予定の兵器はどう使われる?

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去る7月17日読売新聞は、ロシア軍の補給ルートの寸断を狙い、クリミア大橋が再び攻撃されたと報じた。無人特攻ボート二隻が橋脚に自爆、破壊に成功した。その後、「俺らがやった」とウクライナ海軍が名乗りをあげた。

海上自衛隊潜水艦はやしお艦長・第二潜水隊司令で、現在金沢工業大学虎の門大学院教授の伊藤俊幸氏(元海将)は、この一件に関してこう語る。

「橋桁ならば水上ドローンで破壊可能です。米艦・コール自爆テロの際に、小型ボートに積んでいた爆弾が300kgくらいと推定されていますので、同様かそれより少し多めかと思います。ダムの様な場所では建築物の内部まで爆発物を仕掛けないと破壊は難しいですが、鉄筋とコンクリートだけで出来ている橋桁ならば、ミサイル、無人機による爆弾で破壊可能です」(伊藤氏)

それ以前の7月9日にも、ウクライナ軍(以下、ウ軍)が地対空ミサイル「S200」4発を地上攻撃用として撃ったが、ロシア軍は2発を迎撃、2発を電波ジャミングで無力化し、防戦に成功した。しかし、無人自爆艇は防げなかった。

クリミア大橋はアゾフ海の海岸から150km。ロシア軍はそこから内陸へ100kmまで占領している。現在、ウ軍が供与された兵器で最も長い射程距離を持つものは、ミサイルではストーム・シャドウミサイルの250kmだ。最前線まで戦闘爆撃機・Su24が来ればそこまで届くが、ロシア軍地対空ミサイルで速攻撃墜される。ウクライナ空軍にはSu24は数機しかない。しかし、射程300kmのハイマースならば届くのだ。

7月15日CNNは、ウクライナへのハイマース・ATACMSの供与に関して、米国の決定は非常に近い段階にある、とゼレンスキー側近が語ったことを報道した。このハイマース・ATACMSはどう使えばよいのだろうか?

射程300キロのハイマース ATACMSは、切り札となるか?(写真:アメリカ陸軍)
射程300キロのハイマース ATACMSは、切り札となるか?(写真:アメリカ陸軍)

そしてクリミア大橋よりも、まず、ロシア空軍航空優勢を何とかできないだろうか。今、クリミア半島と、ウクライナ至近のロシア領航空基地に合計300機のロシア空軍機が集結中だ。

ハイマース・ATACMSには6発のBAT(無動力滑空型誘導式子爆弾)を搭載可能だ。BATは300km先まで飛び、計6機の戦闘機を破壊する。50発撃ち込めば全滅は可能だろうか?

航空自衛隊の那覇基地302飛行隊隊長を務めた杉山政樹元空将補がこう指摘する。

「結論から言うと無理です。航空基地攻撃を面で制圧するのは非常に難しいです。ロシア空軍はいま、かなり注意を払いながら作戦を実行しているので、地上で航空機を撃破するのは不可能です。空軍力に関していえば、米国とNATOからF-16戦闘機が来てくれない限り難しいです」(杉山氏)

さらに、世界の空軍に詳しいフォトジャーナリストの柿谷哲也氏はこう語る。

「ハイマースで撃つ対地ミサイルやクラスター爆弾M777で撃つクラスター爆弾、そしてPAC-2中距離対空ミサイルと同様の効果が得られる武器は、F-16からでも撃つことができます。F-16から運用できる利点は、発射位置を自由に短時間で選べること、そして目標を柔軟に設定できることなどがあります。しかし、ウクライナ空軍がF-16を運用できるのは来年の後半以降になると予想できるので、それまでの繋ぎの兵器が必要になるわけです」(柿谷氏)

地対空ミサイルパトリオットPAC2は、展開する計300機の露空軍機から、ウクライナを守れるか...(写真:柿谷哲也)
地対空ミサイルパトリオットPAC2は、展開する計300機の露空軍機から、ウクライナを守れるか...(写真:柿谷哲也)

ならば、地対空防空火網を整えれば、ロシア空軍を駆逐できるのではないか? 去る5月にはウ軍は射程距離160kmのパトリオット対空ミサイルで、ロシア空軍のSu30、35を撃墜している。

いまのウクライナにはそれが2セットあるが、7月13日CNNは、『独、地対空ミサイルパトリオット」をウクライナに追加供与へ』と報じている。ドイツは去る6月16日には、パトリオットミサイル64発をすでにウクライナに渡している。加えてオランダからもパトリオットシステムが供与される予定だ。

「PAC2(パトリオットシステム)で何を守るかが重要です。在韓米空軍基地に6基の発射機(24発)を常に北朝鮮に向けて配置しているように、基本的には航空基地などの基地防空用の兵器です。

また、飛行場以外を守る例として、イスラエルは基地司令部、サウジアラビアは石油施設に配置しています。移動する事が前提の車両部隊や機甲部隊の同行には向いてません」(柿谷氏)

ウクライナに配備されたパトリオットが南部に配備されれば、低空で飛来するSu25は怖くなくなるのではないか?

