2019年に東京・池袋で起きた交通死傷事故では、高齢ドライバーによる問題が噴出した。特に、よく報じられるのはブレーキアクセルの踏み間違いだ。

2022年の警察庁統計によると、75歳以上の高年齢層で顕著なことが分かる。高齢者が最も過失の重い「第1当事者」になった死亡事故のうち、ブレーキアクセルの踏み間違いは75歳以上では7.7%と、75歳未満の7倍となっている。

弁護士ドットコムニュースには、踏み間違い事故で自宅が損壊したというAさんから情報が寄せられた。現場は神戸市住宅街で、飲食店を訪れた高齢ドライバーが壁を突き破り、住宅に激突したという。当時は不在で、幸いケガ人は出なかったものの、その後のドライバーの対応は誠意あるものとは言えなかったという。

●加害者は今も運転を続けている

事故が起きたのは2023年5月31日午後2時50分ごろ。神戸市内の住宅街で、70代男性が運転する車が飲食店にバックで駐車しようとして、壁を破って住宅に接触した。

この家に住むAさんの家族は誰も在宅していなかった。夕方に帰宅したところ、警察からの置き手紙があり、自宅の外壁と浴室と洗面所が損壊したことがわかった。加害者の連絡先を知るために警察に電話をして聞いたところ、「ブレーキアクセルを踏み間違えたことが原因」ということだった。近くの住民によると、大きな音と地震のような揺れがあったという。

ドライバーの男性に電話をすると、Aさんの携帯電話番号を復唱できないなど要領を得なかった。Aさんは認知機能の低下も疑ったが、詳細はわからないまま。家族がいることはわかっているが、本人からも家族からも今も直接の謝罪がないことに疑問を持っている。

「その男性が今、新しい車で運転を続けていることを知っています。事故を起こすのは誰にでもあり得ることだけど、事故を起こしたら誠意ある対応とはどういうことなのか考えてほしいです」

外壁と浴室などの約100万円に上る修理費用は、男性側の保険から出ることになったものの、保険会社名以外の情報はAさん側にほとんど提供されなかった。そのため、Aさん自身が保険会社に連絡して説明を聞き、工務店手配やその対応などの手続きに追われたという。

●ちゃんと事故に向き合ってほしい

またAさんは、飲食店の対応にも疑問を感じたという。

当時、店にはアルバイトしかおらず、情報を得られなかった。後日、エリアを担当する社員から電話のみで説明を受けた。再発防止を求めたが、実効的・具体的な策はいまだ取られていないという。

「家が壊れたこともショックですが、精神的なダメージが大きいです。また同じことが起きるかも…という恐怖があります。車止めを変えるとか、フェンスを強化するとか、予防的措置を取ってほしいと店には伝えましたが、どこまでその要望が受け入れられるかわかりません。駐車場に接近しているのは、うちだけではなく近所の人も同じリスクにさらされています」

Aさんは被害を広く知ってもらうことで、踏み間違いの危険性を訴えたいと情報を寄せてくれた。高齢の家族を抱える人は、免許の自主返納を考えるきっかけにもなるだろう。

「被害者が黙っていたら、加害者はちゃんと事故に向き合うこともなく、保険で修理できたらそれでいいと軽く考えて被害者の気持ちを想像しようとしない。こうした実態を伝えることで、現状を知ってほしいです」

「誠意って何だろう」高齢ドライバーに激突されて自宅損壊…でも直接の謝罪なし 被害住民が訴える実情