小さな田舎町では働き手となる若者の人口が少なく、地元企業は従業員の確保に苦労することもある。アメリカのある田舎町のレストランも同じ悩みを抱えていたが、その人手不足を解消するために配膳ロボットを導入したところ、地元住民の怒りを買ってしまった。米ニュースメディア『New York Post』などが伝えている。

米オレゴン州クラカマスエスタカーダにある「ザ・カザデロ(The Cazadero)」は、美しい木々の間を縫うように流れるスプリング川の景色を見ながら食事が楽しめるレストランだ。しかし夏のかき入れ時の前に、レストランオーナーのシェリー・アンドラスさん(Sherry Andrus)は頭を抱えることになった。

シェリーさんはかねてより従業員を募集してきたが、レストランのあるエスタカーダは人口3700人(2020年時点)ほどの小さな田舎町で、州最大の都市ポートランドからは車で45分ほど離れていることもあり、そこから通勤しようと思う人はほぼ皆無と言ってもいい状態だった。

客が多い7月には、人手が足りず「サービスの対応が遅い」などの苦情を受けることもあったようだ。そこでシェリーさんは、今年3月にラスベガスで開催された飲食店の見本市「Bar & Restaurant Expo」で見つけた配膳ロボット「プラト(Plato)」を今年4月頃にリース契約して導入したという。

シェリーさんは、Facebookの地元コミュニティページにプラトを導入したことを投稿し、レストランのFacebookには4月18日、プラトの写真を添えてこのように綴っていた。

「料理がこなくてイライラしたことはありませんか? そんなあなたの声に耳を傾けました! 私たちのフルタイムサーバーバーテンダーアシスタントのプラトをご紹介します! プラトがお客様に素早く料理を運び、テーブルの片付けのお手伝いもいたします。私たちのチームにようこそ、プラト!」

ところがプラトを導入したことで、一部の地元の人たちから「もう二度と行かない!」「ノーサンキューだよ!」「私たちの静かな町から消え失せろ」といった声があがった。地元の人たちにとってプラトは、人間の仕事を奪いかねない存在に見えてしまったようだ。その後、コミュニティページが炎上してしまい、ページの管理者はコメントの受付をストップしたが、中にはレストランを擁護するこのような声も届いた。

「あなたたちは正気じゃない! あなたたちが『対応が遅い』って文句を言うから、店は従業員を募集していたのに…。そんなに怒るんだったら、コメントするのをやめて自分が応募して働きなさいよ!」

一方でシェリーさんは、米ニュースメディア『Fox News』のインタビューに応じ、「ロボットを導入したことで人々が『レストランに来たくない』と言うとは思いもしませんでした」と吐露した。しかしレストランに併設されているバーの常連客の何人かはプラトを楽しんでいるようで、そのうちの一人、ベトナム戦争に従事した退役軍人のロイさん(Roy)は「プラトは通りかかるたびに『こんにちは』って挨拶してくれるんだよ」と話している。

そしてシェリーさんは、最後にこう述べた。

「この町の皆さんは小さな田舎町であり続けることを好み、新しいテクノロジーが入ってくることは望んでいないのです。とはいえ、私たちは成長して規模も倍になっているし、ここに引っ越してくる人たちもほとんどが都会からなんですよ。あまり言いたくはありませんが、人口も人々の層も大きく変わってきているのです。私だってみんなを喜ばせたいけど、ここは小さな町ですからね。」

プラトは現在、レストランで大きな役割を果たしているが、ロボットも長時間働くと限界に達するようだ。今年4月には、米オレゴン州の「アジリティ・ロボティクス(Agility Robotics)」社が開発した、倉庫や物流センターなどで人間の代わりに荷物を運ぶロボットが、長時間働き続けた後に気絶するように突然崩れ落ちてしまった。倒れたロボットの動画がSNSでシェアされると、多くの人から「休憩が必要だったのかも」「過労死かな」といった冗談交じりのコメントが見受けられた。

画像は『New York Post 2023年7月30日付「Small town restaurant’s robot waiter enrages locals, drives customers away: ‘I will never go there again’」(FOX News)』『The Cazadero 2023年4月18日付Facebook「THave you been frustrated waiting for your food while your server is helping other customers?」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)

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