異種格闘技戦を幾度となく繰り広げ、ボクシング界で異彩を放つジェイク(左)。その異質さは、井上(左)らと比較しても一線を画す。(C)Getty Iamges

 話題性に富んだ“異種格闘技戦”のゴングが鳴る。現地8月5日に米国テキサス州のアメリカンエアラインズ・センターで行われる元UFC(米総合格闘技団体)ファイターのネイト・ディアス(米国)と、世界的人気を誇るYouTuberのジェイク・ポール(米国)によるボクシングマッチだ。

 タイロンウッドリー(米国)やアンデウソン・シウバ(ブラジル)といった格闘技界の名手たちと過去7試合をこなして6勝1敗(4KO)と堂々の成績を残してきたジェイク。今後の相手はUFCで34戦(21勝)のキャリアを誇る“悪童”ディアス。プロボクシングマッチは初とはいえ、格闘技界で確かな実績を残しているだけに、多くの人々が熱視線を送っている。

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 いわば、YouTuber対悪童だ。タイトルマッチなどではないが、ボクシング界において異色と言うべきマッチメイクには、海外メディアも興味津々である。

 インドを拠点に世界中に発信しているライフスタイル誌『Man’s World』は今回の一戦について「時代はTikToker、YouTuber、ゲーマーのものになりつつある。このインフルエンサーには技術的なスキルもありませんが、華やかさと雰囲気がある」と指摘。そのうえで、ボクシング界で異彩を放つ井上尚弥(大橋)を引き合いに出し、世間を賑わせるジェイクの業績を称えた。

「ナオヤ・イノウエフェノメノ(怪物)だ。ボクシング界に旋風を巻き起こし、迫る相手すべてを蹴散らしてきた。そして、クロフォードがスペンスを相手に見せつけたのは完全な破壊だった。しかし、市場は利益の最大化を求めている。いわゆるセレブボクシングが本格的な試合を乗っ取りつつある理由の一つはそこにある」

 さらに「この深刻な経済状況下において群衆を引き寄せているのは、クロフォードイノウエ、スペンス、フルトンではなく、インフルエンサーだ」と断言した『Man’s World』は、「ジェイク・ポールのようにSNSやYouTubeで100万人以上のフォロワーを持つ選手が何人いるだろうか?」と指摘。ネット上でのカルト的な人気がもたらす絶大なる影響力を強調した。

「自分たちの金銭目的のためにボクシングを利用し、その過程でスポーツの正当性を傷つけるとも言われる“ペテン師”には、有機的なものは何もない。しかし、ジェイク・ポールがネイト・ディアズと対戦するとき、スタジアムには何千人もの人が押し寄せ、何百万人以上の人々が動画配信で試合を視聴すると予想される。

 彼らが取り込んでいるのは、熱心なボクシング・ファンではなく、センセーションを巻き起こしたYouTuberと、UFCで頭角を現した悪名高き総合格闘家のファンなのだ。その誇大広告は計り知れない」

 無論、ジェイクの試合に競技性はない。言ってしまえば、なんの意味もない一戦ではある。それでも米ストリーミング配信サービス『DAZN』での中継などで莫大な利益は生み出す。その異質なエンターテイメントがいかなる決着を見るかは興味深いところだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

“最強YouTuber”による異種格闘技戦の意味 海外で語られた井上尚弥らとの違い「群衆を引き寄せるのはインフルエンサーだ」