トラヴィス・スコットの新作『ユートピア』が1位に初登場した、今週の米ビルボード・アルバム・チャート。

 本作『ユートピア』は、2018年8月にリリースした前作『アストロワールド』から約5年ぶり、4作目のスタジオ・アルバムで、Billboard 200での首位獲得は、2ndアルバム『 バーズ・イン・ザ・トラップ・シング・マックナイト』(2016年)から3作連続、ジャックボーイズ名義のコンピレーション・アルバム『ジャックボーイズ』(2019年)を含めると4作目のNo.1タイトルを獲得した。

 『ユートピア』は、今週の集計期間(2023年7月28日8月3日)にアルバム・ストリーミングが243,000(全19曲で3億3,068万回)、アルバム・セールスが252,000、トラックによるユニットは1,000をそれぞれ記録して、累計496,000ユニットを獲得した。今週記録したストリーミング数(3億3,068万回)、週間セールス(252,000枚)いずれも、2023年現時点での2番目に高い記録を更新している。

 今週2位に初登場したポスト・マローンの『オースティン』は初動ユニットが113,000で、『ユートピア』はアルバム・ストリーミング、アルバム・セールスいずれのポイントだけでも2倍以上『オースティン』を上回り、1位を獲得していたことになる。

 本作からは、7月21日にリリースしたバッド・バニー、ザ・ウィークエンドとのコラボレーション・シングル「K-POP」が、先週のソング・チャート“Hot 100”(2023年8月5日付)で7位に初登場し、トラヴィス・スコットは通算12曲目のTOP10入りを果たした。なお、アルバムのリリース後に最もストリーミングされた曲は、ドレイクをフィーチャーした「Meltdown」で、今週記録した3億3,068万回のうちの10%近くを占めている。

 上記の他にも、21サヴェージやビヨンセフューチャー、リル・ウージー・ヴァート、プレイボーイ・カルティ、シザ、ヤング・サグなど人気アーティストが多数参加している。

 『ユートピア』は、iTunes Storeアマゾンなど主要のサイト、販売店でリリースされた18曲入りの通常盤、前述の「Meltdown」を収録した19曲入りの拡張版があり、後者はデジタル・ダウンロード、ストリーミングは可能だが、CDやアナログ盤などのフィジカルは、現時点で公式ウェブサイトでのみ購入可能となっている。

 また、公式ウェブサイトでのみ販売されたCD、アナログ盤、デジタル・アルバムには、リル・ウージー・ヴァートとコラボレーションした「Aye」が収録されていて、公式サイト限定のデジタル・アルバムは、集計期間最終日の8月3日に4.99ドルで販売され、異例の売れ行きを見せた。

 公式ウェブサイトで販売されたCD、アナログ盤は、いずれもカバー・アートの異なる5種類のバージョンがあるが、告知された時点では各デザインは表示されず、購入者はどのようなものになるのかわからないまま予約し、発売日の直前にすべてのカバー・アートを公開するという販売戦略を行った。

 その他、CD、もしくはLPのいずれか1枚とブランドのグッズを封入したデラックス・ボックス・セットが15種類、雑誌のようなパッケージに収められているCDのデラックス・エディションが6種類、CD、またはLPいずれか1枚とブランドの商品を割引価格で購入できるファン・パックが2種類あり、予約開始からリリース週までにグッズの新商品を立て続けにリリースしたことでも、アルバムの売上を向上させている。

 そういった戦略で今週記録したアルバム・セールス252,000枚の内訳は、デジタル・ダウンロードが111,000枚(そのうち79%が公式サイト限定のファースト・エディション)、CDが63,000枚(そのうち80%がデラックス・ボックス・セットとファン・パック)で、デラックス・ボックス・セットとファン・パックの売上は、252,000枚のうちの30%を占める75,000枚を記録した。

 また、アナログ盤のみの売上枚数は55,000枚で、ルミネートが集計を始めた1991年以降のLP週間セールスとしては、R&B/ヒップホップ・アルバム、またはラップ・アルバムの週間最高記録を塗り替えている。

 こうして『ユートピア』に大きく差をつけられ2位に初登場したポスト・マローンの『オースティン』だが、本作には『ユートピア』のように人気アーティストは一切参加しておらず、サウンドもオルタナティブ・ロックを中心とした内容となっている。

