南武支線鶴見線で使われる205系について、JR東日本はその置き換え時期を明らかにしました。引退すれば、首都圏はおろか全国的にも見られる路線は少なくなります。

継承したのはJR東日本と西日本

JR東日本 横浜支社は2023年7月、南武支線(尻手~浜川崎)と鶴見線で使われている205系電車について、それぞれ転属車両と新型車両で置き換えると発表しました。205系は国鉄末期からJR初期にかけて製造された通勤形電車です。一時は首都圏を中心に主要路線へ大量に導入されましたが、2023年7月現在は老朽化もあり、ごく一部の路線でしか見られません。そして、そのうちの2路線が南武支線鶴見線なのです。

205系が最初に導入されたのは、1985(昭和60)年3月の山手線。車体を軽量ステンレスとしたほか、省エネに寄与する制御装置を搭載し、既存の103系電車を置き換えていきました。首都圏ではさらに埼京線横浜線南武線京葉線武蔵野線、わずかながら中央・総武線各駅停車京浜東北線にも導入され、国鉄民営化後には相模線南武支線仙石線などへ運用の場を広げました。

関西でも1986(昭和61)年11月、JR京都線JR神戸線へ導入されました。ただし5年後には207系電車が登場したため、首都圏のように多くの線区へ導入されることはありませんでした。少数派の205系は転属を繰り返し、阪和線奈良線大和路線で使われ、2023年7月現在は奈良線にて、4両編成9本のみが現役です。

一時は1400両あまりが在籍した205系ですが、2023年7月現在 運用されているのは、JR東日本南武支線鶴見線仙石線JR西日本奈良線です。合計すると140両弱。率にして10%未満となってしまいました。

またJRとなって以降の車両には、ドアの下端から中ほどにかけて幅が広がる拡幅車体が採用されましたが、そうではなく、下端から上端まで垂直な「ストレート車体」である205系は、全国的に見てもレアになっているのです。

国鉄型らしくない顔立ちのワケ

205系の前面外観の特徴は、帯の中に備わった丸いヘッドライトと、そのすぐ下に配置された同じく丸いテールライトでしょう。窓枠や表示器の更新、スカート(排障装置)の増設など細かい改造はあったにせよ、上述の特徴を“原型”と呼ぶならば、2023年7月現在もそれを保っているのは奈良線のみです。残るJR東日本205系は全て、先頭車両は中間車両の改造車であり、ライト類は窓上に移設されています。

それもそのはず、車両は山手線埼京線などの“お下がり”だから。山手線を例にすると11両編成(205系導入時は10両)と長く、加えて編成数も多かったため、中間車がたくさん存在したのです。逆にいえば、各線区へお下がりを転属するにあたり、1編成から2両しか捻出できない先頭車両は不足してしまうので、中間車両を改造し間に合わせたのでした。

冒頭で触れた通り、南武支線では9月から、鶴見線では冬にも後継車両での運行が順次始まります。するといよいよ205系が見られる路線は、2023年7月時点で置き換えの公式発表がなされていない奈良線仙石線のみになるでしょう。

ただ改めてプレスリリースを見ると、気になる点があります。南武支線鶴見線ともに、導入される後継車両の本数が、現行で運用される205系よりも1本ずつ少ないのです。

これについてJR東日本 横浜支社は、「南武支線で使用されている205系に関しては、3編成あるうちの2編成を新潟地区から転用したE127系に置き換えます。残る1編成はE127系と併用していきます。(鶴見線に関しては)列車のダイヤやご利用状況を踏まえ、製造する車両数を決定しました。E131系8編成で205系9編成を置き換える形になります」と回答しました。

南武支線205系は、実はまだしばらく安泰なのかもしれません。

JR奈良線で使われる国鉄型205系電車。同線にはJR化後に新製されたグループも所属するが、記事では「国鉄型」と一括りにする(画像:写真AC)。