これほど多くの人が待ちわびていたドラマシリーズはそうないのではないか。Netflixオリジナルシリーズ「D.P. -脱走兵追跡官-」のシーズン2が、7月28日より独占配信されている。

【写真を見る】脱走兵追跡官の活躍を通し、脱走兵たちの抱えた苦しみに寄り添う「D.P. -脱走兵追跡官-」

母さん”と畏怖される強かな女性が暗黒街を仕切るストーリーでノワールのクリシェを脱した『コインロッカーの女』(15)や、ひき逃げ犯検挙のプロフェッショナルたちが躍動する『スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班』(19)など、独自の手法で社会派エンターテインメントを生み出してきたハン・ジュニ監督による「D.P. -脱走兵追跡官-」。軍隊から脱走した兵士を捜索する追跡官のアン・ジュノ(チョン・ヘイン)と、彼の上官でもあり良き相棒のハン・ホヨル(ク・ギョファン)の活躍を描き、絶大な人気を誇るドラマシリーズだ。

若き2人の成長譚として優れているだけではなく、国防の義務としてすべての韓国人男性に課せられた軍隊にはびこる暴力と、おぞましい行為を見ぬふりする傍観者を強く告発したことも社会的意義があった。苦悩するような表情のアン・ジュノが隊列に加わらずに別の方向へ歩みを進めていく姿と、壮絶な暴力を受けていた新兵が銃を乱射するシーンが描かれたシーズン1のラストは、多くの視聴者に強い衝撃と問題意識を与えた。

ハン・ジュニ監督が本作の新たな章を準備する間、執拗な校内暴力を受ける主人公が友人と共闘して加害者に立ち向かう青春アクションドラマ「弱いヒーロー Class1」の演出に参加したことで、ジャンル作品のクリエイターとして「D.P. -脱走兵追跡官-」とはまた違うアプローチを手に入れた。軍隊だけではなく、社会のどの集団にも共通する不条理についての深いメッセージを、普遍的でセンスのあるスタイルのジャンルドラマとしてキャッチーに解釈したシーズン1だったが、続くシーズン2を制作するにあたり「なぜこの物語をこれからもすべきなのか、ドラマの中で何を見せなければならないのかを悩んだ」と振り返る。

そして「シーズン1では“私は傍観したのではないか”、“どんなことにも試みるべきではないか”の問いかけで終えていたなら、シーズン2はその問いについて悩みながらも実際に行動し、努力するストーリー」と説明している。

もちろん、「D.P. -脱走兵追跡官-」シーズン1の良さや強みを、シーズン2にも余すことなくちりばめた。ハン・ジュニ監督は「ひとつのエピソードごとに独自の特徴がある6本の中編映画を目指した」とのことで、それぞれのエピソードにアクションヒーローもの、社会批判、ミュージカル、ホラーと多彩なジャンル性があるので、思わず一気見してしまう吸引力が備わっている。

シーズン1のラストで銃乱射事件を起こした新兵キム・ルリ(ムン・サンフン)の脱走から始まる序盤はエモーショナルな余韻を残し、韓国中を駆けずり回るD.P. の二人が繰り広げる追いつ追われつのドタバタアクションが活気を吹き込む。ミュージカル音楽を取り入れて劇中の登場人物を説明したり、一般人が近づけないGP(非武装地帯の内部にある最前線の監視所)が印象的なシーンでは孤立感とホラータッチが視聴者をのめり込ませる。一足先にシーズン2を鑑賞したファンは「脱走兵たちの表情や背景がより多様になり、テーマが広がった」と、シーズン1以上の見ごたえだに興奮を隠せない様子だ。

■黄金コンビの復活と新キャラの登場に期待!ストーリーも深みを増したシーズン2

視聴者から熱く支持されたジュノとホヨルの黄金コンビはもちろん、「D.P. -脱走兵追跡官-」 シーズン2には、シーズン1以上に演技巧者たちによる個性と魅力溢れるキャラクターが集結した。

「D.P. -脱走兵追跡官-」シリーズへの出演以来、さらに引く手あまたな俳優に躍進したチョン·ヘイン。制作発表会では、撮影現場のムードが垣間見えるエピソードを披露した。

シーズン1の撮影が終了したとき、チョン·ヘインは“「D.P. -脱走兵追跡官-」シーズン2で会いましょう”と視聴者へメッセージを送ったが、これはシーズン2制作はおろか、シーズン1すら公開していないタイミングだった。俳優、監督、スタッフのすばらしさに感動したチョン・ヘインが「誰ひとり交替することなく、また一緒に作品を撮りたい」という願いを込めたのだという。彼は当時を振り返り、「 まさか本当にシーズン2を撮れるとは思いませんでした」と、噛みしめるように喜びを表現した。さらに、シーズン1では暴力問題について深く苦悩していたアン・ジュノが、シーズン2ではまた違う姿を見せると予告した。「心理的に辛い状況に置かれ、不条理に絶えず疑問符を投げていた彼が一歩進み、“私に何ができるだろうか”と考えながらひるまずぶつかっていく」として、内面に葛藤を抱えながら勇敢に行動する姿を、鮮烈かつ繊細に表現してくれているようだ。

