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ULEZ拡大、8月29日実施はほぼ確定

英国の首都ロンドンで、環境政策を巡る一連の騒動に決着が着いた。サディク・カーン市長が掲げる「超低排出ガスゾーン(ULEZ)」の拡大計画が、8月29日に実行に移されるという判決が下されたのだ。

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ULEZは、都市部における大気質改善の一環として、一定の排出ガス基準を満たさない車両が規定エリアに侵入する際、違反金を課すというもの。すでにロンドンの一部区域で実施されているが、カーン市長は対象エリアをほぼ全域に拡大する計画だ。

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8月29日よりロンドンのほぼ全域がULEZ対象エリアとなる。(現在は緑線の枠内)

具体的には、2005年に制定の欧州排出ガス基準「ユーロ4」を満たさないガソリン車と、同じく2015年に制定の「ユーロ6」を満たさないディーゼル車に対し、1日12.50ポンド(約2270円)の違反金が課される。

ULEZの拡大計画は、生活費が高騰している今、違反金の支払いや適合車種の購入はドライバーに劇的な経済的影響を与えるとして、広く非難を浴びている。

保守党が主導する5つの行政区・郡は、カーン市長にはこのような措置を導入する「権限がない」こと、また影響を緩和するために考案されたスクラップ・スキーム(廃車支援制度)には効果がないことを主張し、高等法院にこの計画を提訴した。しかし、高等法院はこの訴えを退け、計画は実施されることになった。

カーン市長は、この「画期的な決定」を「ロンドン郊外の大気の浄化を進めることができる、良いニュースだ」と歓迎した。

ロンドン市民が抱くかもしれない懸念に対処するために、可能な限りのことをする」と約束し、「ロンドンを走っている10台のクルマのうち9台は、すでに基準を満たしているので、1ペニーも支払う必要はない」と述べた。

スクラップ・スキームは、基準に適合しない車両の廃車や、適合に向けた改造の補助金として最大5000ポンド(約90万円)を支給するというロンドン交通局(TfL)の制度。

しかし、英国の車両データ管理企業Cap HPIの予測戦略・運営責任者ディラン・セッターフィールド氏によれば、このスクラップ・スキームは、影響を受けるドライバーのごく一部しか補償されず、しかも標準的な支給額で2000ポンド(約36万円)までしか補償しないため、「ULEZ基準を満たす車両の購入を促進するには十分でない可能性がある」という。

ULEZ拡大計画は、去る7月20日の補欠選挙でアクスブリッジ・サウスライスリップ選挙区における労働党の敗北に一役買ったとして、最近になって新たな非難を浴びている。最も声高に非難したのは、同党党首のキア・スターマー氏で、労働党の政策(ULEZの拡大)が「各リーフレット」に掲載されるのは「何か非常に間違っている」と述べた。

今回の補欠選挙では、ULEZに反対する保守党スティーブ・タックウェル候補が同選挙区で勝利した。

労働党の敗北を受けて、スターマー氏は次のように述べた。

「ULEZがアクスブリッジで選挙に負けた理由であることは間違いないと思う」

「市長も含めて、わたし達全員が反省しなければならない」

カーン市長は、スターマー氏による政策批判に対し、「正しい政策」だと反論しており、市長に近い情報筋はBBCに、市長はULEZ拡大計画を延期するつもりはないと語った。

強引な環境政策、選挙の敗因にも

しかし、カーン市長は現在、反対派の意見に「耳を傾けている」と言われている。

市長室の広報担当者はAUTOCARに寄せた声明の中で、次のように述べている。

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基準以下の車両には対象エリア通行の際に違反金が課せられる。

「市長は、ULEZを拡大するという決定は非常に困難なものでしたが、毎年約4000人のロンドン市民が大気汚染のために早世し、子供たちは肺の発育不全のまま成長し、何千人もの人々が癌、肺疾患、認知症、喘息といった人生を変えるような病気を発症している中で、何もせずに傍観することはできないと明言してきました」

ロンドン郊外を走っているクルマ10台のうち9台は規制に準拠しており、1ペニーも支払う必要はないでしょう。低所得者、慈善団体、中小企業、障害を持つロンドン市民、児童手当を受給している人など、影響を受けた人なら誰でも、何千ポンドもの支援を受けることができます」

サディク(・カーン市長)はULEZの拡大にコミットしていますが、常に耳を傾けており、ULEZの拡大がロンドン市民に与える影響を緩和しつつ、大気質と気候危機に取り組む方法について、どんな新しいアイデアも喜んで検討しています。彼はこのプロセスを通してロンドン市民の声に耳を傾けてきましたが、これからもそうするつもりです。彼はすでに、今月末からスクラップ・スキームの適用を拡大するために多くの変更を行いました」

スターマー氏はこう語った。「グリーン・コミットメントに関しては、実行すべきかどうかという問題ではなく、当然ながら実行する必要があります。そのためにも議論が必要です」

また、労働党副党首のアンジェラ・レイナー氏は、「有権者の声に耳を傾けなければ、選挙には勝てない」という事実を証明するのが、今回のアクスブリッジ・サウスライスリップ選挙区での敗北だと述べた。

レイナー氏は、都市の大気質を改善する必要性は認めつつも、影響を受けたドライバーは「適切な補償と支援」を受けなければならないとしている。

ULEZ拡大の実現性をさらに不透明にしているのが、保守党政権の動向だ。英国政府は、2030年から内燃エンジン車の新車販売を禁止するという自らの計画に疑問を投げかけているのである。

リシ・スナク首相は最近、カーボン削減のために行われるいかなる措置も「均等かつ現実的」でなければならず、「国民に不当な影響を及ぼしてはならない」と発言し、波紋を呼んだ。

スナク首相は、2030年の内燃エンジン車禁止が議論の対象となることを公式には認めていないが、ジェイコブ・リース=モグ前産業戦略大臣は、禁止措置の廃止が「選挙で成功する」可能性につながることを示唆した。


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