ターゲットは『ラグビーワールドカップ(RWC)2023』である。重要なのはフランスでの結果なのは重々承知している。だが、そろそろ結果と内容、何よりも安心感がほしい。9月10日(日)のチリ代表との初戦まで1か月半を切った。テストマッチは『リポビタンDチャレンジカップ2023 パシフィックネーションズシリーズ(PNS)』の2試合とイタリアでの『リポビタンDツアー2023』の3試合である。負け試合から学ぶのも有意義だが、試合に勝って反省し本番を迎えるサイクルに変えていきたい。

7月27日、『リポビタンDチャレンジカップ2023 PNS』トンガ代表戦のメンバー発表会見に出席したジェイミー・ジョセフHCは3連敗からの逆襲を誓った。 「オールブラックスXVとの試合は、自分たちも長い合宿を経て戦った影響があった中、強い相手と戦っていいスタートを切れなかった。先週のサモア戦は最初のスタートは良かったが、リーチレッドカードで我々にプレッシャーがかかってしまった。ただ『RWC』でもそういうカードは起こり得ることなので、自分たちにとっていい経験となった。今週の準備に悪影響はなかったし、いい準備はできた。今週勝つのは大きなチャレンジ」

ジョセフHCは次の試合登録メンバーを選出した。

【日本代表】
1稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)46
2坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)34
3ヴァル アサエリ愛(埼玉パナソニックワイルドナイツ)23
4アマト・ファカタヴァ(リコーブラックラムズ東京)1
5ヘル ウヴェ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)17
6ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ)13
7ベン・ガンター(埼玉パナソニックワイルドナイツ)5
8姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)26
9齋藤直人(東京サントリーサンゴリアス)12
10李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)7
11セミシ・マシレワ(花園近鉄ライナーズ)2
12長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ)1
13ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)11
14ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)1
15山中亮平(コベルコ神戸スティーラーズ)28
16堀江翔太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)69
17クレイグ・ミラー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)10
18具智元(コベルコ神戸スティーラーズ)22
19ジェームス・ムーア(浦安D-Rocks)14
20テビタ・タタフ(東京サントリーサンゴリアス)15
21流大(東京サントリーサンゴリアス)31
22松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)30
23松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)48
※所属チームの後の数字は代表キャップ数。

指揮官サモア戦で初キャップをマークした長田に初先発の機会を与えた。
「12番のポジションは誰もが狙えている状態にあると見ている。今の段階では誰もスタメンの基準に達していないこともある中、長田はオールブラックスXVとの試合でポテンシャルを見せてくれて、テストマッチのプレッシャーにも耐えられる可能性を示してくれた。彼が今回のテストマッチのスタートに出るにふさわしいと思っている。ほかのCTBのパフォーマンスに満足していない部分がある。長田は前回の試合でもインパクトを放ったし、パフォーマンスには満足している。このレベルのパフォーマンスを維持してほしいと思う。中野将伍や中村亮土はいい選手だが、現状のパフォーマンスの部分で満足してはいない。今週に限っては長田が出るにふさわしいと思ったので先発で起用した」

アマト・ファカタヴァ (c)JRFU

新顔のLOファカタヴァも高評価した。
「(FW第3列の)彼にとって新しいポジションだが、先週も素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。ボールキャリーやワークレート、キックのチェイスもよくやってくれた。彼にとって今週は特別な試合、母国のトンガとの試合を彼自身も楽しみにしている。試合に出続けているが疲れも見せていない。彼にとって今週はビッグゲームになるだろう」

ジョセフHCはガンターやタタフらケガ人が帰って来たFW第3列のポジション争いを歓迎した。
「ルースFWはすごく競争が高い。ガンターは昨年のフランス戦でも素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたし、ルースFWの3つのポジションができる。ケガから復帰して、テストマッチで彼がどこまでできるか見てみたい。ラピース(・ラブスカフニ)もケガから帰って順調に来ているし、ジャックのパフォーマンスにも満足している。6番もできるし、LOもできる。選手層は確実に厚くなっているので、ここからいろいろなコンビネーションを試していきたい」

サモア戦でレッドカードを受けたリーチにはピシャリ。
「ハイタックルはひとりのミス、ほかの選手は大丈夫だと思う。ハイタックルはチームの中で今までのトレンドはなかったし、私が来てからそのような経験はなかった。リーチは2試合ほど出場停止になると思うが(会見後3試合の出場停止が発表。ワールドラグビーによるコーチングの介入プログラムへの参加で出場停止が2試合に変更となる場合がある)、それは彼に責任がある」

