2011年結成の9人組ダンスボーカルグループ「超特急」。音楽活動を中心として活躍する傍ら、俳優業にも熱を入れるメンバーも少なくなく、昨年「みなと商事コインランドリー」で話題を集めた4号車のタクヤこと草川拓弥や、映画「東京喰種」シリーズやドラマ「アンナチュラル」で、主人公に寄り添うキャラクターを演じた2号車のカイこと小笠原海は、一度は顔を目にしたことがある人も多いだろう。

【写真を見る】一進一退しつつも、着実に関係性を深めていく湊とシン(西垣匠)にときめく(「みなと商事コインランドリー2」)

2023年夏から秋にかけては、草川の「みなと商事コインランドリー2」、13号車アロハこと高松アロハの「4月の東京は…」、14号車ハルこと柏木悠の「君には届かない。」と主演ドラマを3本抱えており、いま抑えておいて損はない超特急。「もっと早くチェックすればよかった!」と後悔する方が少しでも減るよう、本稿では彼らの出演作を紹介していく。

■明るさの奥に強い愛情を秘める…小笠原海『東京喰種』、「アンナチュラル

超特急のメンバーには、グループ名にちなみ「号車番号」が割り振られているが、今回はその“号車順”で紹介していく。

2017年から2018年にかけて話題作への出演が続いた小笠原。人を喰う“喰種”と呼ばれる正体不明の怪人と、半喰種となってしまった青年、カネキ(窪田正孝)の熾烈な戦いを描く人気コミックを実写化した『東京喰種 トーキョーグール(17)、『東京喰種 トーキョーグール【S】』(19)では、カネキの親友であるヒデこと永近英良を好演。喰種に心身共に蝕まれつつあるカネキが、人間としての感情を留めるための大きな支えとなる人物であるヒデは、カネキとは真逆の明るく活発で友人も多いキャラクター。大胆な性格ながら、洞察力に優れており、小笠原自身のキャラクターにもマッチしていた。劇中のワンシーンで、心が喰種に偏った際のカネキが血だらけになったヒデの顔を舐める描写がある。ここは窪田のアドリブだったそうで、「終わったらちゃんと顔洗うんだよ!(笑)」と言われたという。互いの信頼関係があってこその、ヒリヒリするようなシーンに仕上がっていた。

続いて、ヒデと同じく好青年を演じた「アンナチュラル」では、石原さとみ演じる三澄ミコトの異母弟、三澄秋彦として窪田と再共演。複雑な境遇を持つミコトに対し並々ならぬ想いを抱く秋彦は、弟でありながら兄のような雰囲気も帯び、真面目さと強い責任感を持ちあわせている。普段は予備校教師として働いており、接しやすい穏やかな性格で生徒から信頼される先生という役どころだが、実生活でも、グループとしても、そして超特急が属するスターダストプロモーションの「EBiDAN」でも頼れる年長者である彼にとって、秋彦もまた適役だったと言えるだろう。

■揺れるまぶたに多くの感情を乗せる…草川拓弥『兄に愛されすぎて困っています』、「みなと商事コインランドリー

もともと俳優業にも注力したいというモチベーションで活動し、現在は様々なドラマに多数出演する草川だが、彼の人気に火をつけたのはやはり「みなと商事コインランドリー」だろう。現在シーズン2が絶賛放送中の本作は、タイトル通り心が洗われるような、透明感ときめき満載の“ゆるキュンBL”だ。草川が演じるのは、ブラック企業退職後、祖父のコインランドリーを継いだアラサー男性、湊晃。現在28歳とは思えぬフレッシュなルックスを持つ草川だが、年上然とした振る舞いを繕う一方、どこか無邪気だったり強がりだったり子どもっぽさも目立つ湊にはハマりにハマっていたと言える。そして、日だまりに照らされるあたたかな描写の多い本作では、彼のガラス玉のように透ける瞳が抜群に映えているのも印象的だ。

そんな草川が、“女性は全員お姫様として扱うホスト系スウィートBOY”という凄まじいキャラクターを演じたのが、土屋太鳳&片寄涼太W主演の『兄に愛されすぎて困ってます』(17)だ。原作は少女漫画雑誌「Sho-Comi」で連載されていた同名コミックで、草川のほか千葉雄大杉野遥亮ら人気キャストが名を連ね、主人公のせとか(土屋)を取り巻く“兄系イケメン”に扮し、せとかに突然の大モテ期を訪れさせた。草川が演じた美丘千秋は、彼がこれまでに演じてきたキャラクターのなかでもかなり個性が強かったが、次々に繰りだされるモテムーブに説得力を持たせるビジュアルで、せとかよりも、画面の向こうのファンたちがノックアウトされていたのではないだろうか。

■普段見られない姿を堪能できる…松尾太陽『一週間フレンズ。』、「花にけだもの

7号車タカシとしてボーカルの一人を担う松尾は、特に2016年から2017年に俳優活動に熱を入れていた。川口春奈山崎賢人のW主演で、一週間で記憶を失くしてしまう少女、藤宮香織(川口)と、彼女に惹かれ交流を重ねていく長谷祐樹(山崎)のせつない恋愛を描いた『一週間フレンズ。(17)では、祐樹の親友、桐生将吾に扮した。桐生は、普段の松尾とはかなり異なるヤンチャな雰囲気のビジュアルかつ、ローテンションだが思ったことをハッキリ言う性格。しかし、祐樹や香織を大切に思い、様々なアドバイスを行ったり、授業中は寝ているにもかかわらず成績が良かったり、思わず桐生にキュンとしてしまった人も少なくないだろう。

