今季初勝利を挙げたラグビー日本代表。嫌な流れと黒星続きのプレッシャーから解き放たれた日本代表が残り2戦、加速度を増して強化を進めることができるのか。『ラグビーワールドカップ(RWC)2023』に向けた国内最後のテストマッチ、『リポビタンDチャレンジカップ2023 パシフィックネーションズシリーズ(PNS)』フィジー戦ではさらなるステップアップを果たしたいところ。当然、指揮官も『RWC』を睨みつつ、フィジー戦での勝利を見据えた。

「今まで7週間半準備をしてきた。最初の2試合(オールブラックスXV戦)はチームとして難しい部分があった。そしてその後のサモア戦は勝つべき試合だったが、(リーチ マイケルの)レッドカードプレッシャーはかかってしまった。だがチームとしてあと少しで勝てるところまでいけたのは良かったと思っている。そして先週のトンガ戦では自分たちのベストラグビーができた。しかしその中でもメンタルのところで改善点があった。試合中ところどころでスイッチオフになってしまったので、そこは今週しっかり改善していきたい。ここまでチームとしてはいい形として出来上がってきている。この暑い中『RWC』までに少しずつチームを作り上げているという実感がある。フィジー戦はタフになるが、しっかりやっていきたい」

リポビタンDチャレンジカップ2023 PNS』フィジー戦の試合登録メンバーは次の通り。

【日本代表】
1稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)37
2坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)35
3ヴァル・アサエリ愛(埼玉パナソニックワイルドナイツ)24
4ジェームス・ムーア(浦安D-Rocks)15
5アマト・ファカタバ(リコーブラックラムズ東京)2
6ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ)14
7ピーター・ラブスカフニ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)15
8姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)27
9斎藤直人(東京サントリーサンゴリアス)13
10松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)31
11ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)2
12長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ)2
13ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)12
14セミシ・マシレワ(花園近鉄ライナーズ)3
15松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)49
16堀江翔太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)70
17クレイグ・ミラー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)11
18具智元(コベルコ神戸スティーラーズ)23
19下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス)1
20ベン・ガンター(埼玉パナソニックワイルドナイツ)6
21流大(主将、東京サントリーサンゴリアス)32
22李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)8
23中村亮土(東京サントリーサンゴリアス)33
※所属チームの後の数字は代表キャップ数。

ジョセフHCは今夏初めてラブスカフニと下川のFL陣をメンバー表に記した。
「(ピーター・)ラピース(・ラブスカフニ)は経験豊富だし、前回の『RWC』でもチームをリードしてくれた。彼はクボタ(スピアーズ船橋・東京ベイ)で手術して2~3週試合に出られず、なかなか準備ができなかったが、今はコンディションが上がってきた。彼は『RWC』に向けて価値のある選手なので、今回起用した。
ワーナーとウヴェもいないので、ジャックがLOに回ったり、甲嗣もLができる。こういう状況は『RWC』でも起こり得るだろう。甲嗣とガンターがベンチにいることで、3つのポジションをカバーできると思う。甲嗣はワイダートレーニンググループに属しているが、彼がカバーに回ることが望ましいと思っている。(ファウルア・)マキシはスペシャルなNO.8だし、姫野が80分間出ることをチームのプランとして考えている。ガンターもそうだが、甲嗣は6番をカバーしてくれる。強さも評価しているし、練習も素晴らしいので、今回彼を選んだ」

ジャック・コーネルセン (C)スエイシナオヨシ

FWのケガ人についても言及した。
「3人がケガをしている。ワーナー・ディアンズは練習中に足首をひねってしまった。自分としても今週は試合に出てほしかったので残念。復帰まで2~3週間かかる。ウヴェは試合で肩を痛めて先週痛めて、練習にも出ていない。その代わりジャックが入った。ジャックはLOもカバーできる。テビタ(・タタフ)は手首をケガして練習に出ていない。福井(翔大)に関してはサモア戦で頬の骨にヒビが入ったので、あまりリスクを取りたくないので2週間くらい休んでいるところ」

ジョセフHCはコーネルセンへの好評価も口にした。
ジャックは素晴らしく強い。フロントロー以外のポジションすべてをカバーできると思っている。頭がスマートで、ワークレートが高く、ラインアウトのコーラー(サインをコールする役割)もできる。彼はどこでもプレーできるので、我々にアドバンテージをもたらしてくれる。リーチレッドカードで試合に出られないオプションになるし、ほかにもケガや病気の選手もいるので」

