ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)が主人公のドラマ「シークレット・インベージョン」(ディズニープラスで全話独占配信中)が、7月27日に最終回を迎えた。今作のミッションは、アベンジャーズの生みの親であるニック・フューリーがスクラル人によって結成された反乱軍から地球を守ること。しかし、スクラル人は擬態の名手だけに、誰が敵で、誰が味方か分からぬ事態に陥り、ミッションの遂行は困難を極めた。スクラル人とはいえ、全員が人間を敵視しているわけではなく、映画「キャプテン・マーベル」(2019年)で約30年前に出会った元将軍のタロス(ベン・メンデルソーン)は、文句を言いながらも常にフューリーの味方だ。さらにその娘のガイア(エミリアクラーク)もある事実を知ってから反乱軍リーダー・グラヴィク(キングズリー・ベン=アディル)への不信感が募り、反乱軍の情報をタロスに流してくれるようになった。しかし、これが彼女たち親子に悲劇をもたらすことになる。今回は全6話の流れと注目ポイントを紹介しよう。(以下、ネタバレがあります)

【写真】Instagramのフォロワー数が2800万人以上の爆発的人気を誇るエミリア・クラークが“ガイア”に

■スクラル人たちを追い詰めたのは、フューリーだった!?

約30年前、スクラル人はキャプテン・マーベルと同時期に地球に降り立ち、以来、ニック・フューリーと秘密裏の関係を続けてきた。彼らはもともとクリー人との戦いで母星を失っていたため、擬態の能力を生かして、タロスら数名がフューリーのスパイとして暗躍。タロスいわく、フューリーはそのおかげでS.H.I.E.L.D.の長官まで上り詰めることができたそうだ。

彼らはフューリーのために働く代わりに、地球での生活を手に入れた。そして、いつかフューリーとキャプテン・マーベルことキャロル・ダンバース(ブリー・ラーソン)が、彼らの新しい故郷を見つけてくれることを信じて生きてきたが、その約束はいまだに果たされていなかった。タロスは地球に堂々と住むことはできないかと問うが、同じ種族(人類)同士でも戦争が途絶えないのに、別種族を受け入れられるはずがないとフューリーは突っぱねるのだった。

だが、若い世代のスクラル人たちはもう我慢できなくなっていた。若きリーダーのグラヴィクは約束を守らないフューリーや地球人への恨みを募らせ、タロスをスクラル人社会から追い出した上で、反乱軍を結成して地球侵略計画を進めていく。作戦はこうだ。人類は民族紛争が絶えないので、擬態能力を使って対立をあおり、第三次世界大戦を勃発させようというのだ。この計画を知ったフューリーは次に起こるロシアでのテロを食い止めようとガイアの情報を基に現場に向かうが、テロを敢行された上に、自分に扮(ふん)したグラヴィクに部下のマリア・ヒル(コビー・スマルダーズ)を殺されるという失態を演じる。そのため、米政府やS.H.I.E.L.D.での地位を追われることになる。

■スクラル人は地球のあちこちに存在していた

スクラル人の地球上陸率は、フューリーが想像していた以上だった。彼は地球にいるのは一部のスクラル人だと思っていたが、実際はタロスが全員を呼び寄せていたため、100万人以上ものスクラル人が地球で生活していた。しかも彼らは姿形だけでなく、相手の能力もコピーすることができるため、英国首相やNATO事務総長など世界トップクラスの主要機関の中枢にも入り込んでいた。そんな要人の顔をしたスクラル人評議会の面々が攻撃的なグラヴィクをスクラル軍の将軍に任命したことから、地球侵略計画はこれまで以上にハイスピードで進行することになる。

侵略計画の中には、スクラル人の肉体強化計画もあった。地球外生物のDNAを入手し、誘拐した研究者にスーパースクラル人を作る装置を作らせていたのだ。政治的権力と腕力的スーパーパワー。グラヴィクは両方を手に入れて、徹底的に地球人を排除しようとしていた。そんな折、グラヴィクが母親を殺したことを知ったガイアは、反乱軍の計画を父親のタロスに報告するようになる。そして第3話ラスト、グラヴィクにスパイ行為を疑われたガイアは、彼の銃弾に倒れるのだった。

フューリーに妻が!? しかもそれはスクラル人

米政府やS.H.I.E.L.D.からの情報を得られなくなったフューリーは、MI6のソーニャ(オリビア・コールマン)と結託する。冷酷でやり手のソーニャは拷問もいとわず、確実に情報を手に入れ、邪魔者は消していく。その冷酷さは恐ろしいが、清々しくもある。そしてもう一人、フューリーに情報を提供してくれる者が現れる。それは彼の妻だ。なんとフューリーは結婚していたのである。しかもスクラル人と。

フューリーは、彼のスパイをしていたスクラル人女性ヴァーラ/プリシラ(シャーレイン・ウッダード)と結婚していたのだ。だが、フューリーがサノスのデシメーションで5年間消えていた間に彼女は元の自分に戻り、反乱軍の手先となっていた。そうして、いつの間にか反乱軍の手に落ちていたローズ大佐(ドン・チードル)からフューリーの殺害を命じられるのだった。

だが、ヴァーラ/プリシラフューリーを殺さなかった。独自のルートでローズがスクラル人であることを知ったフューリーは、“現在”のローズの下に向かい、“軍人の彼”に自分を元のポジションに戻すように伝える。気付いていないと思わせるためだろうか。そして、その足でロシア兵に扮したグラヴィクらがアメリカ大統領を襲撃する地点にタロスと向かう。アメリカ大統領は、第三次世界大戦を避けるための会談をロシア大統領とするためにロシア入りしたのだ。米兵やSPが迎撃するもグラヴィスらの勢いは抑えられず、フューリーとタロスも前線へ。なんとかアメリカ大統領を救い出すも、タロスがグラヴィクに捕えられ、殺されてしまった…。

■長年、隠されてきたアベンジャーズたちのDNAが受け継がれる!?

ガイアは、グラヴィクに撃たれる前に彼らが開発した肉体強化装置でスーパースクラル人となっていたため、死なずに済んだが、そんな彼女の元に父親の悲報が届く。せっかく元の親子関係に戻りつつあったのに、悔しい限りだ。フューリーから父親の亡骸を引き受けたガイアは、ヴァーラ/プリシラと共に彼を弔い、その後は“行くべき所”へ向かうのだった。

一方、スーパーパワーを手に入れたグラヴィクは暴君と化していた。フューリーを生かしたヴァーラ/プリシラの処刑を命じ、自分に意見する仲間を殺害。加えて、さらなる力を得るために、アベンジャーズたちのDNAをブレンドした血清を持ってこいとフューリーに命令する。もし持ってこなければ、スクラル人と拉致した地球人がいるロシアの村にミサイルを撃ち込むと。

仕方なくDNAを手にしたフューリーは、いつもの革のコートとアイパッチを身に着けて戦闘体制となり、グラヴィクの下に向かうのだった。果たして、アベンジャーズたちのDNAと能力を受け継ぐのは誰なのか、最後にフューリーはどこへ向かうのか…。11月10日(金)に公開される映画「マーベルズ」へとつながる最終回の第6話は、物語的にもアクショシーン的にも本作最大の盛り上がりを見せた。加えて、“フューリー夫婦”の未来もしっかりと見届けられる。

◆文=及川静

「シークレット・インベージョン」第5話より/(C) 2023 Marvel