共働きの夫婦の場合、二人で住宅ローンを借りる「ペアローン」を利用してマイホームを購入できるケースがあります。単純に考えて、二人でローンの返済をするため、一人に比べてローンの返済能力が上がり、より希望に近い物件が購入できるようになるのではないかと想像できます。しかし、ペアローンには安易に利用すると後で困ることになるようなデメリットもあり、良く内容を理解してから慎重に利用する必要があります。

ペアローンとは

同じ一軒の家に対して夫婦それぞれで別々に住宅ローンを組み、お互いが相手の住宅ローンの連帯保証人になる契約です。この場合の家の持ち分は、原則、借入金額の割合と同じになります。また、契約の際は夫婦それぞれが団体信用生命保険へ加入することが必要です。

ペアローンを選ぶ理由

一人だけでローンを組むと借入可能額が希望額に届かない場合は、ペアローンにすることで借入可能額を増やすことができます。また、住宅ローン控除が二人分になり、節税効果を上げられます。なお、夫婦それぞれで別の金利プラン(固定金利や変動金利など)を選択することも可能です。

◆ペアローンのメリット

借入希望額が増えて購入可能な物件が増える

二人にそれぞれ住宅ローン控除が適用され節税効果が上がる

ペアローンの注意点

住宅ローンを2つ契約することになるので、諸費用の負担が2倍になります。また、返済中に退職しても支払い義務は続くため、完済まではお互い働き続ける必要があります。なお、仕事を辞めて所得税の支払いがなくなると、住宅ローン控除の適用もなくなります。

夫婦間のリスクとして離婚がありますが、もし住宅ローン完済前に離婚してしまうと、家の財産分与が絡み揉めやすいです。もし、返済初めのころに離婚してしまうと、2人の年収分で組んだローンのため、一本化など簡単に借り換えができない場合もあり注意が必要です。

◆ペアローンのデメリット

住宅ローン契約の諸費用が2倍かかる

退職後も支払いが続き、住宅ローン控除もなくなる

完済前に離婚した場合のリスクが大きい

ローンの借り換えが簡単ではない

支払できなくなると相手に支払い義務が生じる

◆参考:家の財産分与

財産分与は原則半分ずつと決まっているため、購入時の持ち分に関係なく、財産は半分ずつで分け合います。

不動産の場合の財産分与は「売却」か「譲渡」で行います。

【売却の場合】

 物件を売却して得た利益を折半して、お互いローンの返済に充てます。

【譲渡の場合】

 物件の所有権を相手に譲り、物件を貰った側は物件の査定金額の半分を相手に渡す。

 ただし、ローンの返済中は金融機関の許可なしでは譲渡ができない可能性があります。

「ペアローン」と「収入合算」との違い

借入希望額を増やしたいという場合には、ペアローンではなく「収入合算」を選択することも一つの方法です。収入合算ではローン契約が1本になるため、諸費用が安くなり、手続きも簡単になります。また、合算する側が契約社員やパートであっても審査の対象にする金融機関もあるため、ペアローンよりも利用できる世帯が増えます。なお、収入合算には「連帯債務型」と「連帯保証型」の2タイプあり、主な違いは合算する側(非契約者)の責任の大きさです。

【連帯債務型】

●合算する側の関係:連帯債務者

●合算する側の責任:契約者と全額の債務を負う

●住宅ローン控除:契約者・連帯債務者に適用

●団体信用生命保険フラット35の場合のみ、連帯債務者も加入必要

●所有権:二人にあり

●ペアローンとの違い

・手続きが簡単になり諸費用が抑えられる

・合算する側の審査基準が緩い

●デメリット

・取り扱い金融機関が少ない

・一般の金融機関では連帯債務者は団体信用生命保険に加入できない

【連帯保証型】

●合算する側の関係:連帯保証人

●合算する側の責任:直接的な債務は負わない

●住宅ローン控除:契約者のみ適用

●団体信用生命保険:契約者のみ加入が必要

●所有権:契約者のみにあり

●ペアローンとの違い

・手続きが簡単になり、諸費用が抑えられる

・合算する側の審査基準が緩い

●デメリット

・連帯保証人は住宅ローン控除が適用されない

・連帯保証人は団体信用生命保険に加入できない

◆参考:合算する側が契約社員やパートでも審査してくれる主な金融機関

 ・中央労働金庫(ろうきん

 ・信用金庫

 ・フラット35

ペアローンおすすめの夫婦

以上を踏まえると、以下の条件をクリアできるような夫婦ならばペアローンをおすすめできます。

1.どちらも安定した収入がある

2.共働きを続ける

3.完済までは離婚しない

4.生活スタイルが変わらない

ある専門家の意見では、ペアローンの利用者は夫婦お互いが高年収のパワーカップルが多く、その目的は、無理して高額な物件を買う為ではなく、節税や持ち分取得のためにペアローンを選択しているケースが多いとのことです。借入額の増加が目的の場合は、収入合算を利用する方が失敗が少ないかもしれません。

(※写真はイメージです/PIXTA)