ディズニーピクサー最新作「マイ・エレメント」が、8月4日(金)に劇場公開される。個性的なエレメントたちが暮らす「エレメント・シティ」には“違うエレメントと関われない”という大切なルールがあった。そのため性格も特性も正反対な“火”のエンバーと“水”のウェイドが出会い、共に時間を過ごしていく中で、少しずつ心を通わせていくが、どれだけ仲を深めても触れ合うことができない。しかし、二人の心が触れ合った時、ピクサー史上最も“ロマンティックな奇跡”が起こる。今作の日本版声優としてエンバーを川口春奈が、ウェイドを玉森裕太(Kis-My-Ft2)が担当。共にディズニーピクサー作品初参加となる二人に作品のことや、人生を変えるような出会いについて、アフレコ時のエピソードなどを聞いた。

【写真】感情豊かなウェイドに声を吹き込む玉森裕太、初挑戦のアフレコも見事にこなした

■川口「声優さんってすごいなと思いました」

――お二人はディズニーピクサーの作品に参加されるのは初めてだと思いますが、声優としてのお仕事のことも含めて、挑戦してみていかがでしたか?

川口:私は声優の仕事自体が初めてだったので難しかったです。収録現場に着いてから「今日はここをやります」という感じだったので、事前に準備のしようがなくて、毎日不安絶頂のまま現場に行っていましたし、声優さんってすごいなと思いました。難しさと大変さを感じながら、最後まで慣れることなくやっていった感じです。初めての経験ばかりで、こういうふうに作品が出来上がっていくんだなと知りました。

玉森:ホント、難しいことばかりでした。いかに普段のドラマや映画で身振りや表情、手振りとかで誤魔化していた…というワケではありませんが、“助けられていた”のだなと感じました。声だけで全て表現するのがメチャクチャ大変で、アフレコ期間中は家に帰ったら気絶レベルで倒れていました(笑)。アフレコは集中力が必要ですし、普段やらないことなのですごく体力も使いましたし、僕も「声優さんってすごいなぁ!」と思いました。

――それぞれ演じられたキャラクターの特徴を教えてください。自身と共通している部分があったらその部分も。

川口:エンバーは、真っすぐがゆえに熱くなり過ぎて後悔してしまうキャラクター。その真っすぐさや正義感が魅力でもあり、彼女のコンプレックスでもあると思うんです。熱くなっちゃう気持ちも分かるし、“自分がいなきゃ”とか“自分がこうしなきゃ”っていう責任感の強さも理解できます。

――ちなみに川口さんのコンプレックスとは?

川口:コミュニケーション能力が低いことです。人見知りというか、人付き合いが上手にできなくて、不器用なんです。そこはエンバーも同じなので共感できました。

――玉森さんは演じた“ウェイド”をどんなキャラクターだと受け止めましたか?

玉森:ウェイドは、物腰の柔らかい青年なんですけど、涙もろくて、ちょっとしたことでも感動する愛らしいキャラクター。何度かエンバーに突き放されたりするんですけど、それでも諦めないでそばにいて寄り添ってあげていて、すごいな!と思いました。自分だったら、あんなに突き放されたら耐えられない(笑)。魅力的なキャラクターですよね。

――川口さんから見て、玉森さんが演じたキャラクター“ウェイド”の印象は?

川口:“こういう人が近くにいてくれたら最高だな”って思います(笑)。自分の周りにはいないキャラクターだと思うし、彼の突拍子もないコミカルな部分も、ちゃんと人のことを見てきちんと意見を言ってくれるところもあって、面白くもあり、芯が通っているキャラクターでもあると思うので、すごくかわいいなと思いました。

■玉森、アフレコは「全部面白かったです」

――玉森さんから見た“エンバー”は?

玉森:エネルギッシュですよね。自分も見習いたいなって思いますし、こういう子がいると付いて行きたくなります。それこそ、ウェイドと同じように「支えてあげたい」って気持ちになりました。

――アフレコは楽しいところ、大変なところ、いろいろあったと思いますけど、実際にやってみての感想も聞かせてください。

川口:長ゼリフがあるんですけど、最初全くハマらなくて、尺がボロボロになっちゃって、本当に笑えるくらいできなかったんです。短いところは映像と合わせるのがそこまで難しくないんですけど、長ゼリフはダメでしたね。気持ちを乗せるのは当たり前に大事なことなんですけど、時間を合わせることに気を取られてしまい、出来なさ過ぎて途中から「やばいな!」って思いながらやっていました(笑)。

玉森:ウェイドは、泣いたり叫んだり、いろんなことをしたんですけど、全部面白かったです。泣くところも、声を出して泣くって思い返したらやったことないなって。“叫ぶってなんだろう?”って思いながら、ブースの中で一人、めちゃくちゃ動きながら叫んだりして、その都度、監督さんとどのパターンがいいか話し合いながらやりました。

■川口、木村拓哉は「偉大だなと思いました」

――エンバーとウェイドと同様に、誰かとの出会いで新しい自分を生み出せたとか、人生の中で経験されたことは?