李承信 (c)JRFU

SO李のパフォーマンスにはジョセフHCの口は滑らかだった。
「彼はいいゲームコントロールをし、いいパフォーマンスを見せている。もっとたくさんラグビーをしてもらいたい。力也は今週、来週もゲームに入ってくると思う。彼は昨年ケガをして、その間李承信がゲームに出て、先に進んでいる点はあるが、力也のコンディションは良く、今後2試合彼が出場機会は増やしてくると考えている」

HCはここまでの3連敗をどう見ているのか。
「しっかりチームを作り上げるのにある程度時間はかかるもの。それにプラスしてオールブラックスXVは強いこともあり、なかなか求めるような結果は出なかった。いろいろ選手を試しながら、テストマッチを迎える予定だったが、ケガ人が出て、そんな中、若い選手にプレータイムを与えないといけないと思っていた。先週の試合に関してはチームとして自信を持って戦っていたが、リーチレッドカードプレッシャーになってしまった。ハーフタイム前にリーチがいなくなり、チームが固まってしまった。チームも選手も結果を求め過ぎてしまった面がある。収穫は選手たちが最後まで勝ちにいったこと。実際最後のスクラムでコラプシングを取れていたら、サモアに勝てた。そういうところまでいったのは良かった点だと言える」

ジョセフHCは8月15日(火) に発表される『RWC』メンバー33名について、8割がた固まっていると語った。
「基本的に80%ほどの選手たちを頭の中で決めている。でもほかのメンバーにもチャンスはあるし、ポジションによってチャンスはある。『RWC』はリスクが高い。(前回の31名から)33名とメンバーが増えたのでスペシャリスト、フロントローのポジションを考えていかないといけない。今回は日本ではなく、フランスで開催される。セレクションではトリッキーな部分もあるが、最終的に33名を決めないといけない。優れた選手でも入らない選手は出てくるだろうが、それは『RWC』のルールなので仕方ないと思う」

さらにLOワーナー・ディアンズとWTBシオサイア・フィフィタのケガ人についても言及した。
ワーナーに関しては最初にケガをしてしまった。その間、ファカタヴァに機会を与え素晴らしいプレーをしてくれているし、ジミー(ジェームス・ムーア)も戻ってきていいプレーを見せてくれている。ワーナーは残念ながらケガがあり、残念ながらプレーしていない。サイアは浦安合宿でケガをして内転筋を筋断裂してから準備ができていない。ジョネやセミシ、ほかのWTBのパフォーマンスに満足しているので、彼らの成長をこのままチェックしたいと思っている」

ジェイミー・ジョセフHC (c)JRFU

対するトンガ代表は7月14日オーストラリアAを相手に27-21で逃げ切りながらも、22日のフィジーには20-36で屈した。今回は元ニュージーランド代表のFLヴァエア・フィフィタとFBサレシ・ピウタウ、CTBジョージ・モアラ、元オーストラリア代表のNo8ロペティ・ティマニがメンバーに名を連ねた。

トンガ代表】
1ジークフリート・フィシオイ
2サミュエラ・モリ
3ベン・タメイフナ
4ハラレヴァ・フィフィタ
5シティヴェニ・マフィ
6ヴァエア・フィフィタ
7シオネ・ハヴィリ・タリトゥイ
8ロペティ・ティマニ
9ソナタネ・タクルア
10ウィリアム・ハヴィリ
11カイレン・タウモエフォラウ
12ピタ・アーキ
13アフシパ・タウモエペアウ
14ソロモネ・カタ
15サレシ・ピウタウ
16パウラ・ンガウアモ
17フェアオ・フォトゥアイカ
18デイヴィッド・ロロヘエ
19タンギノア・ハライフォヌア
20ソロモネ・フナキ
21マヌ・パエア
22オトゥマカ・マウシア
23ジョージ・モアラ

リポビタンDチャレンジカップ2023 パシフィックネーションズシリーズ』日本代表×トンガ代表は7月29日(土)・東大阪市花園ラグビー場、日本代表×フィジー代表は 8月5日(土)・秩父宮ラグビー場にてキックオフトンガ戦のチケットは発売中、試合の模様はNHK総合フィジー戦のチケットは予定枚数終了、試合の模様は日本テレビ系にて生中継。

取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)

リポビタンDチャレンジカップ2023 パシフィックネーションズシリーズのチケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2343925

長田智希