マスク着用を巡るトラブルでピーチ・アビエーション機の客室乗務員にけがを負わせ、同機を新潟空港に臨時着陸させて運航を妨げたとして、元大学非常勤職員の奥野淳也被告人が威力業務妨害などの罪に問われた事件。8月7日、大阪高裁(坪井祐子裁判長)で控訴審の初公判が開かれ、被告人側は改めて無罪を主張した。

2022年12月大阪地裁は被告人に懲役2年、執行猶予4年の判決を下し、弁護側は判決を不服として控訴していた。(裁判ライター/普通)

●被告人「日本の刑事司法は狂っている」

この日、裁判の冒頭で、被告人は自身の職業を「同調圧力に屈しない」「執筆、講演を行う者」などと答え、裁判長から「一言で言うと?」と問われると、答えを拒んだ。

また、弁護側の控訴趣意書に基づき、改めて無罪を主張。弁論の補充として被告人も意見を述べた。広くない機内座席において、一審で認定されたような暴行行為がどのようにして行われたのか。「マスクをしない客を降ろしたいというのが真相」などと主張した。

最後に、一審で証人がマスクをしており、表情を読み取れない中、証言を行ったことに触れた。アクリル板で囲んでいる中、マスク着用の合理性はない中での進行に「裁判所の色メガネであり、誤判と冤罪を生む」と主張した。

期日後、報道陣の取材に対して、一部証拠の請求が却下され、それに対する異議申し立ても棄却されたことに「証拠すら見ないという体たらくな訴訟指揮をしている」「日本の刑事司法は狂っている」と非難した。

また逮捕時と比べて、マスク着用者が減っている現状と感染者数を比較しながら、「変わったのは国民やマスコミの空気」「コロナはウイルスでなく社会の病」などと評した。

●期日前には一波乱も

なお控訴審の期日前から一波乱があった。

奥野被告人のX(旧Twitter)によれば、開廷前撮影について奥野被告人側が「弁護人は映らず被告人が映りたい」と返答したところ、高裁は撮影自体を中止とするとの見解を示した。これに被告人側が「法廷撮影自体を中止するのは、司法への信頼を損ね、国民の知る権利を害します」などと抗議した結果、「裁判所のみ(検察側・弁護側は映らず)」という連絡があったという。

しかしながら、この日は裁判所のみの撮影もなく、法廷で「撮影がなくなった理由を答えてください」と被告人が声をあげたが、他の協議の声に揉み消されたのか、明確な返答はなかった。

次回公判は10月30日で、判決の言い渡しを予定している。

ピーチ機「マスク拒否男性」控訴審はじまる 「日本の刑事司法は狂っている」改めて無罪主張 大阪高裁