「まず無理ですね。リスキーな運用になります。クリミア半島を離陸したロシア空軍Su25の情報を、NATOの早期警戒管制機から得てパトリオットミサイルを発射。その発射情報をキャッチしたロシア空軍にSu30、35に搭載した長射程の空対地ミサイルで狙われれば、
一発でやられてしまいます」(杉山氏)

射程300kmのハイマース・ATACMSと、射程160kmのパトリオット地対空ミサイルで、300機のロシア空軍によるウクライナ南部上空の航空優勢はひっくり返せない。元・陸上自衛隊中央即応集団司令部幕僚長の二見龍氏(元陸将補)はこう語る。

クリミア大橋を攻撃し、ロシア軍クリミア半島への兵站輸送路を叩くには、ATACMSは使わずに無人自爆艇を使用して、100個以上ある橋桁を狙うべきです。そして、修理が終わりそうになったら、また違う橋桁を壊します」(二見氏)

であれば、確実に供与される長距離ミサイルの使用は考えられるのか? 7月12日CNNが『フランスウクライナに長距離ミサイル供与へ  長距離巡航ミサイル「SCALP―EG」(英語名「ストーム・シャドウ」)』と報じたが、このミサイルは遮蔽物をぶち抜いて内部で爆発する二段式だ。仏からの供与でストーム・シャドウの数が確保でき、ウクライナ空軍は心配なく使えそうだ。

「ミグ29にストーム・シャドウは搭載できます。1発をセンターのパイロンに搭載しているようです」(柿谷氏)

これで、射程250km範囲のウクライナ南部、ロシア占領地帯の鉄道と道路の橋梁を叩き、ペルシャンスクから東側、ロシア本土からの輸送路を遮断する。

「採用ですね。さらにBDA(爆撃効果判定)を行い、再攻撃の必要な地点はやるべきです。ロシア軍栄養素と血液を断つべきです」(二見氏)

ウクライナ空軍は、露空軍の航空優勢下、Su24または、ミグ29から、ステルス巡航ミサイルストームシャドウを露軍司令部、弾薬庫、燃料庫に叩き込む(写真:柿谷哲也)
ウクライナ空軍は、露空軍の航空優勢下、Su24または、ミグ29から、ステルス巡航ミサイルストームシャドウを露軍司令部、弾薬庫、燃料庫に叩き込む(写真:柿谷哲也)

■南部最前線はどう打破できるか

ただ、上空のロシア空軍の航空優勢は変わらないようだが...。

「対空火網を作ります。まず、中射程と短射程の地対空ミサイルで中距離以下の対空火網の傘を構成します。その傘の中に交戦能力のある対空戦車ゲパルトを随伴させます。最終の傘は個人携帯スティンガー対空ミサイルです。対空火網を構成するためにはまず、ロシア軍の砲兵をつぶさないといけません」(二見氏)

そこでウ軍は、米から供与されたクラスター爆弾の使用を開始する。

「米国が供与したのは米陸軍が2016年まで使用していた、155mm榴弾砲から発射できるDPICM(デュアルパーパス改良型通常爆弾)砲弾のようです。米陸軍によると、最大射程17㎞のM483A1砲弾1発の中に88個の子爆弾を内蔵。最大射程30㎞のM864砲弾1発の中には72発の子爆弾を内蔵しているそうです。

この子爆弾は、戦車や装甲車の装甲に穴を開ける金属ジェットを生成する成形爆薬になっており、戦車や装甲車が集結する敵陣の上空に撃ち込みます。砲弾が敵陣の上空で破裂すると、中から子爆弾が拡散します。1個の子爆弾は地表で爆発。致死範囲は約10平方メートル。高い高度で破裂させると、野球場3個分の広さに子爆弾の雨を降らすことができるようです。

米国が供与するMLRS(多連装ロケットシステム)は、クラスター爆弾を効果的に発射できる武器です。最大射程30㎞の227mmロケット弾M77は、644個の子爆弾をばら撒くことができます」(柿谷氏)

米国が供与するクラスター弾はDPICM(デュアルパーパス改良型通常爆弾)砲弾。米陸軍によると、最大射程17㎞のM483A1砲弾1発の中には88個の子爆弾を内蔵している(写真:アメリカ陸軍)
米国が供与するクラスター弾はDPICM(デュアルパーパス改良型通常爆弾)砲弾。米陸軍によると、最大射程17㎞のM483A1砲弾1発の中には88個の子爆弾を内蔵している(写真:アメリカ陸軍)