玉森:僕はSMAP兄さんかなぁ。異次元な人たちだと思いました。デビューした日に「ビストロSMAP」(「SMAP×SMAP」のコーナー※収録日がCDデビュー日)にメンバーみんなで出たんですけど、食事の味を一個も覚えてなかったです(笑)。オーラがすご過ぎて、自然と一歩二歩下がってしまうような迫力を間近で見た時に感じました。直感で“ヤバイ! この人たちはすご過ぎる”と。同時に“かっこいいな”とか“あんなふうになりたい”と思いましたし、終わった後にメンバーとそういう話もしたのを覚えています。目標でもあるし、いつか越えられたらいいなと思っていますが、知れば知るほど遠ざかっていくというか…。いろんなすごさを知って敵わないなあとも思います。ホントすごい人たちなんです。

川口:私は木村拓哉さんと初めて一緒にお仕事をさせていただいた時、“こんなに熱量を持って作品と向き合われているんだ”と感じたんです。作品に対して、チームに対して、全力でいるその姿に、こんなんじゃダメだ!と思いました。あそこまで全身全霊でモノづくりをされていて、チームを大切にしている姿にかっこいいな、偉大だなと思いました。それに、面倒見の良い方で、作品が終わった後でも連絡をくださるんです。その時の役柄が怖かったので、現場では厳しく接していただいたんですけど、撮影が終わった後や帰り道では、普通のお兄さんみたいな感じで、そのギャップもすてきだなって。

――木村さんから言われた言葉で印象に残っている言葉があれば教えてください。

川口:その作品じゃないんですけど、一般の方の夢を叶えるという番組に木村さんが出演されているのを見て、“本当にこの人はとんでもない数の人の人生を変えていて、とんでもない影響力を持っているんだ”と再確認しました。それで連絡してそのことを伝えたんです。そうしたら「俺らの仕事はそういうことだから。人に夢を与えるのが仕事だし、ちゃんと信念を持ってやってるから生半可な気持ちでできない。それがエンターテイナーだよね。だからあなたも頑張ってください」というようなことを言っていただいて、私も人に対して真摯(しんし)に誠実にいたいなって改めて思いました。

■玉森「今は親に感謝しています」

――この作品では、エンバーが父親と意見が合わなかったり、反抗するシーンもあったりしますが、親子関係の部分で共感することや、感じたことはありますか?

玉森:僕は自分から事務所に入りたいと思って入ったわけではなく、親の夢というか、「やってみたら?」という感じだったんです。でも、入ってみて知れば知るほど向上心も湧いてきましたし、“もっともっと”という気持ちにもなりました。仲間ができて、夢を語り合い、そこに向かって頑張ろう!という気持ちに切り替わっていきました。今は親に感謝しています。

川口:私は三姉妹の末っ子でみんなに甘やかされて育ってきたので、親に怒られたこともありません。のびのびした環境で育ってきたと思います。このお仕事をする時に、心配してくれていたとは思いますけど、「とにかくやりたいことをやってみれば?」という感じで見守ってくれていました。姉たちとは年が離れていて、親に厳しくしつけられていたので、私はそういうのがなくて寂しいなと思った時期もありましたけど、大人になってからの方がきちんとコミュニケーションを取れていて、言いたいことも言い合えています。それでぶつかり合うこともできているので、良い関係性が築けていると思います。

――最後にこの作品に込められた思いやメッセージについて、教えてください。

川口:“自分はこうでなきゃいけない”とか“自分らしさって何だろうな?”と考えるきっかけになっていると思います。新しいことやこれまでやってこなかった環境に足を踏み入れる時って誰しも悩むと思うんですけど、そういうのを取っ払って、前に一歩踏みだす勇気をくれる映画だなと。自分と全然違う人、自分と感覚が違う人と付き合うことの大切さや家族愛、恋愛も描かれているんですけど、軸となる部分はそういうメッセージが詰まっていて、誰にでも当てはまるような共感してもらえるメッセージが込められていると思います。

玉森:川口さんのおっしゃった通り、自分では気付けなかった可能性というのが一番伝えたいメッセージなのかなと思いますね。“自分はこうじゃなきゃいけない”というのは、誰か違う人に触れることで気付き、“自分にこんな可能性があるんだ!”っていうことも気付かせてくれます。なので、自分の可能性を広げさせてもらえる、そんな物語かなって思います。

◆取材・文=田中隆信

「マイ・エレメント」で声優に挑戦した川口春奈と玉森裕太/(C)2023 Disney/Pixar. All Rights Reserved.