帝国データバンクは、全国の主要な106花火大会における「有料席」の導入状況について調査・分析を行った。

<調査結果(要旨)>

  1. 主要花火大会の7割が「有料化」 有料席の8割がコロナ前から値上がり

  2. 観覧客の3割で「ゆっくり見たい」ニーズも 花火大会の有料化や値上げは今後も続く

[注1] 全国の花火大会のうち、動員客数が10万人以上(平年)の106大会が対象。有料席の範囲は、「個人席」「グループ席」が対象

[注2] 駐車場料金等の付帯料金は計算対象外とした

※調査期間:2023年7~9月に開催される花火大会

※調査機関:株式会社帝国データバンク

主要花火大会の7割が「有料化」 有料席の8割がコロナ前から値上がり

コロナ禍を経て、4年ぶりに通常開催が復活する夏の花火大会で「有料化」が進んでいる。国内で7~9月に開催される主要な106花火大会のうち、約7割にあたる77大会で観覧エリアに「有料席」を導入していることが分かった。コロナ前(2019年当時)は導入していなかったものの、23年開催までに有料席を導入した花火大会も5大会判明した。有料席を導入した花火大会の中には全席指定の有料化に踏み切ったケースもあり、花火大会の有料化が全国に広がっている。

また、2019年から有料席を導入している72大会のうち85%・61大会で、23年の花火大会における有料席の「値上げ」が判明した。価格改定前後の有料席料金をみると、複数種類が用意された観覧席のうち、1区画(席)あたりの「最安値」平均は23年で4768円となり、19年の平均価格に比べて約3割・1092円上昇した。一方、最も高額な有料席の価格(最高値)平均では3万2791円と3万円を突破し、19年の2万1609円から約5割・1万1182円上昇した。コロナ前に比べ、各花火大会で最前席や区画当たりの面積を広く確保したテーブル席、グランピングシート席など、多様な種類の観覧席が導入され、プレミアム化・高価格化が進んでいる。なお、有料席の設定がある77大会のうち、最も高額な有料席は「小田原酒匂川花火大会」(神奈川県8月5日開催)で販売された「Sタイプ/ベット席」の30万円(大人2名)だった。

花火大会で有料席の導入や値上げが続く背景として、打ち上げ花火の多くを占める輸入花火や運営コストの増加がある。2023年(~6月)の打ち上げ花火輸入価格は、過去15年の平均価格より5割高い1700円/kgだった。ロシアウクライナ侵攻の影響を受け、原料となる火薬類が大幅に値上がりした22年(2200円/kg)に比べると価格は低下したものの、依然として高止まりが続いている。観覧客の安全確保や違法駐車の監視など、安全対策に不可欠な警備費や、大会後の清掃、仮設トイレといった設備費など、円滑な運営に必要なコストも人手不足や物価高で増加している。こうしたコストアップが各花火大会の運営費を圧迫していることも、新たな収益源としての「有料席」導入や価格の引き上げにつながる要因となっている。

観覧客の3割で「ゆっくり見たい」ニーズも 花火大会の有料化や値上げは今後も続く

値上げの動きが「モノ」から「サービス」へと波及するなか、テーマパークやイベントなどコト消費にも「一部有料化」や「高額化」の動きが急速に広がり、夏祭りでは富裕層をターゲットに最高100万円のVIPシートが導入されるなどプレミアム化も進んでいる。無料イベントの有料化は、収益確保以外にも観覧者の位置や人数を事前に把握しやすいことから警備面でも有効といった側面があり、花火大会でも有料席の導入や拡充が相次ぐ要因となっている。

ただ、こうした有料化はコロナ前から肯定的な見方も少なくなかった。大手旅行会社のJTB(東京・品川)が2018年、全国2016人を対象に行ったアンケート調査では、花火大会の有料席を「購入したことがある」と回答した割合は15%だった。ただ、「購入したことはないが、検討したい」割合は21%を占め、全体で3割超の利用者に有料席のニーズがあった。規模が大きい花火大会では雑踏や人混みから離れて「ゆっくり見たい」という観覧客がコロナ禍を経てさらに増えているとみられ、花火大会の「有料席」導入や値上げの動きはさらに広がると予想される。

配信元企業:株式会社帝国データバンク

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