二見氏はその使い方に関してこう話す。

「私が30代で中隊長をやっていた時にMLRSが入りましたが、一番の魅力はブロック2のクラスター弾でした。侵攻してくるロシア軍を面制圧できるというので期待していたのですが、禁止条約で使えなくなり残念でした。

このクラスター弾は、地雷原の処理に使用しても未処理部分が発生するため、砲弾だけでは処理は完了しません。しかし塹壕、陣地に立てこもる対ロシア兵に対しては威力を発揮します。

触雷したり、地雷原が構成されていると、ウクライナ軍の攻撃部隊は地雷処理のために停止します。そこをロシア軍陣地から各種火砲により攻撃部隊を撃破します。障害は攻撃を阻止する陣地からの火力と組み合わされて、はじめて威力を発揮します。

陣地防御を崩すには、陣地に配置されているロシア兵の砲兵部隊を、ウ軍は155mm榴弾砲によりクラスター爆弾を撃ち込み、徹底的に壊滅させなければなりません。ロシア軍の逆襲対処へも威力を発揮します。

ロシア軍砲兵から砲兵による砲撃があれば、砲迫レーダーによって位置を特定し、射程80kmのハイマース、MLRS、155mm榴弾砲により、対砲兵戦が有利に行えます」(二見氏)

このクラスター砲弾を、155mM777榴弾砲で、露軍陣地に叩き込む(写真:アメリカ陸軍)
このクラスター砲弾を、155mM777榴弾砲で、露軍陣地に叩き込む(写真:アメリカ陸軍)

対砲兵戦でハイマースが威力を発揮するのはなぜなのだろうか?

「砲迫レーダーといわれる装置があります。これは、敵の砲迫射撃の弾道から瞬時に敵の砲迫の発射地点を評定できます。そして、3分以内に撃ち返しが可能です。ロシア軍も当然砲迫レーダーを保有してますが、西側の砲迫レーダーの方が優れています。

ハイマースで展開して全弾発射後、撤収するまで30秒で終わります。そのため、ロシア軍はハイマースを潰すことができないのです」(二見氏)

クラスター弾はウ軍も使えばロシア軍も使う。砲撃戦は凄まじく凄惨な様相を呈する。では現在、どのくらいのロシア軍砲兵部隊が潰されているのだろうか。

「継続的にロシア軍の損害率を見ていますが、平均1日18門、一個大隊規模のロシア軍砲兵がハイマースで叩かれています。1日18門のロシア軍砲兵部隊を撃破していますから、反攻開始から約50日間で約1,000門近く潰していることになります。

さらに砲兵を破壊し続けることによって、ウ軍は最前線に対空ミサイル、対空機関砲による対空火網の傘をかけることができるのです」(二見氏)

さらに、ロシア軍の砲兵隊を潰せば、地雷除去作業に専用車両を出せる。ロシア軍の地雷原と、その向こうに拡がる陣地の大きさ、構造はどうなっているのだろうか。

「地雷原のロシア軍陣地まで約300~400mと推定します。ドローンとロシア軍陣地地域に設置した監視所から地雷原手前で停止したウ軍機甲部隊の情報を得た指揮所は、対機甲火力発揮を命じます。戦車砲、対戦車ミサイル、砲兵が一斉に射撃を開始します。さらにドローンによる攻撃も加わります。

ロシア陣地を攻撃するウ軍歩兵は砲迫射撃と機関銃で阻止します。そのため、現在進行しているロシア軍の砲迫部隊の事前制圧は非常に重要となります。このロシア軍クラスター爆弾により、防御陣地に配置されている対機甲火力戦闘部隊と対歩兵部隊を戦力発揮ができないところまで破壊していきます」(二見氏)

陸自ならばここに92式地雷原処理車を入れて、地雷処理ロケットを発射。ロケットには十数個の爆薬がロープで繋がり地雷原に落下、同時爆破で地中の地雷を爆破する。すると、地雷原に幅5m、長さ300mの安全路ができる。

「この作業は夜間の利用はもちろんのこと、ロシア空軍が飛べない悪天候の日に行い、米国から供与された煙弾、さらに発煙機車両を使います。数台の発煙車による靄(もや)で、風がなければ周囲が数時間程度視認できなくなる能力があります。

また、地雷原爆破装置は3分程度で地雷原を処理出来ます。戦車が通過できない対戦車壕や対戦車崖と地雷原を組み合わせた複合障害の場合、装甲ドーザーで埋め戻し、戦車が通れるようにしなければなりません。

仕上げは、地雷処理ローラーの付いた装甲車両で、地面の凸凹と未処理部分の地雷を処理します。この作業は速くできます。20分間で300mは可能です。装甲走輪車が通るならば、装甲ブルドーザーで通行可能な状態に馴らします」(二見氏)

