「十年ひと昔」と申しますが、アニメの世界で10年前は大昔のように感じることもあれば、今でもバリバリ現役のシリーズ作品がすでに放送されていたりという、微妙かつちょうどいい間合いの時間です。

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今回はそんな10年前──2013年の夏クール、TVアニメの世界でどんな作品が放送されていたのかを見ていきたいと思います。

 

ローゼンメイデン

 


漫画家ユニット「PEACH-PIT」の人気コミックが7年ぶり2回目のアニメ化を果たしました。といっても、同じストーリーを2度アニメ化したわけではありません。原作の展開にともない、新たな物語が紡がれたのです。

ローゼンメイデン」は、ゴシックロリータやドールから着想を得た物語。豪奢な服を着た美しいドール「ローゼンメイデン薔薇乙女)」たちが究極の少女「アリス」となるべく「アリスゲーム」を戦います。ドールたちは選ばれた人間「マスター」と契約を結び、お互いに影響し合うのです。繊細な画風、幻想的な世界観、美しいドールどうしの戦い、ドールとマスターの絆……といったディープな要素が好評を博しています。コミックは2008年に幻冬舎から集英社へ移籍。2004年のアニメ化は移籍前、2013年には移籍後の物語が描かれました。

今回の制作はスタジオディーン。監督は、後に「かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~」で人気となる畠山 守(小俣真一)氏。キャラクターデザインは「Re:ゼロから始める異世界生活」を手がけることになる坂井久太氏。13話構成で移籍後の「ローゼンメイデン」の中盤までをアニメ化しています。主人公である内気な少年・ジュンは謎のドール・真紅と出会ってアリスゲームに巻き込まれます。そして、真紅と出会わないことを選んだパラレルワールドジュンは大学生となって自分の居場所を探しますが、レプリカの真紅の仮下僕となり、こちらもアリスゲームに関わることに。しかしジュンは謀略にはまり、元の世界で敵対していたドール・雪華綺晶を組み立てることになってしまうのです。

根強いファンを持つ作品だけに、移籍後の後半、そして完結までのアニメ化が望まれています。

 

ガッチャマンクラウズ

 


名作アニメ「科学忍者隊ガッチャマン」の流れを汲むのが「ガッチャマンクラウズ」。短編CGアニメ「おはよう忍者隊ガッチャマン」、実写映画「ガッチャマン」とともに、「ガッチャマン」シリーズ復活を印象づけた作品です。

本作で特徴的なのが、1972年の作品をベースとしつつ、2013年にアップデートした手腕でしょう。設定やキャラクターデザイン、人材抜擢にまで現代的な手法が取り入れられています。オリジナルでは男性4人+女性1人で構成された科学忍者隊が科学の力で世界を守りました。いっぽう、本作のガッチャマンたちは女子高生たち。魂の力を実体化した「NOTE」で特殊な能力を操り、SNS「GALAX」の力も借りつつ、犯罪宇宙人に立ち向かっています。女子高生、特殊能力、SNS、犯罪宇宙人といった構成要素は全てが現代風。ポップな画風で知られるイラストレーターのキナコ氏が原案を担当したキャラクターと相まって、2013年のガッチャマンが実現されています。

もともとネットで二次創作を中心に手がけていたキナコ氏のところに、突如監督の中村健治氏からオファーが来たといいますから、現代的な人材発掘といえます。東京都立川市ともコラボレーションが行われており、こうした“ご当地”要素は、この時期のアニメにおける特徴です。

本作の物語は基本的に「科学忍者隊ガッチャマン」との繋がりはありませんが、旧作を知る人に向けたファンサービスも行われています。名悪役ベルク・カッツェと同名のキャラクターが敵として登場。トリッキーな言動と人々を操る邪悪な行動で強い印象を残します。また、旧作でベルク・カッツェに指令を下した邪悪の影「総裁X」は、本作では味方側が用いるAIの名前として使われ、旧作を知る人の間で話題を呼びました。

Free!

 


競泳にかけた少年たちの青春模様を描く「Free!」。TV版3シーズンに加え、原案小説をベースとした劇場版や新作など映画5作が展開したこのシリーズは、2013年夏に始動しています。

本作は、京都アニメーション主催「京都アニメーション大賞」の2011年小説部門で奨励賞を受賞した「ハイ☆スピード!」が原案。泳ぐことを愛しつつも水泳から遠ざかり無気力な日々を送る遙、遙のよき理解者である真琴、ムードメーカーで遙の泳ぎに憧れる渚たち3人は、幼なじみである凛と再会。凛は留学後に人が変わったようになっており、遙を圧倒的な力でねじ伏せる。遙たち3人は水泳部を設立し、泳げない怜を仲間に加えて活動を開始。いっぽう、凛も自分の高校で水泳部に入り、遙たちと対決しようとする……。

後に「BANANA FISH」「SK∞ エスケーエイト」を手がける内海紘子氏が初めて監督として登板、2009年版「涼宮ハルヒの憂鬱」の総作画監督、「氷菓」のキャラクター原案・デザイン及び総作画監督である西屋太志氏がキャラクターデザインを務めているというように、スタッフも実力派で固められています。水泳がテーマとなったアニメは比較的珍しいのですが、本作では作画に定評のある京都アニメーションの実力が遺憾なく発揮され、美しい水と繊細な心理描写がファンを魅了しています。

本作の後、アニメは第3シーズンまで続き、遙たちがそれぞれに成長していく姿が描かれました。2023年8月にはカラオケ「JOYSOUND」でシリーズ10周年を記念したコラボキャンペーンが行われるなど、今もファンから熱く支持されています。


(文/箭本進一)


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【2013年夏アニメを振り返ろう!】「ローゼンメイデン」「ガッチャマンクラウズ」「Free!」人気アニメのリメイク&次世代を担う新作アニメが始動!【アニメ10年ひとむかし】