日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! 今回は『トランスフォーマー』シリーズの最新作と、黒人クィアは海兵隊でどう生き抜く? A24製作のヒューマンドラマ!

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『トランスフォーマー/ビースト覚醒』

評点:★3点(5点満点)

© 2023 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, TRANSFORMERS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO.© 2023 HASBRO
© 2023 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, TRANSFORMERS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO.© 2023 HASBRO

子供っぽい楽しさ、マンガ的な楽しさに満ちた快作

トランスフォーマー』シリーズ最新作だが、これまでのシリーズに先行する1994年が舞台の新たなアドベンチャーとして新鮮な気持ちで観られた。

今回は90年代後半にテレビ放映され大人気を博した(筆者も観てました)『ビーストウォーズ超生命体トランスフォーマー』からゴリラチーターの姿をしたロボットも参戦! マンガ的な楽しさに溢あふれた作品になった。

そこには熱い友情があり、自分の役割に目覚める若者たちがいて、リスペクトと共闘がある。そういうあれこれをまっすぐ正攻法で描いたところに本作の強みがある。自動車がロボットに変形し、メカゴリラがメカ動物と闊歩(かっぽ)する作品はそのように描かれるべきだからだ。決して斜に構えず、観ているこちらが赤面するほどのストレートさをもって正義や友情の大切さを訴えかける映画であり、そういうストレートさの持つ力を教えてくれる作品なのである。

シリーズ1~5作目を監督したマイケル・ベイの異常なケレンと濃密さはさすがに望むべくもないが、そのことで『トランスフォーマー』というフランチャイズの持つ「どこまでも子供っぽい楽しさと勧善懲悪の爽快感」がより明確になったのかもしれない。

STORY:オプティマスプライム率いるトランスフォーマーたちが地球に来て間もない1994年。あらゆる星を食べ尽くす「ユニクロン」が、地球を標的に動き出した。プライムは人類や「ビースト戦士」たちと共に最強の敵に立ち向かう。

監督:スティーブン・ケイプル・Jr
出演:アンソニーラモス、ドミニク・フィッシュバック、ルナ・ローレン・ベレスほか 
上映時間:127

全国公開中

『インスペクション ここで生きる』

評点:★3点(5点満点)

© 2022 Oorah Productions LLC.All Rights Reserved.
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「マジョリティだけの世界」は存在し得ない

「男同士の絆」を極度に強調するような特定の環境、すなわち軍隊であるとか、警察、スポーツチーム、男子校などにおいて、ミソジニー(女性嫌悪)が強化されるのと並行してホモフォビア(同性愛嫌悪)が激烈になるのは、考えてみたら不思議なことだが、それは今現在もありとあらゆるそういった場で進行中の現実でもある。

本作は監督エレガンス・ブラットンの実体験に基づく作品で、10年間ホームレス暮らしをしていたゲイの青年がアメリカ海軍に入隊する。

当時は「Don't Ask, Don't Tell」政策(入隊希望者がゲイであるかどうかについて「尋ねないし、答える必要もない」というもの)が取られていた時代だが、それと実際に部隊内で自分がゲイであることがバレてしまうこととは話が別だ。ホモソーシャルな価値観が強固に支配する空間で、いったい彼はどうやってサバイブしたら良いのだろうか?

だが、いみじくも劇中のセリフにあるように「もしゲイの入隊を完全に禁止してしまったら、軍隊は崩壊してしまうだろう」。これは社会全体についても言えることだ。マジョリティは「マジョリティだけの世界」を夢想するが、そんなものは永遠に実現し得ないのだから。

STORY:イラク戦争ただなかの2005年のアメリカ。ゲイの青年フレンチは、自らの存在意義を求めて海兵隊に入隊。過酷な訓練に耐えるフレンチだったが、ある日、自身のセクシュアリティが露見したことで鬼教官の苛烈なシゴキが始まった

監督・脚本:エレガンス・ブラットン
出演:ジェレミー・ポープ、ガブリエルユニオンラウル・カスティーヨほか 
上映時間:95分

TOHOシネマズ シャンテほか全国公開中

●高橋ヨシキ(たかはし・よしき)

デザイナー、映画ライター、サタニスト。長編初監督作品『激怒 RAGEAHOLIC』のBlu-ray&DVDが発売中。

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【写真】『インスペクション ここで生きる』のレビューにも注目!

高橋ヨシキが映画『トランスフォーマー/ビースト覚醒』と『インスペクション ここで生きる』をレビュー!