全国的に厳しい暑さが続いています。そんな中、公園や路上などで、意識を失った状態で座っていたり、倒れていたりする人を見掛けることがあるかもしれません。

 こういった場合、熱中症の可能性が考えられたりしますが、こうした急病人を発見したときに救護しなかったり、消防や警察へ通報しなかったりした場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。芝綜合法律事務所の弁護士・牧野和夫さんに聞きました。

「保護責任者」に該当するかがポイント

Q.公園や路上などで意識を失った状態で座っていたり、倒れていたりする人を見掛けたとします。このときに救護や通報をせずに放置した場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。

牧野さん「刑法218条の保護責任者遺棄罪(3月以上5年以下の懲役)に当たる可能性があります。保護責任者遺棄罪とは、保護義務を負う人が老年者、幼年者、身体障害者、病人など、扶助が必要な人を置き去り(遺棄)にして保護をしなかった行為を処罰する犯罪です。

同罪が成立するには、介護者、保護者など扶助が必要な人の保護責任者が、保護を怠る必要があります。通りすがりで、倒れている人と何の関係もない人は、保護責任者に該当しないため、救護義務は発生しません。そのため、そのまま通り過ぎても基本的には罪に問われません。

ただし、一度保護を開始した場合、途中で勝手に保護をやめると、保護責任者遺棄罪が成立する可能性があります。例えば、路上や公園などで意識を失って倒れている人を見つけたときに、おぶってその人の家まで送ろうとした場合には、保護が開始されたとして保護責任者となる可能性があります。

そのため、一度保護を開始した人が、途中で『用事ができたから』などの理由で道路に置き去りにして、その人が死亡するなどした場合、保護責任者遺棄罪となる可能性があります」

Q.急病人を発見したにもかかわらず、救護や通報をしなかったことが原因でその人が亡くなってしまったとします。この場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。

牧野さん「保護責任者の場合には『救護』や『通報』の義務がありますが、保護責任者でない場合、特別な状況でなければ、法的責任を負わないでしょう。特別な状況というのは、通りかかった人が1人だけで、その人が救護や通報をしなかったのが原因で亡くなったという因果関係が証明されたケースです。この場合、民法上の不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性があります」

Q.公園や路上などで意識を失って倒れている人がいたため、消防や警察に通報したところ、「ただ眠っていただけ」など、その人が救急車を呼ぶほどの症状ではなかったとします。この場合、「騒ぎを起こした」などとして、通報した人が法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。

牧野さん「通報された人に具体的な損害が発生していない以上、通報した人に何らかの責任が発生することはないでしょう。例えば、救急車を呼ばれた人が恥ずかしい思いをした場合でも、その損害を証明するハードルが高いため、民事上の不法行為に基づく損害賠償責任が発生する可能性は低いでしょう」

オトナンサー編集部

急病人を放置した場合の法的責任は?