地雷原を一掃するには陸自ならば92式地雷処理車から、地雷処理ロケットを発射する(写真:柿谷哲也)
地雷原を一掃するには陸自ならば92式地雷処理車から、地雷処理ロケットを発射する(写真:柿谷哲也)

ロケットは爆薬を多数つけたロープを出しながら飛翔する(写真:柿谷哲也)
ロケットは爆薬を多数つけたロープを出しながら飛翔する(写真:柿谷哲也)

そして最後の切り札として、英独から供与されたチャレンジャー重戦車、レオパルト戦車の出番となる。

「地雷原開設口は一個中隊に一本が基準です。二個旅団が同時に突撃するならば12本必要です」(二見氏)

第一線陣地を撃破しても、ロシア軍には第二線陣地がある。

「陣地防御は第一線に重点を置きます。ロシア軍は予備部隊を第一線陣地で撃破された部隊の穴埋め、増強のために使用します。また、ウ軍に占領された陣地を奪回するための逆襲と侵入部隊への機動打撃をおこなうため、第二線陣地の配備は十分な状況ではありません。機動打撃のための経路も地雷がなく使用できます」(二見氏)

すなわち、第二線陣地地域以降電撃戦の開始となる。

地上に落下すると同時に連鎖爆発。幅5m、長さ300mの突撃路を地雷原に開く(写真:柿谷哲也)
地上に落下すると同時に連鎖爆発。幅5m、長さ300mの突撃路を地雷原に開く(写真:柿谷哲也)

ウクライナ空軍ミグ29は、地雷原に出来た突撃路を行く、ウ軍機甲旅団を守るために、航空優勢を露空軍から奪取を試みる(写真:ウクライナ国防省)
ウクライナ空軍ミグ29は、地雷原に出来た突撃路を行く、ウ軍機甲旅団を守るために、航空優勢を露空軍から奪取を試みる(写真:ウクライナ国防省)

■アゾフ海へ到達するには

いよいよ切り札のウ軍機甲旅団がアゾフ海を目指し、突進を開始する。うまくいけばアゾフ海まで到達できるだろう。

「それをやる時は、持てる火力全てで、ロシア空軍の航空作戦基地を面で攻撃します。そして1~2日は使えない状況にして、アゾフ海まで攻め込む形を作ります。その場合、ウ空軍は全滅を賭しての攻撃となるでしょう」(杉山氏)

ウ軍機甲旅団はアゾフ海まで、どれくらいで到達できるのだろうか。

「この決戦を選択するかどうかは大きな決心事項になります。あえておこなうとしたら、突破してから奪還した地域を確保して、戦車などの重戦力を押し上げ、対空火網の傘の展開、兵站線も延伸しなければなりません。いくら急いでも5日から7日はかかるでしょう」(二見氏)

ウ空軍の全てを賭しての全力攻撃でも、航空優勢は1~2日しか作れない。ウ軍切り札の機甲旅団は残り3日間で、ロシア空軍の空からの攻撃で殲滅されてしまう。どうすればよいのだろうか...?

「NATOはウクライナ軍にキーとなるようなツールを渡していません。与えてないのはウクライナ軍に全軍を出撃させるためです。ウクライナはいま、この一か八かの賭けに出ていく以外にない、と言うのが私の見方です」(杉山氏)

キーとなるようなツール、それはずばり、F-16戦闘機だ。

「陸からの総攻撃でアゾフ海まで行くのが難しければ、第一線を突破したら一気に攻めず、対空火網と共に少しずつ前進して、ロシア陸空軍の戦力を一ヶ月の時間をかけて漸減させるべきです。するとロシア軍は、兵力を南部、西部に移動せざるを得ません。そこをウ空軍のストームシャドーと、ウ陸軍のハイマースで撃ち込むのです」(二見氏)

杉山氏はロシア空軍の次の一手をこう見る。

「今後、ロシア軍は都市部、港湾部などに、徹底的にミサイルや無人機で空爆してくると思います。ですので、米国はホワイトハウスに配備されている防空ミサイルを供与しています。
ロシア軍は地上からの侵攻が出来ない代わりに、徹底的に空爆をしてくるでしょうね」(杉山氏)

ウクライナ軍は一か八かの、全兵力を注ぎ込んだアゾフ海への進撃を始めるか、または最前線では南西部で、1m単位でも奪還を試みる激戦を繰り返す。そしてその間、後方のウクライナ国民はロシア軍の凄まじい空爆に耐える...。

F-16というカギとなるツールが手元にない以上、今はそうして時間を稼ぐしかないようだ。

取材・文/小峯隆生 

現在、露空軍の300機がウクライナ南部上空の航空優勢を獲つている。対地攻撃機Su25が、跋扈し、次々とウクライナ陸軍を掃討している(写真:柿谷哲也)