映画「ファインディング・ニモ」が8月5日にフジテレビの土曜プレミアム枠で放送された。2003年に劇場公開された本作は、第76回アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞。ピクサーにとって初の快挙で、日本でも大ヒットを記録した。今回の放送中にも「何度も観たくなる」「大人になって観るとまた違う面白さ」「泣いた」などの反響が寄せられた本作の魅力に改めて迫る。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】“圧巻の映像美”で描かれた海の美しさに息を呑む…!

■「ファインディング・ニモ」とは

“おもちゃの世界”の「トイ・ストーリー」に始まり、8月4日より日本公開された最新作「マイ・エレメント」は“火・水・土・風のエレメント(要素)の世界”と、“もしもの世界”を舞台に数々の作品を送り出してきたディズニーピクサー

人間ではないモノたちが人間のように暮らし、話し、行動する“もしも”の世界は、友情や生きることといった、人間にとって大切なことを映し出す。それが感動や共感を呼び、いずれも長く愛される作品となっている。

1996年の「トイ・ストーリー」から5作目となった「ファインディング・ニモ」で描かれるのは、海の世界。ある日、好奇心いっぱいのカクレクマノミの子ども・ニモが人間に連れ去られてしまう。ニモを救うため、心配性な父・マーリンは、唯一の手掛かりを持つ優しいけれど物忘れのひどいナンヨウハギのドリーと共に大海原に出るというストーリーだ。

アカデミー賞以外に、国際アニメ映画協会が主催する歴史あるアニー賞では、12部門でノミネートされ、作品賞や監督賞など9冠に輝くという評価も得ている。

■圧倒的な映像美の中で物語が展開

まず触れておきたいのが映像美。始まりから、海の中に光が差し込む様子が本当に美しく、グッと心を引き付けられ、物語の世界へと没入させてくれるのだ。

舞台となっている海は、オーストラリアのグレート・バリア・リーフ。世界最大規模のサンゴ礁地帯で、ニモたちが暮らすイソギンチャクや多様な魚が生息している場所として知られる。

実写にも劣らない、というと少々言い過ぎかもしれない。けれども、冒頭シーンのほかにも、色とりどりのサンゴや魚たちの生き生きとした様は見ていて楽しくなるし、海といっても暗い深海から、海面に映る太陽と月、海流など、さまざまな表情を見ることができる。

ピクサー製作陣のCG技術力に感嘆するばかりだ。

■個性豊かなキャラクターが勢ぞろい

卓越したCG技術で描き出した美しい海の中。ロードムービー仕立てのマーリンとドリーの大冒険には、海あるいはその周辺に棲むものたちがユーモアたっぷりに登場する。例えば、魚を捕食する怖い存在のサメのブルースが、悪いイメージを変えようと「魚は友だち、エサじゃない」と誓いを立てているのにクスっとする。とはいえ、血のにおいを嗅ぐと凶暴化してしまうという生態系はきちんと見せる。独特のせりふ回しで大人気キャラとなったウミガメクラッシュのほか、チョウチンアンコウクジラペリカンなど、次々に出会いが訪れて飽きない。

一方、さらわれてしまったニモも、水槽の中で絆を深める。ニモに“シャークベイト(サメのエサ)”というあだ名を付けたリーダー格のツノダシ・ギルや、水槽の底にある宝箱から出る泡に夢中なキイロハギバブルスなど、各々の個性が際立っている。

■人間ドラマ的な教訓がいっぱい

キャラクターのかわいらしさや冒険のワクワク、ドキドキする感じに子どもたちが喜ぶ。同時に、大人ものめり込むのは、ディズニーピクサーのストーリーテリングのうまさにある。

マーリンとドリーの大冒険に、脱出を図るニモの奮闘も挟み込み、笑いあり、恐怖ありの筋運び。その中に人間にとって大切なことをキャラクターたちのせて描き、自然に感情移入することができる。

個性際立つキャラクターという肉付けは、伏線にもなり、クライマックスへと盛り上げる。主たるのが心配性のマーリンだ。妻のコーラルと400個以上の卵をどう猛な魚・バラクーダに襲われ、たった1匹残った卵=ニモを大切に育てたマーリン。ニモは左のヒレが小さいという生まれながらのハンデで長距離の泳ぎも苦手。そんなニモを過保護すぎるほどに見守るマーリンは、自身もサンゴ礁から出たことないのだが、ニモのために意を決し大海原に出る。息子への大きな愛にほかならない。そして大冒険での多くの出会いがマーリンを強くしていく。

ニモを心配し過ぎるマーリンに、ドリーは「子どもに何も起きないようにしたら子どもは何もできないわ」と言う。クラッシュが「自分でなんとかするさ」と甘やかすことなく、でも温かい目で子育てをしていることに驚くマーリン。片やニモは、水槽に到着早々ピンチになったとき、ギルから「やるだけやってみろ」と促され、それはその後の力になる。

そんな言葉や姿は、多くの視聴者の心を捉える。それらは大人になるほどに、より深くうなずけるように。劇場公開から20年、大人になった視聴者に改めて感動をもたらすという、視点が変わっても感情を揺さぶられる物語の大きな力があるのだ。

今回の放送では、SNSに「何回見ても驚くほど面白い」「大人になってから観ると違った視点で面白かった」「大人になると分かることがある」「クラッシュの子育て論いいよなぁ」「ギル推し」「ニモを見て涙腺崩壊」「泣いた」といった声が寄せられた。

ファインディング・ニモ」はディズニープラスで配信中。

◆文=ザテレビジョンシネマ

名作「ファインディング・ニモ」に感動の声続出!/(C)2023 Disney/Pixar