インド政府が現地時間7月20日、バスマティ米以外の白米の輸出を禁止したことを受け、アメリカやカナダでは在外インド人がコメを買いだめするためにインド系食料品店に殺到した。ある店では、陳列棚によじ登って我先に米袋をつかみ取る人も現れ、この様子を撮影した動画がネットで瞬く間に拡散された。印ニュースサイト『The Pioneer』、在米インド系のニュースサイト『Greatandhra.com』などが伝えた。

インドは世界のコメの輸出の40%を占める世界最大の輸出国だが、今年はモンスーンによる大雨で作物が深刻な被害を受け、わずか1か月でコメの小売価格が上昇した。このためインド政府はバスマティ米以外のコメの輸出停止を命じて、国内価格の引き下げを図った。

このインド政府の発表により、輸出規制の対象になった「ソナマスリ米」を食べる北米在住のテルグ人やタミル人など南インド系の人々の間で動揺が広がった。ソナマスリ米はインドで主流のバスマティ米に比べて小粒で香りが弱い。日本でも近年人気が出てきた南インド料理の定食「ミールス」は、現地ではバスマティ米ではなくソナマスリ米などを使う。

ミズーリ州在住のヴェヌゴパル・レッディ・チェンチュさん(Venugopal Reddy Chenchu)がTwitter(現在はX)に投稿した食料品店の動画には、何人かの男性がお米コーナーの陳列棚によじ登り、高い場所にあるソナマスリ米の袋を次々に引きずり出す様子が映し出されている。彼らの足元では、その米袋を受け取ろうと多くの人が手を伸ばしており、お米コーナーの通路一帯が大騒ぎだ。

この動画を見たアメリカの人々は、新型コロナウイルス感染症パンデミックが始まった当初に各地で起きたトイレットペーパーの買いだめ騒動を思い起こし、騒然とした。

この動画以外にもアメリカの各地で、普段食べている非バスマティ米の品薄を心配した在米インド人らが食料品店に詰めかけた。米国南部在住のアダーシュさん(Adarsh)は、「(食料品店に)大勢が押し寄せ、10から12袋もコメを買った人も見かけました」と買いだめの様子をインドの英語系ニュースサイト『The Pioneer』に話している。アダーシュさんが行った時にはもうほとんどなかったので、2袋だけ購入したそうだ。

スマン(Suman)と名乗る人も「在庫はまだあったけど、値上がりしていましたね。ソナマスリのブランド米「ゴダバリ」は50ドル(約7,100円)にまで高騰していました。普段は23、24ドル(約3,300円)のコメがですよ。(インド政府発表当日の)木曜日は大混雑でしたが、食料品店の人から2日後にはまた入荷すると聞きました」と述べた。

在米インド系のニュースサイト『Greatandhra.com』によると、多くのインド系食料品店で一家族につきコメ1袋などの購入制限を設け、店によっては客がレジの列に4時間以上並んだという。

非バスマティ米の買いだめは、オーストラリアでも起きているようだ。

なお、今回のニュースには、SNSでこんなやり取りが見受けられた。

「完全に狂気の沙汰だ」
世界の終わりじゃあるまいし、冷静になろう。 コメの品種は他にもあるよ」
「米国がコメを自給していることは、マスコミは伝えないのかな。アメリカはコメの輸出国でもあるんだが」
「でもそれは、彼らが望むようなコメじゃないんだよ」
「バスマティ以外の白米は、アメリカではインド人でもほとんど食べない。ビリヤニやイドゥリなどの料理に必要なソナマスリ米などを南インド人が爆買いしただけだ」
「アメリカに住むインド人として、とても恐ろしいことです。私たちにとってお米はすべてなんです」
「そんなに心配することはないよ。どのコメだって、コメに変わりないじゃないか」
「慌てて食料品を買いに行ったけど、どの店にもお米はあったよ」
「だから、この動画はインド米の話だって」

選り好みして買い占めずに、バスマティ米やほかのコメを当面代用することを推奨する人と、食べ慣れた品種を少しでも確保しておきたい当事者に理解を示す人もおり、意見が大きく分かれていた。ちなみに、米国内での非バスマティ米の買いだめ騒ぎは初日だけで、翌日以降はすっかり落ち着きを取り戻したようだ。

画像は『Mirchi9 2023年7月23日付「Rice Ban: New Argument of NRIs!」』『India Posts English 2023年7月21日付「Ban on rice exports; People waiting in line for rice in America」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 秋本神奈)

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