哲学および心理学において精神の「浄化」を意味する「カタルシス」。ちまたでよく聞く言葉ですが、ちゃんと理解している人は少ないのではないでしょうか。ストレスのない気持ちよい生活が送れるかもしれない「カタルシス」について、公認心理師で心理カウンセラーの平井綾乃さんに聞いてみました。

「カタルシス」 理解すれば、ストレスと“さよなら

Q.「カタルシス」とは具体的にどのような状態を指すのでしょうか?

平井さん「カタルシスとは一般的には『内に秘められた感情を出すことによって得られる心の浄化作用』という意味合いがあります。その歴史は古く、古代ギリシャ時代にはすでに、アリストテレスという哲学者が『演劇での感情表現が心の浄化をもたらす』効果があることを文献に残しています。

タルシスは、無意識にある感情を意識化させるというプロセスによって働くもので、近年では『ストレス発散の手段』として用いられることもあります。

例えば、『心ゆさぶられる映画を見ながらひとしきり涙を流したら、なんだかスッキリした』とか、『誰かに話を聞いてもらっただけでも気持ちが落ち着く』といった経験も、カタルシスによる効果の一例です」

Q.「カタルシス」によって得られるメリットには、どのようなモノがあるのでしょうか?

平井さん「カタルシスは、心の内に溜め込んでいたネガティブな感情やストレスを表に出すことで、気持ちが楽になれるという効果があります。

どのような方法がベストなのかは人それぞれなので、どうしたら心がもっと楽になるのか、自分なりのカタルシスの方法を見つけていただけたらと思います」

Q.反対に「カタルシス」のデメリットは何ですか?

平井さん「無意識であった感情を意識化することは、必ずしも良いことだけとは限りません。というのも、人間は外部刺激から心を守るために、あえて気持ちを閉じ込めておく作用もあるのです。

これを無理やりこじあけるようにあふれ出させてしまうと、かえって心が不安定になってしまうケースも考えられます。

もし気持ちを表に出すことに不安があるという方は、臨床心理士や精神科医などの心の専門家のアドバイスを参考にするのも良いでしょう」

 人間による感情の移ろい方は非常に複雑で、自分でも無意識のうちに多くのストレスや不安を抱えていることがあります。こうした感情を意識的に表に出す「カタルシス」には、デトックスや心の安定を図るための効果があると言われています。

ストレス解消方法」や「心が軽くなる」ための方法は、人によってそれぞれ異なり、正解はありません。自分の感情ともっと向き合いたいと思ったとき、カタルシスの効果を思い出してみてくださいね。

オトナンサー編集部

カタルシスって一体、何だ?