ハン・ホヨル役は、シーズン1に引き続きク・ギョファンが務める。彼も「シーズン1を撮影したとき、なぜかシーズン2が製作されそうだという感じがした」と、チョン・ヘインと同じ気持ちだったことを明かした。 「季節がめぐるように、本作へ帰ってきた感覚です。視聴者の方々と早く分かち合いたくて、撮影中ずっと監督とスタッフの方々に“これはいつ公開されるんですか?”と聞いてしまいました」と、「D.P. -脱走兵追跡官-」への深い愛情を語った。

ク・ギョファンは「ホヨルは私たちの周りにいる“最も普通の青年”という気がします。追跡官として脱走兵を安全に連れてくることだけ考えている人物」と紹介した。 集団内の暴力を中心に、社会に蔓延する問題を視聴者に告発しているシリアスな「D.P. -脱走兵追跡官-」の中で、自由な魂を持つホヨルはホッと安堵させてくれる。ク・ギョファンのユニークな個性と抜群の演技力により、近年の韓国ドラマの中で誰もがその名を挙げるであろう愛されキャラとなったホヨル。“最も普通の青年”の持つリアリティとユーモアが、シーズン1以上に私たちファンを楽しませてくれるに違いない。

■パク中士は除隊男性たちの人気者!?ソン・ソック扮するイム大尉は新たな姿で魅了

前作に引き続きキム・ソンギュン、ソン・ソックもまた、シーズン2に合流した。チョン・ヘインとク・ギョファンによる“ジュノヨル”のケミストリーはもちろん、二人の上司である捜査官パク・ボムグ中士とイム・ジソプ大尉の絶妙なコンビネーションもアップグレードし、目を引く。

パク・ボムグ中士を演じたキム・ソンギュンは「自身の信念と軍隊の規律との間で深く悩み、兵士たちを守ろうと行動する人物」として、ボムグの活躍に期待を集めた。リアリティあるボムグのキャラクターは、兵役を終えて除隊した韓国人男性の間では「本当に軍隊にいそう!」と大人気だったそうで、制作発表会では「軍畢(グンピル、兵役を終えて除隊した韓国人男性)たちのスターって、嬉しいことなのか?」と自身でツッコミを入れて会場を沸かせた。彼のこうした笑いのセンスもまた、「D.P. -脱走兵追跡官-」を盛り上げている要素のひとつだろう。

イム・ジソプ大尉を演じるのは、「私の解放日誌」のク氏役で爆発的シンドロームを巻き起こしたソン・ソック。再び演じるイム・ジソプ大尉というキャラクターを「シーズン2では彼を通じて様々なことを表現したい欲求があった。“責任感”という言葉で演技がしたかった」と意味ありげに語る。進級のためなら手段を厭わない野心家な軍人で、ジュノたちを守ろうとするパク・ボムグ中士としばしばぶつかっていたシーズン1のイム・ジソプ大尉だったが、シーズン2ではどんな姿を見せてくれるのだろうか。

「D.P. -脱走兵追跡官-」シーズン2には、シーズン1を輝かせたキャストだけでなく、フレッシュな顔ぶれも勢揃いした。ジュノたちが所属する103師団憲兵隊捜査課と対立する国軍本部所属のク・ジャウン准将に扮するのは、ベテラン俳優のチ・ジニ。同じく国軍本部のソ・ウン中佐は、精力的に活躍してきたキム・ジヒョンが務める。

また、韓国芸能界に現れた新星として名高いチェ・ヒョヌクも兵士シン・アフィ役として登場するなど、話題に事欠かない。プレビュー試写会では「俳優たちは時に穏やかに、時にエモーショナルに、キャラクターの深い苦悩を神経の行き届いた演技で表現している」と称賛の声が相次いでおり、役者たちが持つエネルギーの相乗効果が存分に発揮されたドラマに完成したことを予感させる。

気になるのは、「D.P. -脱走兵追跡官-」シーズン2の始まりが“第1話”ではなく“第7話”であることだ。その理由をハン・ジュニ監督は「シーズン1のラストにあったとても大きな事件を通じて、その後どのようにキャラクターが変わっていくのかを語りたかった」と説明した。ストーリーが途切れることなく繋がっていることを示す設定は、暴力や傍観者というテーマが軍隊だけで起きているのではなく、現実社会の普遍的な問題であることを私たちに考えさせ、作り手の真摯な態度を感じる。

ハン・ジュ二監督が拡張させたストーリーがどこへ広がっていくのか。そして、ジュノとホヨルがどんな活躍を見せ、成長していくのだろうか。さらに深く厚みを増した「D.P. -脱走兵追跡官-」シーズン2を、逃さずチェックしてほしい。

文/荒井 南

アン・ジュノの新たな任務が始動!「D.P. -脱走兵追跡官-」シーズン2/[c]Netflix