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 シベリアのサハ共和国には、地元の人から「冥界への入り口」と呼ばれている巨大な穴「バタガイ・クレーター(Batagay crator)」がある。そこには「地球の50万年分もの歴史」が閉じ込められていたという。

 これは永久凍土が浸食されてできたもので、サッカー145個分にも匹敵する巨大な陥没穴だ。

 2023年7月、新たに公開されたドローン映像によると、この穴はさらに拡大していることが明らかとなった。穴の拡大は永久凍土が融けていることを意味する。

【画像】 「冥界への入り口」と呼ばれる永久凍土の穴を覗き見る

The largest permafrost depression in the world .

 シベリアのサハ共和国のタイガにぽっかりと口を開けたバタガイ・クレーターの面積は、およそ0.8平方kmで、世界最大の永久凍土の穴だと考えられている。

 これが出現したきっかけは、1940年代の森林伐採であるようだ。

 暖かい季節になると永久凍土が一時的に解けるが、森林が伐採されたことで、それが悪化した。

 この地域の永久凍土は8割が氷だ。だから、あまりにも大量に解けてしまうと、そこにあった土砂が崩れる。

[もっと知りたい!→]地下世界への門。シベリアの永久凍土にある神秘のクレーターで20万年前の土壌を発見(ロシア)

 こうして永久凍土にできた巨大な傷跡のような光景が出現したのである。

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 永久凍土が後退し、あんぐりと口が開いたところからは、12万6千年前の更新世中期までさかのぼる”数万年分の凍土遺跡”が姿を現した。

 またある研究では、そこで氷づけになっていた8000年前のバイソンの肉を発見し、かつてこの地域に生息していた動植物について明らかにしている。

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穴の拡大は危険の兆しと研究者

 クレーターが拡大し続けていることは、ドローンの映像以外によっても確認されている。たとえば、人工衛星がここ数年で広がり続ける傷跡を捉えている。

 クレーターがどのくらいの速度で大きくなっているのか、正確なことはわからない。だが地元の人々は、ある場所はここ数年で20、30mも広がったという。

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 科学者たちは、ロシアが世界の他の地域に比べて、少なくとも2.5倍速く温暖化が進んでいると語る。

 これにより、国土の約65%を占める永久凍土が広がる寒地荒原「ツンドラ」が解け、解けた土壌から温室効果ガスが放出されているという。

 この「冥界への門」は、科学的には「メガ・スランプ(mega-slumps )」と呼ばれ、その拡大は「危険の兆し」であると、ヤクーツクのメルニコフ永久凍土研究所の主任研究者であるニキータ・タナナエフ氏は指摘する。

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将来、気温がさらに上昇し、人間の活動による圧力が高まると、これらのメガ・スランプがますます形成され、最終的には全ての永久凍土がなくなるでしょう」タナナエフ氏は警告する。

 永久凍土の解凍は、すでに北部と北東部のロシアの都市と町に脅威をもたらしており、道路が歪み、家が割れ、パイプラインが乱れている。またその影響で、近年激しくなっている広範な森林火災も問題を悪化させていることが分かっている。

References:Watch drone delve into Siberia's growing 'gateway to the underworld,' the largest permafrost depression in the world | Live Science / "Gateway To Underworld": World's Biggest Frozen Crater In Russia Thaws / written by hiroching / edited by / parumo

 
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シベリアの「冥界への入り口」と呼ばれる世界最大の永久凍土の穴は、さらに拡大を続けていた