神奈川県西部の山岳地帯で、新東名の未開通区間の建設工事が進んでいます。そのなかにあるトンネルは、“ウルトラマンと戦った怪獣に壊された”ことも、あるとかないとか。現場はかなり急峻な場所でした。

映画のなかで永遠に残り続ける工事現場

神奈川静岡県境付近で新東名高速の未開通区間(新秦野~新御殿場)の建設が進んでいます。2023年7月31日NEXCO中日本が主催する一般の親子向け見学ツアーの一環として、その神奈川県側の工事現場が公開されました。

神奈川県最西部、山北町の事業PR館に集合し、最初に向かったのが「川西工事」と呼ばれる現場です。川沿いのPR館から、次々にやってくる大型ダンプとともに、急斜面の工事用道路をひたすら上っていくと、2つのトンネルが口を開けていました。さらに斜面を上り、トンネルの上にある工事事務所で説明を受けました。

見学者向けの説明プレートには、映画『シン・ウルトラマン』の紹介があり、ウルトラマン禍威獣(怪獣)「ゴメス」のフィギュアも置かれていました。「ゴメス」はこの谷ケ山トンネルの中から現れたという設定で、ここが『シン・ウルトラマン』のロケ地になったのです。

「わたしたちもエキストラとして出演し、怪獣の出現に逃げ惑いましたよ(笑)」と、現場のスタッフが説明してくれました。公開後、樋口監督から、「現場は完成したら工事をしていたことが跡形もなくなってしまいます」「映画の中であの現場は残り続けるのです」といったメッセージが寄せられています。

ロケは2019年に行われましたが、その現場は、まだまだ工事の真っ最中です。

新東名イチの秘境スマートICに?

ここは、前出した川の水面から120mの高さを通る河内川橋に続く工区で、トンネルの手前に「山北スマートIC」が設けられます。山を切り開き、盛土をしたうえで本線とランプを構築しており、ランプの一部になるであろうループ状に配置されたボックスカルバート(函体)の一部が砂の中に埋まっていました。

ここへ来た時から、ひっきりなしに大型ダンプが行き来しているのが気になっていましたが、盛土量は320万立方メートルで、東京ドーム約3個分に上るのだとか。ダンプは1日500台が通行するそうです。なかには、公道を走れない超大型のダンプもあり、人の背丈くらいの巨大なタイヤを備えています。

そうした現場ですが、ICTをフル活用しているそうで、重機は全て衛星で位置を把握し、目印要らずで施工が可能なのだそう。測量は全てドローンで行うなど効率化されており、規模のわりに少ない人員で作業を進めているといいます。

ちなみにこの山北スマートICは、地域のメイン道路である国道246号から県道に入って河内川を少し遡り、その川の対岸の崖上にできます。東京方面の出入りのみ可能なハーフICです。国道からの高低差も大きく、新東名で最も秘境感ただようロケーションになるかもしれません。

しかしながら、現在の東名は県境の大井松田~御殿場間で25km以上にわたってICがなく、東名の通行止め時には国道246号がしばしば渋滞になるため、地域はこのスマートICに大きな期待を寄せています。開通は本線と同時、2027年度の予定です。

新東名の山北スマートIC建設現場(乗りものニュース編集部撮影)。