Twitter・Instagram・YouTubeなどのSNSは、実は税務署に見られています。SNSで高級マンション・車・ブランド品などの派手な暮らしぶりを投稿していると、税務調査の対象となる可能性も……。本記事では、富裕層・IPO税務を専門とする黒田悠介税理士税理士法人Bridge 代表)が、数々の経験に基づき、税務調査の標的となったインフルエンサーの事例とともに税務調査の実態について解説します。

税務調査でSNSは確実にみられている…

中高生のなりたい職業ランキングで上位となったインフルエンサー。SNSでファンを獲得するために、憧れの生活風景をアップしている方はとても多いです。ところが近年、税務調査を行うかどうかの「準備調査」の段階で、税務署は「SNSチェック」を行っているといいます。SNSにアップされている内容から、「財産的価値・それに見合った申告がされているのか?」と、投稿者のさまざまな情報を探っているのです。

税務調査の標的となった「インフルエンサー」

昨年、数十万人規模のフォロワーを持つ「美容系インフルエンサー」の女性9人に対し、東京国税局が税務調査を行いました。インフルエンサー達は、報酬をもらって企業の商材やサービスを宣伝する、いわゆる「企業案件」を主に扱っていました。

人気のインフルエンサーともなれば、1つの投稿で数十万円の収入にもなる企業案件もあります。それが年間にもなれば、数千万~数億円といった多額の報酬を得ることもあり得るでしょう。税務署は、「インフルエンサー達が企業から受けとる報酬を正しく申告していないのでは?」との疑念を持ち、調査に入りました。

税務調査の結果、無申告や所得隠しが判明…

今回の9名に関しては、報酬の一部を申告しておらず、また年によっては確定申告自体をしていなかったことが税務調査により発覚しました。なかには海外法人に所得を飛ばしていたケースもあったようです。

税務調査の結果、2021年までの6年間で計約3億円の申告漏れを指摘されることとなりました。インフルエンサー達は、所得税・加算税で計約8,500万円の追徴課税を受けることになりました。

こうした企業案件やYouTube等での収入について、税務署は企業側・動画配信会社から簡単に情報を得られます。ですので、人気インフルエンサーの無申告・所得隠しは、脱税にしてもあまりにオソマツにも思えます。

数年前には「青汁王子」が逮捕される事件も

数年前に、架空の広告宣伝費を計上して所得を隠し、法人税消費税の脱税で通称「青汁王子」が逮捕された件もありました。

「4頭の愛馬を落札、金額は4頭合計で2億2,400万円」

彼のSNSには、2億の競走馬に豪華マンション、高級外車、高級腕時計など、贅沢な生活ぶりがあふれていました。こうしたSNSへの投稿を皮切りに税務調査が行われ、脱税が発覚した事案です。

SNSでの発言や生活ぶりは、税務署にチェックされている

会社経営者やキャバ嬢のなかには、インフルエンサーと同じように、高級マンション・車・ブランド品をアップしている人も少なくないです。

実は、「脱税・申告漏れ」でSNSをマークされているのは、青汁王子のような有名人だけではありません。国税局と経営者が退職金の経費計上について争った件がありますが、その際に税務署が提出したのはなんと「SNSを記録した画像」でした。

SNS上で贅沢な生活が見られるのにもかかわらず申告額が少ない人がいれば、税務署としては疑いの目を向けます。税務署は納税額とSNSにアップされている豪華な暮らしぶりの様子を比較し、脱税・申告漏れをしていないかどうかをチェックしています。

パパ活女子やネット配信者もマークの対象に

それ以外にも、SNSを通じて調査に発展するケースはあります。いわゆる「パパ活・ギャラ飲み」で高収入を得ている女性たちや、インターネットのライブ配信などの 「投げ銭」で収益をあげている配信者たちも、税務署はマークしています。

特に、年20万以上の副業は申告対象なので要注意です。しっかりと確定申告をする必要があります。もちろん、収入を得るためにかかった必要な経費は、税金計算上で控除することができます。所得を「隠す」のではなく、しっかり収入・支出を記録し、脱税ではなく「節税」をすることが重要です。

今後も増加が予想されるインフルエンサー関連の事案

報道機関等に情報をリークするのは、税務当局の「その申告漏れに関して税務署は問題視している」という警告です。これからもインフルエンサー関連の事案が増加していくことは間違いないでしょう。脱税をすると、税金面のペナルティだけでなく、ファンも離れていってしまうことでしょう。

無申告・所得漏れについては、税務調査前に自ら、「間違えていました」、「忘れていました」と修正を行うことで罰則が緩和されます。ドキッとした方は、税理士などの専門家に相談し、対策を考えるのもおすすめです。

黒田 悠介

税理士法人Bridge 

代表 税理士・政治資金監査人

(※写真はイメージです/PIXTA)