桐生と同様、あまりしゃべらずどこかミステリアスな雰囲気を漂わせるキャラクターに扮したのが、連続ドラマ「花にけだもの」。中村ゆりか、杉野遥亮、甲斐翔真、入山杏奈らが名を連ね、女性に積極的なイケメン男子たちが主人公の久実(中村)をめぐり物語を繰り広げる青春恋愛ドラマだ。松尾が演じたのは、和泉千隼という、掴みどころのない無口なクール男子。本作のキャラクターは全員動物に関する名前が付いており、隼=ハヤブサと付く千隼は一見肉食系の印象を受けるのだが、久実に惹かれていながらもそっと彼女の恋愛模様を見守るという、肉食とは真逆と言っていい行動を見せる。これには観ているこちらがときめかざるを得ない。桐生も千隼も、松尾とはイメージの違うキャラクターであったが、普段見られない姿を楽しめるのも、やはり俳優業ならではだ。

■明るさと憂いのギャップで魅せる…高松アロハ「4月の東京は…」

昨年の8月より新たに超特急に加わった高松。加入前の1年程度は俳優業に専念していたといい、『HIGH&LOW THE WORST X』(22)や、舞台「スケートリーディング☆スターズ」などに出演、加入後もドラマ「君との朝食は決めている」に小笠原と共に出演するなど、演技にも前向きな姿勢を見せている。

そんな彼は、累計発行部数30万部超えの人気BLコミックを実写化した連続ドラマ「4月の東京は…」で、櫻井佑樹と共にW主演を務めている。高松が演じるのは、ある秘密を抱えるアートディレクターの石原蓮。初恋の相手である滝沢和真(櫻井)と10年ぶりに再会するが、心躍らせる和真をよそにどこか距離を取ろうとする蓮を丁寧に演じている。人から好かれる明るい性格ながら、ふとした瞬間憂いを纏わせる蓮の二面性を、めくるめく変化する表情で体現し、観ているこちらに緊張感を与えてくれる。

■役者陣以外にもスポットが当たる…『サイドライン』、「FAKE MOTION」

ももいろクローバーZの『幕が上がる』(15)、まもなく公開でGENERATIONS出演の『ミンナのウタ』(8月11日公開)など、音楽グループのメンバー全員を主演にした映画が作られることは少なくないが、超特急も2015年に主演映画が作られている。それが『サイドライン』(15)だ。神社のある小さな田舎町に住み、将来について様々な葛藤を抱える7人の幼なじみたちが、ある一人の少女との出会いを通じ自分と向き合っていく姿を描いた青春群像劇で、劇作家や演出家として活動する福山桜子が監督&脚本を務めている。物語は福山による当て書きになっており、演技経験のまだまだ少ないメンバーも多かったなか、本人たちが内に秘める夢への貪欲さが、登場キャラクターたちのジレンマに説得力を与えていたのが印象的だ。

とりわけ、実家の家業を継ぐべきか、夢に進むべきかで苦悩する貴章(ユーキ)が母親に放った「(夢を)諦めろって言うんだったらどうやって諦めるか教えてくれよ!」というセリフは、彼を演じたユーキの普段の雰囲気にも通ずる熱さがあり、あまりにまっすぐな切実さに何度も何度もセリフが脳内をこだまする。

超特急だけでなく、佐野勇斗、北村匠海森崎ウィンと、元メンバーも含めたEBiDANメンバーが総出演という形で制作された連続ドラマ「FAKE MOTION - 卓球の王将 -」もぜひ観てほしい作品だ。卓球の強さがカーストを決める20XX年の東京で、そんな時代を終わらせるべく立ち上がった一人の高校生と、その仲間たちの戦いがアツく描かれている。EBiDAN各グループのメンバーがシャッフルで様々な学校に配置されているが、そのなかで超特急は唯一、全員同じ薩川大学付属渋谷高校という、いわばラスボスである最強校を演じた。

恵比寿長門学園2年の高杉律(佐野)と、同じく2年でエースの桂光太郎(古川毅)の成長譚が物語の軸となっていたが、北村演じる恵比寿長門学園部長の松陰久志(北村)と、渋谷高校部長の島津晃(小笠原)も“もう一組の主人公”だと言ってよいだろう。2人の、切っても切れない歪みすら孕んだ関係性が、卓球がすべてであるこの世界の発端となっている。松陰と島津の関係や、チーム内で数人が持つ特殊能力=ギフテッドの発現のきっかけ、各学校にあるドラマは、想像以上に濃厚なもので、一度観たら心を掴まれ「FAKE MOTION」から逃れられなくなる。

■ますます進化していく超特急に乗り遅れないで!

着実に出演作を重ね、実力を身につけていく超特急の役者陣。まだまだ期待の余地があるし、現時点で俳優活動の少ないメンバーも、もしかしたら思いもよらないような役柄を演じてくれるかもしれない。彼らの本拠地である音楽シーンでも、そして俳優業でも、彼らの唯一無二のきらめきが多くの人たちにも届く日が待ち遠しい。

文/佐藤来海

※高松アロハの「高」は「はしごだか」が、山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

恋愛に臆病なアラサー男性、湊を瑞々しく演じる草川(「みなと商事コインランドリー2」)/[c]缶爪さわ・椿ゆず/KADOKAWA/「みなと商事コインランドリー2」製作委員会