ワーナーが不在のLOはファカタヴァ、シオサイア・フィフィタのいないWTBはナイカブラやマシレワがチャンスを掴んだ。
ワーナーもサイア(シオサイア・フィフィタ)も浦安合宿でケガをして、なかなか調子が上がってきていない。ワーナーのポジションはファカタヴァがルーキーながらベストプレーヤーと言えるほどのパフォーマンスを見せている。ニュージーランドXVとの初戦は難しかったが、サモア戦、トンガ戦では素晴らしいプレーを見せてくれた。サイアはフィットネスが戻ってきているが、ジョネもマシレワも安定したパフォーマンスを見せているので、彼の出場機会はなかなかない。だがそれがラグビーだ」

国内最後の試合ではナイカブラとマシレワの両WTBにFB松島を置いたバックスリーで臨む。
「ふたりのフィジアン(ナイカブラ、マシレワ)は本当にいい活躍している。ふたり同時にプレーすることによってスキル、ワークレートともにより素晴らしいものを出してくれている。ジョネはアタックだけではなくディフェンスでもしっかりパフォーマンスしている。前の試合ではトライも取ってくれた。セミシはチームのためにスペースを作ってくれる。今回フィジー戦というふたりにとっても特別な試合になるので、今回もメンバーに選ぶという判断をした。
松島は、サモア戦ではいいパフォーマンスができなかったので、トンガ戦は山中(亮平)を出した。FBは相手がキッキングゲームを仕掛けてくることが多い。イングランドアルゼンチンもたくさんキックを蹴ってくるので、ハイボールキャッチのスキルやそこからのカウンターやキックで蹴り出すことが重要になってくる。山中も松島もできるので、これからセレクションは難しい」

80%固まった『RWC』メンバーについて、ジョセフHCは残り20%のセレクションの難しさを明かした。
「先週メンバーの80%が決まっていると答えたのは、ある程度のグループでは簡単にメンバーを選ぶことができるから。それはスペシャルな選手。フロントローはスペシャルポジション。ケガやコロナなどの病気もあるので、3人ずつ選ぶ必要があり9人決まっている。9番も3人と考えるとすでに12人になる。残り20%を選んでいくのは難しいし、その難しい判断をしていかないといけない」

松島幸太朗 (C)スエイシナオヨシ

対するフィジー代表は7月22日トンガ代表戦、29日・サモア代表戦で2連勝をマーク。若いメンバーが並ぶBK陣を36キャップのCTBワイセア・ナヤザレヴ主将と43キャップのSOベン・ヴォラヴォラがリードする。

フィジー代表】
1エロニ・マウィ
2サムエル・マタヴェシ
3ルケ・タンギ
4アルバート・トゥイスエ
5テモ・マヤナヴァヌア
6レキマ・タギタギヴァル
7キティオネ・カミカミザ
8メリ・デレナランギ
9シミオネ・クルヴォリ
10ベン・ヴォラヴォラ
11セレスティノ・ラヴタウマンダ
12ヴィリモニ・ボティト
13ワイセア・ナヤザレヴ
14チウタ・ワイニゴロ
15シレリ・マンガラ
16テヴィタ・イカニヴェレ
17ペニ・ラヴァイ
18メサケ・ドンゲ
19テ・アヒワル・シリキダヴェタ
20チョセヴァ・タマニ
21フランク・ロマニ
22テティ・テラ
23イライサ・ドロワセセ

リポビタンDチャレンジカップ2023 パシフィックネーションズシリーズ』日本代表×フィジー代表は8月5日(土)・秩父宮ラグビー場にてキックオフ。チケットは予定枚数終了、試合の模様は日本テレビ系にて生中継。

8月15日(火) には『RWC 2023』を戦う日本代表33名のメンバーを発表し、東京・丸の内で『ラグビー日本代表 BRAVE 壮行会 2023 #選手もファンもひとつになって世界へ』を開催する。

その後8月26日(土)・イタリア トレヴィーゾでの『リポビタンDツアー2023』イタリア代表戦を経て、『RWC 2023』へ突入。9月10日(日)・フランス トゥールーズでチリ代表戦、17日(日)・ニースでイングランド代表戦、28日(木)・トゥールーズでサモア代表戦、10月8日(日)・ナントアルゼンチン代表戦とプールDを戦う。

取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)

(写真左より)下川甲嗣、ピーター・ラブスカフニ