今年結成50周年を迎えたTHE ALFEEが、神奈川県横浜アリーナにて夏のイベントライブ【THE ALFEE 2023 Summer Genesis of New World 風の時代★夏】を7月29日と30日に開催。のべ24,000人のファンを動員した。

 筆者が訪れたのは、2日目となる30日。連日うだるような酷暑が続く中、会場にはリアルタイム世代から、20代と思しきTHE ALFEEビギナーまで幅広い年齢層のファンが駆けつけた。

 ハープシコードをフィーチャーしたバロック調のBGMが流れる中、定刻になると場内のあちこちから自然発生的に拍手が巻き起こる。その音が次第に大きくなり、期待に満ちたオーディエンスの高揚感がいよいよピークに達する頃、突然客電が落ちた。同時に荘厳なシンセサウンドが会場内に響き渡ると、驚くことにアリーナ後方のセカンドステージに桜井賢、坂崎幸之助、そして高見沢俊彦のシルエットが浮かび上がる。大きな翼を持つそのステージがふっと浮かび上がり、オーディエンスの上空をメインステージに向かって移動し始めると、そのアリーナならではの大掛かりなサプライズに大歓声が沸き上がる。

 メインステージへ移った3人はおもむろに楽器をスタンバイ。お馴染みのサポートメンバーである吉田太郎(ドラムス)とただすけ(キーボード)を率いて、まずはライブのタイトルにもなっている「風の時代」からスタート。2022年にリリースされた最新アルバム『天地創造』に収録されたこの楽曲は、物質主義的な「地の時代」から、モノに縛られない、型にはまらないものが重視される「風の時代」へと変化していく世界を歌ったプログレッシヴなナンバーだ。

 続く「勇気凛々」は、3人が31年間にわたって担当した「大阪国際女子マラソンイメージソング全31曲のうちの1曲。思わず駆け出したくなるような、疾走感あふれるシャッフルビートに乗せて<逆風は必ず追い風に変わるはずさ><一度くらい灰になるまで燃え尽きよう><勇気を出せ、諦めるな、時間を追い越せ>と、まるで自分たち自身へのエールでもあるような歌詞を桜井が歌うと、オーディエンスも渾身の拍手と歓声でそれに応える。

 最新のダブルAサイドシングル「Never Say Die」は、ヘヴィかつスピード感あふれるアンサンブルが印象的。伸びやかで透明感のある桜井のボーカルと、よく通る倍音ゆたかな坂崎のボーカル、そして少年のようなハイトーンボイスが特徴の高見沢のボーカルという、三人三様のキャラクターが見事に混じり合ったロックナンバーである。

 「結成50周年の夏です。3人ともやる気ムンムン、桜井の頭皮もムンムン! アリーナの皆さん、そして遠い席のみんな、スタンドのみなさん、初めての方もベテランの方も、思う存分声を出して楽しんでいただきたいと思います」

 ユーモアを交えながらそう坂崎が挨拶し、「STARSHIP -光を求めて-」のあのピアノイントロが流れ出すと会場から歓喜の声が上がる。1984年にリリースされた通算18枚目のシングル(東宝アニメ映画『SF新世紀レンズマン』のテーマソング)で、高見沢によるポップソングの中でも屈指の名曲だ。

 「FOR THE BRAND-NEW DREAM」は映画『タッチ3』の主題歌として書き下ろされた英語詞の曲で、坂崎の野太いシャウトが会場いっぱいに響き渡る。続いて披露されたのは「LONG WAY TO FREEDOM」。シングル『白夜 -byaku-ya-」のB面に収録され、アルバム未収録ながらライブでは頻繁に演奏されている彼らの定番曲である。空飛ぶステージに乗った高見沢が、スタンドマイクを持ったまま華麗なステップを踏み、<どんなに辛い時が来ても、俺の愛で守ってやるぜ!>と声を振り絞りながらシャウトすると、客席からは悲鳴にも似た歓声が響き渡った。

 またライブ中盤では、彼らがTHE ALFEEを結成したばかりの頃、自分たちが憧れていた洋楽をカバーするためブートレッグ海賊盤)を繰り返し聴き、数少ないライブ映像を食い入るように見ながら変則チューニングを会得したエピソードなどを披露。そんな彼らのルーツを感じさせ、CSNY(クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング)あたりをも彷彿とさせる「Just Like America」、最新曲で、ドラマ『グランマの憂鬱』主題歌の「鋼の騎士Q」、そして54枚目のシングル「Innocent Love」のカップリングで、「2006年大阪国際女子マラソンイメージソングにも抜擢されたロックオペラ曲「One」を、アリーナ中央で演奏した。

 「横浜アリーナでは2年前に無観客ライブをやったんですけど、みんながいるのといないのとでは、こんなにも違うのかということを、昨日と今日で思い切り感じています。どうもありがとう」と高見沢が感謝の言葉を述べると、温かい拍手が沸き起こる。「50年前に坂崎に誘われ、このバンドを始めたわけですけど、50年も一緒にやるとは思っていなかったね。人生って不思議。どこでどういう出会いがあるか……それで自分の人生も決まっていくわけだけど、俺が坂崎に出会ったおかげでこんなスタイルになっちゃったわけですよ。あいつと出会ってなかったら、この歳でこんなロン毛になってなかったと思うし」と話し、会場の笑いを誘った。

 「夏のイベントでは珍しく、久々にこの曲をやろうと思います」という高見沢の紹介で、会場からどよめきの声が上がるなか披露したのは「LOVE」。さらに「振動α」「組曲:時の方舟」と畳み掛け、恐竜展『最後の恐竜王国』のテーマソング「君に逢ったのはいつだろう」を披露し本編は終了。

 アンコールでは、恒例のコント「またさきトリオ(横浜編)」で小泉今日子に提供した高見沢の代表曲「The Stardust Memory」や、ビートルズの「Nowhere Man」、デビューシングルのB面曲「危険なリンゴ」、そして西城秀樹の「YOUNG MANY.M.C.A.)」などを歌って会場を沸かせたあと、名曲「星空のディスタンス」「Stand Up Baby -愛こそすべて-」、「SWEAT & TEARS」「恋の炎」など人気曲をたたみかけ、鳴り止まぬアンコールに応えて再び登場し「ラジカル・ティーンエイジャー」をシンガロングして会場を一つにしたあと、「WIND OF TIME」を演奏してこの日のライブを全て終了した。

 スタイルも音楽性も性格も、何もかもがバラバラTHE ALFEE。その「違い」をお互いに認め(ときには面白がり)、それぞれの持ち味でバンドに貢献しながら50年も続けてきた、「多様性」の元祖と言っても過言ではない3人の生き様に改めて圧倒された一夜だった。

Text by 黒田隆憲
Photo by 上飯坂一


◎公演情報
THE ALFEE 2023 Summer Genesis of New World 風の時代★夏】
2023年7月30日(日)
神奈川横浜アリーナ

<ライブレポート>THE ALFEE、50年の生き様を感じた一夜「人生って不思議」