松本潤が主演を務める大河ドラマ「どうする家康」(毎週日曜夜8:00-8:45NHK総合ほか)の第30回「新たなる覇者」が8月6日に放送された。古沢良太が脚本を務める同ドラマは、誰もが知る徳川家康の人生を新たな視点で描く、一人の弱き少年が、乱世を終わらせた奇跡と希望の物語。WEBザテレビジョンでは、同ドラマで織田信長の妹・お市を演じた北川景子にインタビュー。今作の大河ドラマに出演した感想や、お市という役を演じた思い、松本演じる家康、岡田准一演じる織田信長の魅力などを語ってもらった。

【写真】子どもたちを抱きしめるお市(北川景子)の切ない母親ショット

■一人の女性の人生を演じ切ることができてホッとしています

――大河ドラマ「どうする家康」に出演された感想をお聞かせください。

大河ドラマには、「西郷どん」(2018年)で初めて出演させていただき、その時に(大河ドラマは)全国津々浦々な人が見ていて影響力のある作品だと実感しました。その上で、今回(大河ドラマ「どうする家康」)のお話を頂き、お市は人気のあるキャラクターでもあるのでプレッシャーも感じていました。(撮影が)始まる前は不安や心配も大きかったですが、皆さんと撮影をしていくととても楽しくて、放送が始まるといろいろな方から反響もいただいて励みになりました。あとは、私自身が「時代劇を絶滅させたくない」と思っているので、そういう意味で時代ものの作品に関わることができてうれしかったです。

――お市という役をどのように捉えて演じましたか?

お市は登場シーンは決して多くありませんでしたが、自分の中ですごく印象深い、思い入れの強い役になったと感じています。今回「どうする家康」という作品の中で描かれるお市は、強くて誇り高くて、兄・信長に対する敬意や畏怖を抱いている。「もし自分が男であれば兄のように戦に出たい」と思っているような勇ましさもありながら、一方で、女性として生まれてきたことをちゃんと理解していて、自分が織田家のためにできることは何なのか、自分に与えられた役割とは何か、ということを常に考えながら生きてきた人だと捉えて演じました。

また、子どもの前では普通の母親であるというところが、親しみのあるキャラクターとして見ていただけていたのではないかと思っています。3人の娘の前では普通の母親だったので、お市にも日常の幸せがわずかな時間でもあったのではないかと想像しました。一人の女性の人生を演じ切ることができてホッとしています。

■(岡田准一さんは)役作りを深くされる方だなと印象を受けました

――松本潤さん演じる家康と岡田准一さん演じる信長、それぞれのキャラクターの魅力を

お聞かせください。

松本さんが演じる家康は、共感してもらえるようなキャラクターになっているところが一番の魅力だと思います。天下を取った人であることは歴史上誰もが知っていることだと思いますが、家臣の前で見せる人間らしさや弱い部分は、松本さんも特に意識して表現されていたのかなと。そのおかげで応援したくなるような、共感できるようなキャラクターになったと感じました。

岡田さんに関しては、私の演じるお市が信長の妹ということもあり、常に頭の中に信長という存在を想像しながら演じていました。初めてお会いした時に、台本で読む信長よりも威厳や威圧感のあるキャラクターに作り上げてらっしゃって驚きました。こういう兄を持つならお市ももっと強そうにしないといけないと思って、想定していたよりもお芝居を男勝りな感じにしました。私が薙刀をするシーンでは、構え方や立ち回りなども教えてくださって、それが全て腑に落ちるアドバイスでした。アクションもお芝居も極めていて、役作りを深くされる方だなと印象を受けました。

■自分の家の存続がとにもかくにも大事だという思いを持っている

――第19回の秀吉にビンタするシーンのように秀吉に対して嫌悪感を持っているお市ですが、秀吉とのシーンで意識したことはありますか?

お市は「サル」と言いながら今までの関係性のまま秀吉をビンタするけど、(秀吉の立場も変化し)娘を連れていかれることに対しては逆らえない、従うしかないという悔しさを感じていたと思います。毅然とした態度でいたいという気持ちや先々の不安、もっと自分がうまく立ち回ることはできなかったのだろうかという思いを短いシーンの中で全て表現しないといけなかったので難しかったです。

■――お市にとって戦国時代とはどのようなものだったと思いますか?

私は、お市を演じる上で“家系の存続”への思いを大事にしていました。兄は織田家をもっと大きくするために戦っていましたし、お市も実際に戦に出ることはできませんが、織田家の血を少しでも後世に残していくことを考えていたのだろうと。婚姻も他の家との結びつきを強めることが織田家を大きくすることだと考えていたと感じます。戦国時代に生きる人たちは、自分の家の存続がとにもかくにも大事だという思いを持っていたのだと思います。

■(お市を)演じていて勇気をもらうことが多かった

――賤ヶ岳の戦いで、家康の援軍が来なかったことに対するお市の思いを教えてください。

戦国時代を生きてさまざまな経験をしてきたお市は、(家康が)助けたいと思っていても身動きが取れないなど、いろいろな事情があると分かっていたと思います。なので、本当に助けに来るとは思っていなかったのではないかなと。来てくれたらうれしいけど、来てくれなかった時のために自分がどういう選択をしようか、というのを同時進行で考えていたと思います。

――お市から影響や刺激を受けた部分はありますか?

娘3人を立派に育てながら自分の仕事もして、家のことも考えて、本当にすごいなと思いましたし、演じていて勇気をもらうことが多かったです。お市は、戦国時代の中では“今っぽい”キャラクターだなと感じました。自分の考えや自分の世界観をしっかり持っていて、自分の意志で動いているところなどに、現代を生きる視聴者の皆さんにも共感してもらえるポイントがあったのではないかと感じました。

――お市から見た家康と信長の関係を教えてください。

第28回の堺で家康シーンに会うシーンは、家康の心が信長から離れていっている中で、お市が家康にひと言言いに来たのではないかと捉えて演じました。家康と信長がすれ違っていることを気にしていて、兄ではなく家康をいさめたいという気持ちがあったのではないかと。お市は、信長のことを恨んでいるとは言いつつも心底恨んでいる訳ではないと思います。唯一の肉親でもあるので、家康にも「兄のこと討たないでね」「兄にとって親友は家康だけだから頼むよ」という気持ちで会いに行ったのかなと思います。

お市を演じた北川景子/(C)NHK