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あおり運転 厳罰化から3年

東名高速道路で発生したあおり運転を起因とする夫婦死亡事故から6年が経過した。

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2017年6月に起こったこの事故。あおり運転のクルマに止められた家族が乗るワゴン車が大型トラックに追突された。車内の家族2名は無事だった。本線上に出ていた夫婦は、はねられて死亡した。

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あおり運転の例。    AUTOCAR JAPAN編集部

危険運転致死傷罪などに問われた石橋和歩被告(30歳)の差し戻し裁判員裁判の判決公判が2022年6月6日に横浜地裁で開かれた。求刑通り懲役18年が言い渡された。

その後もあおり運転による被害は相次ぐ。

2019年8月には常磐道茨城県内)を走行中、あおり運転で挑発し、本線上で停車させ、車外から暴力をふるうという衝撃的な動画が拡散された。

同じような嫌がらせ行為を静岡や愛知、茨城などでもおこなっていたことが明らかとなる。

この事件では2020年10月2日あおり運転殴打など3つの事件で強要と傷害の罪に問われた宮崎文夫被告(44歳)に対し、水戸地裁は懲役2年6か月、保護観察付き執行猶予4年(求刑は懲役3年8か月)が言い渡された。

これらの事件をきっかけに、あおり運転を誘発する車間距離不保持、通行区分違反などの取り締まりが強化される。2020年6月には「妨害運転」への罰則が強化される。

妨害運転に対する罰則(妨害運転罪)が創設されたのは2020年6月10日に公布された道路交通法の一部を改正する法律によるもの。同年6月30日から10類型の違反行為は厳正な取締りの対象となる。

最大で3年以下の懲役または50万円以下の罰金、さらに妨害運転によって著しい交通の危険を生じさせた場合は最大で5年以下の懲役または100万円以下の罰金。いずれの場合も免許は「一発取消」となる。

あおり運転厳罰化から3年。ひところに比べるとあおり運転に事件や事故のニュースは減ったように感じる。あおり運転の報道によってドライブレコーダー装着率が急速に高まった背景もある。

あおり運転の被害や取り締まりの状況、通報システムなどはどのように変化したのだろうか。

取締りの状況からみてみよう。

取締り件数を確認すると

あおり運転につながるとして、2017年頃から高速道路での取り締まりが強化されている違法行為に「車間距離不保持」と「車両通行帯違反」がある。

「車間距離不保持」とは、前者との車間距離を適切に取らず車間を詰めること。「通行帯違反」は、追越が終わって走行車線に安全に戻れる状況でありながら追越車線をずっと走り続けることなどの行為だ。

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違反とその件数。    警視庁

ひところはこれらの取り締まり件数は、いちじるしく増していた。いっぽう令和3年→4年の取り締まり件数は、いずれも大きく減っている。「車間距離不保持」は29.8%減った。「通行帯違反」も21.7%減った。妨害運転の取り締まりも減少している。

近年、免許更新時の講習等において、悪質/危険な運転の危険性や、これらの行為が禁止されていること、およびその違反行為に対しては取締りがおこなわれることについて繰り返し説明される。あおり運転社会問題となる前にはなかった講習である。

更新時講習等に実施している運転適性についての診断と指導においては、運転者本人に自己の運転意識等を自覚させるとともに、運転適性検査結果に基づいた安全指導をおこなっている。つまり、あおり運転の加害者になる可能性があるかどうかを適性検査であぶりだすということだ。

そんななか、あおり運転の防止、妨害運転の検挙において、劇的な効果をもたらした県がある。

全国初 動画専用の情報提供窓口

あおり運転の防止、妨害運転の検挙において劇的な効果をもたらした岡山県警。岡山県警では全国で初めてウェブサイト上に専用の情報提供窓口を設置した。

事故や交通トラブルのシーンにおいて、ドライブレコーダーの映像は非常に有用性がある。それは警察も認めるところだ。同県警では窓口を開設してから1年間で1000件以上の情報が寄せられた。このうち妨害運転を含む38件の交通トラブルの検挙につなげたという。

なお、全国の警察の公式サイトにはそれぞれ妨害運転などの情報提供を映像として送ることができる窓口があるが、ほとんどの場合、使い勝手が非常に悪い。手間がかかるし、警察側の許可を得てからではないと映像を送ることができない。

そのような中、誕生した新たなシステムがある。2023年4月以降、全国の警察で本格運用がはじまった「110番映像通報システム」である。

110番映像通報システムとは

「110番映像通報システム」は、スマートフォンなどを介して通報者が撮影する映像を警察とリアルタイムに共有するシステムである。

ただしリアルタイムといってもビデオ通話のようなものではなく警察が構築した専用のシステムを介して通報する。

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「110番映像通報システム」の内容。    警視庁

110番に通報して状況を伝えると警察から、「映像による通報に協力いただけないか?」と聞かれる。通報者のスマートフォンにショートメールが届く。記載されるURLに警察から口頭で伝えられたパスコードを入力してログインする。映像を共有する。

ドラレコ、あおり防止は不十分

あおり運転社会問題となってから、ドライブレコーダーは急速に装着率が高まり、今や新車の場合は7〜8割とも言われる。

比較的安価な1万円以下のドライブレコーダーでも基本性能が充実した機体も増えてきた。

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ドライブレコーダー録画中」のステッカーを貼っていれば抑止力になると思っている人もいるようだが、それも危険な考えだ。    シャッターストック

しかし、ここで重要なのは「ドライブレコーダーそのものがあおり運転の防止にはなるわけではない」ということである。

あくまでもあおり運転を受けた際に記録として残すためのものであり、ドライブレコーダーがあれば煽られないというわけではないのだ。

また「ドライブレコーダー録画中」のステッカーを貼っていれば抑止力になると思っている人もいるようだが、それも危険な考えだ。

あおり運転をおこなうような精神状態(=怒り狂っているような)のドライバーは、そのようなステッカーは視界に入っていても衝動を抑えられない。

逆に「ドライブレコーダー録画中」のステッカーを貼って追い越し車線をのんびり走り続けるようなドライバーは狙われやすいという見方もある。

ドライブレコーダーは運転状況や違反状況を映像に残す記録装置であるが、それ自体があおり運転をやめさせる能力を持っているわけではないということは覚えておきたい。

では、あおり運転と無縁で過ごす方法は無いのだろうか?

あおり 無縁で過ごす究極のコツ

あおり運転に関わるトラブルのほとんどは過去の事件や事故の報道を見てもわかる通り、追越車線で起きている。

追越車線、または追越のための車線は、一般道でも高速道路でも2車線以上の道路すべてに存在している。

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妨害(あおり)運転の対象となる10類型の違反。    警視庁

つまり、通常はキープレフト。左車線の走行を心がけ、追い越したい場合だけ右車線に出て追越が終わったら速やかに左車線に戻る。

特に高速道路においては追越車線をゆっくりとした速度で走り続けることが、後続車のイライラを募らせ、あおりトラブルにつながるケースが多い。基本的なことではあるが、これを、わかっているようで、わかっていない人も多いのではないだろうか。

数年前に比べればあおり運転によるトラブルは取り締まり件数などを見ても減少していると言っていいだろう。

しかし、運転の基本ルールを知らずに追い越し車線を走り続けるドライバーはいつ、あおりの被害者になるかわからない。

被害者にならない方法はとてもシンプルだ。基本は「キープレフト」を常に守って走行すること。これに尽きる。

※この記事は、AUTOCAR JAPANとYahoo!ニュースの共同連携企画です。


あおり運転 厳罰化から3年 違反数や警察対応に変化は #ニュースその後