光宙(ぴかちゅう)、天使(えんじぇる)——。そんなキラキラネームを目にする機会が減るかも知れない。6月2日、参院本会議で改正戸籍法が成立した。2024年度以降、戸籍に読み仮名の記載が必須となり、漢字本来の読み方と違う、いわゆる「キラキラネーム」に一定の制限がかかる見通しだ。

基準の詳細は今後明らかになるが、法務省は例として、以下のようなケースが認められないとしている。

(1)漢字とは意味が反対 「高(ヒクシ)」
(2)読み違いかどうか判然としない 「太郎(ジロウ)」
(3)漢字の意味や読み方からは連想できない 「太郎(マイケル)」

この改正について弁護士ドットコムはユーザー会員を対象とした意識調査を行い(期間:6月21日〜27日)、全国の1,048名(男性617名、女性417名、性別不明14名)から回答が寄せられた。

その結果、法改正でキラキラネームが制限されることに「賛成」の人が8割を超える一方、キラキラネームが「減る」と考える人は58.0%という結果になった。

●法改正の認知度は3割

この法改正について知っているか(法改正で「キラキラネーム」の制限が強化されることを知っていましたか)を聞いた。

結果は、66.8%が「知らなかった」と回答し、「知っている」と回答した33.2%を大きく上回り、法改正が認知されていない実態が浮き彫りになった。

キラキラネームを制限する法改正に約8割が「賛成」

次に、キラキラネームを制限する法改正への意見(「キラキラネームへの制限が強化されることをどう思いますか」)を聞いた。

結果は「賛成」「どちらかといえば賛成」が82.2%、「どちらともいえない」が11.1%、「反対」「どちらかというと反対」が6.7%となった。

●賛成・反対の理由

キラキラネームを制限する法改正について聞いた自由記述の結果は以下の通り。

どの意見にも共通するのは、非常識な名付けは避けるべきであるということ。一方で、法務省が定める基準が現時点では明確でなく、判断が難しい、法律で制限することに違和感があるという声も聞かれた。

【賛成派の意見】「名前で表現の自由を発揮しないで」「いじめられて、つらい思いをした」

・表現の自由を主張される方がいるが、子どもの名前で表現の自由を発揮しようとしないで欲しい。日本の名前も一つの日本文化と理解し、慣例に沿った形で命名をするべきだと思います

・初見で見当もつかない名前は、医療従事者や役所等の方に不要な手間を与えることが考えられます。ある程度は制限はかけた方が良い

・明らかに合わない読み方のものは、認可する必要はない。それでもつけたいのなら、平仮名カタカナを使えばいい

・自身がキラキラネームに近い名前で、常用外の読み方をするため人生で何度も名前を訂正しなければならず、子どものころは名前をもじったいじめもあり、つらい思いをした。30代となった今、人前で名乗ることが恥ずかしいとも感じます

・価値観が常に変化する世の中において、線引を引くのが難しく、形骸化していくのではないかという懸念がある。また、ネーミングは本来自由であるべきで、制限をかける場合であっても必要最小限であるべきだと思う

【どちらともいえない派の意見】「命名は個人の自由」「トラブルや混乱が予想される」

・目立つためだけのキラキラネームはあんまりよくないと思いますがちゃんと意味があってその名前であればいいと思うし、覚えられやすいというのもあるので一概には言いにくい

・わざわざ法で制限しなくても良いように思う。それよりも、命名の時に両親や親族に、キラキラネームと言われる例を挙げ、その名前を子どもにつけて責任を持てるのかなどを確認する方が良い

・黄熊などはキャラクターを連想してしまうし、太郎はマイケルとはさすがに読めないので、あきらかにそういう名前の規制は良いと思うが、常用漢字を用いて人名として相応しいなら名付けの自由があると思うし、最近の行政は色々な法改正で国民の縛りつけ感が半端ないと思う

・名前は個性を持つ一面もあるので画一的な処理になってはならず、またキラキラネーム世代が親になり時代とともに価値観も変わるかもしれません。明らかに人の名前として不適切なものを制限するということで良い

・読めない名前の読み仮名が無くなるのも歓迎するが、個人の自由という面もあるので、今のまま無規制で良いと思う。カタカナでマッチする旧世代的な仕様を維持しようとする思想が良くない

・「キラキラネーム」というのは総称であり、線引きが人によって異なるため、(主に父母からの)トラブルや混乱が予想される

・命名は本当に個人の自由だからどのようにつけてもいいと思う。現行のままにしておき、いわゆるキラキラネームと思われる名前を子どもが物事の分別がついてから改名できるハードルを下げるほうがいい

【反対派の意見】「時代で感性が変わる」「国が口を出すものでは無い」

・名前は記号であり、その読みも記号だと考えます。グローバル化の中で漢字の「表意」性は相対的に意味が薄れていると思います。自己責任で良いと思います。

・国民の自由を国家が制約するものであるため、立法してまで強制力を持たせるのは行き過ぎだと思う。ただ、名付けられる子の立場からすれば、過度な「キラキラネーム」は子の利益に反するので、多少の制約はやむを得ないようにも思う

・時代で感性が変わるので今は悪く思えても将来わからないため。それよりも後々、自分で名前を変えやすいようにすべき

・何が良くて何がダメかは、国が口を出すものでは無いと思います

・必ずしもとは言わないが、親が子どもに対して、愛情をもってつけるのが名前なので、規制は当てはまらない

●法改正でキラキラネームが「減る」は、6割

法改正でキラキラネームは減ると思うか(制限にかからないものも含めて、新生児の命名で「キラキラネーム」は減ると思いますか)を聞いた。

結果は、「減る」「やや減る」の合計が58.0%、「どちらともいえない」が27.5%、「あまり減らない」「減らない」の合計が14.6% となった。

●自身の名前がキラキラネームは、わずか1.8%

自身の名前はキラキラネームか(自身の名前は「キラキラネーム」だと思いますか)を聞いた。

結果は、「思わない」が98.2%、「思う」が1.8%となった。

●「時代にあった名前はなんだろう」「ひらがなで名付ける文化が定着すればいい」

キラキラネームに対するエピソードや寄せられた意見は以下の通り。

・自身の子どもに名前をつける際、キラキラネームと呼ばれないけれど、今の時代にあった名前はなんだろうと悩みました

キラキラネームではないですが、少し珍しい名前を付けられた友達は「一発で名前を覚えてもらえる」とポジティブな感想を持つ一方で、「名前を言うと、微妙な空気になる時もある」というネガティブな感想も持っていました

フランス語の名前を漢字にしている。留学するならいいと思うが日本では不自然な感じがする。

・読めない漢字の名前を間違えられて呼称された際にその親が烈火の如く怒っており、横で聞きながら、そりゃ仕方ないよね、と思いながら聞いていました

・漢字で名付けるのが当たり前になっているが、ひらがなで名付ける文化が定着すればいいと思う。月と書いてライトと読むのは大変だが、らいと とひらがなで名付ければ読む側も読まれる側も負担にはならない

・規制を提案している人の平均年齢は、キラキラネームをつけたい人たちの平均年齢より上だろう。自分達のジェネレーションの価値観を新しいジェネレーションの人達に押し付けたり、規制してはならない

・本来であれば法規制ではなく、親の良心に委ねるべき問題

戸籍法改正で「キラキラネーム」規制強化、8割が賛成 当事者「いじめられ、つらい思いした」