追越車線を走っていたはずが、車線移動をしていないのに、気づくと走行車線を走っている――そんな車線運用が外環道で見られます。これで渋滞を減少させました。

追越車線を走り続けるのはダメ! 言っても聞かない? ならば…

右側の追越車線を走っていて、車線移動をしていないのに、いつの間にか左側の走行車線を走っていた――外環道の一部区間で、そんな不思議な“現象”が見られます。もちろんこれは、人為的な車線運用によるものです。一体どういうことなのでしょうか。

この現象が起こるのは、内回りの和光北ICから和光ICにかけてです。

内回りは和光北ICの入口が合流した後で2車線から3車線になります。しかしこのとき、車線が増えるのは「右側」、つまり追越車線が新たに現れます。

3車線となった後、和光IC出口を過ぎると、今度は左側の第一走行車線が減少して2車線になります。こうして、3車線区間の手前から追越車線を走っていた人は、車線移動をしない限り、2車線区間で左側車線を走っている――ということになるのです。

この車線運用になったのは2020年7月のこと。それまでは、和光北IC入口付近で2車線から3車線になり、和光IC通過後、右側の追越車線が減少する形で2車線に戻っていました。3車線区間は各車線が直線的に続くシンプルな構造でした。

これを変更し、和光北IC入口から左1車線が増えて3車線になるのではなく、いったん2車線をぐにゃりと曲げて、追越車線が増える形に変更したのがポイントでしょう。その後で2車線へ減少する際に、追越車線側から走行車線側へ移動することなく、そのまま走り続けられる構造にしました。

一見わざと複雑にしたようにも思える車線運用の狙いは、渋滞対策にありました。

変更前は、和光北IC手前の2車線区間から、追越車線側へクルマが集中する傾向があったといいます。その先、3車線から2車線になる箇所で追越車線側が減少したため、そこで車線変更するクルマが詰まっていました。

ならば、追越車線側がそのまま走行車線になるようにして、新たに増えた追越車線は“どうせ早く走りたい人はそちらへ移るのだから……”と、ドライバー心理の裏をかいたような線形にすることで交通の流れを整えた、といえるのではないでしょうか。

この車線運用の変更とともに、大泉JCTの案内標識も変更し、「関越道方面には走行車線と追越車線のどちらからでも向かうことができる」ことを直感的にわかるようにしたといいます。これら対策の前後で、大泉JCT付近の交通集中渋滞は、32回から7回に減少(2か月あたり)したのだそうです。

外環道内回り、大泉JCT手前。案内標識は「どちらの車線も関越道へ行ける」ことを明示している(乗りものニュース編集部撮影)。