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 一般にロボットといえば硬い素材を連想しがちだが、柔らかい素材のソフトロボットは生物のしなやかな動きや形態が再現でき、柔軟性や伸縮性から環境への適応性が高く、人や物にぶつかっても傷つけにくいという強みがある。

 近年ソフトロボットはその特性から災害救助や医療、介護や教育に有用なマシンとして世界中から注目されている。

 そんなロボットを研究するソフトロボティクス分野では、柔らかいパーツのみでできたタコ似のオクトボットイモムシのように這うロボットなどが開発されているが、このたびアメリカの研究チームが、鰭(ひれ)が小さいアザラシのような鰭脚類(ききゃくるい)の動きをヒントに、4本足のソフトロボットを発表した。

 チューブでできたこのロボットは、液体を送り込むことで硬さを変えられる。そのためやっかいな地形での移動も楽にでき捜索活動に役立つと期待されている。

【画像】 モデルはアザラシ!?柔軟なチューブの4本の足で移動するロボット

Watch a weird robot wiggle and flap like a seal moving on land

 こちらはアメリカのシカゴにあるデポール大学RoMEラボのメカトロニクス・エンジニア、ディムトゥ・コディッピリ・アラチゲさん率いるチームが開発したソフトロボットだ。

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 長さ24センチ、直径4センチの柔軟なチューブでできた4本の手(または足)をもつこのロボットは、それぞれの手足に液体を送り込むことで硬さを変えられる。

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 液体は各手足に選択的に充填でき、任意の方向に動かすこともできる。この仕組みにより、さまざまな方向に身をくねらせながら移動する。また速度や方向もこの動作の頻度や振幅を変えることで調整できるという。

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 いかがだろうか?くねりとパタつきで懸命に這い進んでるよ。なお最高速度は毎秒17センチとのこと。

 ある意味けなげというかもどかしい移動スタイルだが、実はこの動きのヒントは四肢が柔らかい鰭(ひれ)になってるアザラシのような鰭脚類の動きなんだそうだ。

車輪や足で進むロボットに困難な環境を想定

 にしてもなぜアザラシ風?タイヤ付けるとかもっとすんなり早く進む方法もありそうだけども。

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 だがアラチゲさんによると、この移動が効率的だという。なぜならチームはこのロボットに一般的な環境ではなく、車輪や歩行するのロボットには難しい地形、例えば砂、泥、雪、岩だらけなど通常では進みにくい環境下の移動を想定しているからだ。

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 この動きはエネルギー効率も良く、従来のロボットに比べ消費電力も低いという。そのため従来のロボットが苦戦するような場所でに救助活動に役立つ可能性があるという。

体が重くて鰭も小さいアザラシなどは、陸に上がると水中のように優雅に移動できません。でもその様子をまねたロボットは、車輪のあるロボットが苦戦するような捜索救助活動で効果を発揮するかもしれません。

アザラシの体重のほとんどは体の後ろに集中してます。ですがこのロボットの体重は均等に分散してますから、前進しながら直立するのは困難です。また逆に後進するときは、ロボットの体の動きで生じるトルクに対してバランスを保つのに役立ちます。

人間が抱える課題に自然界の生き物がヒントをくれた例

 RoME Lab が開発したユニークなアザラシ風ロボットは、人間が抱える課題に自然界の生き物がヒントをくれた例の一つといえそうだ。

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 硬い四肢がない鰭脚類のおかげで、チームのロボットはこれまでのロボットでは乗り越えられない障害を克服できそうだ。

 ついでに人間が取り組むソフトロボットにひらめきをくれた鰭脚類の一種、アザラシたちのキャッキャウフフな姿でも愛でておこうか。

 アメリカのオレゴン動物園で雪にたわむれる3頭のゼニガタアザラシの動きと今回のロボットの動き、どれくらい似てるかな?

Adorable Seals Play In The Snow

References:laughingsquid / newscientistなど /written by D/ edited by parumo

 
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ちょっとかわいいアザラシみたいに動くロボット。車輪が動かない場所での救助活動に