世間を騒がせているビッグモーターの保険金不正請求問題。そこにはノルマ至上主義があるとされていますが、営業マンであれば多かれ少なかれ、共感する部分もあるかもしれません。営業マンの厳しい実情をみていきましょう。

厳しいノルマにプレッシャー…営業マンのキツイ現実

中古車販売大手・ビッグモーターの保険金不正請求問題。調査報告書によると、調査件数8,427件中、1,275件、15.1%で不正が行われていたことが発覚。約4,995万円を不正請求していたといいます。

そして社員への聞き取り調査では、店舗や工場の責任者に逆らえない雰囲気があったという声も。本部から店長に対しては「ふざけた報告すんなボケクソが!」などというパワハラと取れるLINEも多く発覚しています。

また報告書では、工賃と部品交換で得られる1台当たりの利益の合計を「@(アット)」と呼び、14万円前後にするよう工場に求めていたとし、常識を逸脱した厳しいノルマが不正の引き金のひとつになったと指摘しています。

行き過ぎたノルマ重視の姿勢が、企業を破滅へと追いやる……。過去にも同じように大きな問題に発展した例はありますが、果たして、どのような末路を辿るのか、今後の展開に注目が集まります。

とはいえ、どのような業種でも、職種でも、多かれ少なかれ仕事である以上、ノルマはあるもの。ただ、特に厳しいノルマが与えられがちなのが営業です。

日本労働調査組合が2021年9月に行った『営業職の勤務意識に関するアンケート』によると、「営業職として働くことの最近感じるデメリット」として1位は「ストレス」で29.7%。2位「疲れる」で28.0%、3位「クレーム対応」で27.4%、4位「お客様の理不尽さ」26.0%。そして5位が「ノルマ」で24.3%。さらに6位は「上司や会社のプレッシャー」で24.1%でした。

同年5月に行った際の1位は「ノルマ」だったそうです。コロナ禍によりストレスや疲労のほうにデメリットに感じるようになったのだろうと分析していますが、どちらにせよ、組織の中でもノルマに対して厳しく言われ、上からのプレッシャーも半端なく、ストレスが溜まるし疲れる……営業が抱えるデメリットは、「ノルマ」が起点となる部分も否定できないでしょう。

――ノルマがキツイ、もう辞めたい

――ストレスで、死にそうです

――ノルマ未達…ペナルティが怖い

ネット上には、ビッグモーターに関わらず、厳しいノルマに苦しむ営業職マンの声に溢れています。

営業マン…給与面や金銭面への不安が大きい

一方で前出の調査では「営業職として働き続ける場合の懸念や不安」の問いに対して、1位は「給料が安い」で33.5%、2位「将来が不安」で31.7%、3位「モチベーション維持」で30.9%と続きます。さらに「仮に退職をするとした場合に懸念や不安があれば教えてください」では、1位が「転職先が見付かるか」で21.3%、2位が「給与不安」で11.0%、3位が「金銭不安」で10.7%でした。意外にも、給与面、金銭面での不安や懸念が大きいことが分かります

厚生労働省の調査によると、男性会社員(平均年齢44.5歳)の平均給与は月収で34.2万円、年収で554.9万円。また144の職種別にみていくと、そのうち営業職は以下の5つ。

●総合18位「保険営業職業従事者」(平均43.6歳)

平均月収:48.4万円 平均年収:686.5万円

●総合20位「金融営業職業従事者」(平均38.0歳)

平均月収:37.2万円、平均年収:673.7万円

●総合21位「(自動車を除く)機械器具・通信・システム営業職業従事者」(平均43.4歳)

平均月収:39.1万円 平均年収:672.2万円

●総合34位「その他の営業職業従事者」(42.3歳)

平均月収:37.1万円 平均年収:597.7万円

●総合51位「自動車営業職業従事者」(40.3歳)

平均月収:34.3万円 平均年収:552.5万m

専門性の高い金融系の営業マンは平均を大きく上回る給与を獲得。しかし一般的な営業マンは月収で37万円、年収でわずかならが600万円に届かず。厳しいノルマを抱えているケースが多い営業マンですが、「ノルマを許容できる」と思えるほどの給与を手にしているケースは稀のようです。

営業の場合、基本給は低く、その分、インセンティブを支給するというケースは多く、驚くほどの給与を手にしている営業マンもいれば、インセンティブがまったくつかないという営業マンも。統計調査以上に給与格差は激しいことが推測されます。

きついノルマに、驚くほどの薄給……思わずクラっと眩暈がして、その場に倒れこんでしまいそうな営業マンの厳しい現実。どうか一線を越えないよう、踏ん張ってほしいものです。

(写真はイメージです/PIXTA)