 『オースティン』は、昨年6月に発表した前作『トゥエルヴ・カラット・トゥースエイク』から約1年でリリースされた通算5枚目のスタジオ・アルバムで、ポスト・マローンはデビュー作から5作連続のTOP5入りを果たしている。

4位『ストーニー』(2016年)
1位『ビアボングス&ベントレーズ』(2018年)
1位『ハリウッズ・ブリーディング』(2019年)
2位『トゥエルヴ・カラット・トゥースエイク』(2022年)
2位『オースティン』(2023年)

 なお、前4作はいずれもR&B/ヒップホップ・アルバム・チャートで1位を獲得した。

 『オースティン』が今週記録した113,000ユニットの内訳は、アルバム・ストリーミングが78,000、アルバム・セールスが34,000、トラックによるユニットは1,000で、週間ストリーミング数は全18曲で1億114万回を記録している。

 本作も、カバー・アートの異なる4種、ボーナス・トラックを収録した1種の計5種類のCD、Target限定を含む3種類のアナログ盤、公式ウェブサイト限定を含むカバー・アートの異なる4種類のデジタル・ダウンロード、2種類のファン・パックがあり、販売促進に繋げた。なお、ボーナス・トラックとして収録された新曲「Joy」は、リリース後に追加されている。

 今週記録したアルバム・セールス78,000枚のうち、アナログ盤による売上は11,500枚で、ポスト・マローン自身の記録としては、LPの週間最大セールスを更新した。

 本作からは、ソング・チャート“Hot 100”でリード・シングルの「Chemical」が4月に13位、「Mourning」が6月に36位、「Overdrive」が7月に47位をそれぞれ記録したが、現時点ではTOP10ヒットは輩出されていない。

 モーガン・ウォレンの『ワン・シング・アット・ア・タイム』は先週に続き3位をキープしたが、週間ユニットは7%減少の96,000に下降し、登場22週目の今週初めて10万ユニットを下回った。本作は、1位に初登場した3月18日付から先週8月5日付まで21週連続で10万ユニットを突破し、ストリーミングが集計に加算されるようになった2014年12月以降では、昨年16週を記録したバッド・バニーの『Un Verano Sin Ti』を上回り、史上最長記録を更新している。

 先週2位に初登場した映画『バービー』のサウンドトラック『バービー・ザ・アルバム』は、初週から28%減少の91,000ユニットに落ち込み、今週4位に順位を下げた。テイラー・スウィフトの『スピーク・ナウ(テイラーズ・ヴァージョン)』も、16%減少の66,000ユニットに下降して4位から5位、先週1位にデビューしたNewJeansの『Get Up』も56%減少の55,000ユニットに落ち込み、今週6位にダウン。ペソ・プルマの『Genesis』(50,000ユニット / 6%減少)も、ユニット数は安定しているが順位は5位から7位に下がった。

 以下、テイラー・スウィフトの『ミッドナイツ』(49,000ユニット / 1%増加)が6位から8位、モーガン・ウォレンの『デンジャラス:ザ・ダブル・アルバム』(49,000ユニット / 5%減少)が7位から9位にそれぞれダウンして、テイラー・スウィフトの『ラヴァー』(43,000ユニット / 2%増加)は先週に続き10位をキープした。

Text: 本家 一成

※関連リンク先の米ビルボード・チャートは8月11日以降掲載予定となります。

◎【Billboard 200】トップ10
1位『ユートピア』トラヴィス・スコット
2位『オースティン』ポスト・マロー
3位『ワン・シング・アット・ア・タイム』モーガン・ウォレン
4位『バービー・ザ・アルバム』サウンドトラック
5位『スピーク・ナウ(テイラーズ・ヴァージョン)』テイラー・スウィフト
6位『Get Up』NewJeans
7位『Genesis』ペソ・プルマ
8位『ミッドナイツテイラー・スウィフト
9位『デンジャラス:ザ・ダブル・アルバム』モーガン・ウォレン
10位『ラヴァー』テイラー・スウィフト

【米ビルボード・アルバム・チャート】トラヴィス・スコット『ユートピア』首位デビュー、ポスト・マローン初登場2位