「ユー・メイ・ドリーム」などの名曲の数々と共に日本のロックシーンに大きな足跡を残したバンド「シーナ&ロケッツ」。そのギタリストとして最期までステージに立ち続け、2023年1月29日にこの世を去った鮎川誠の生涯に迫ったドキュメンタリー映画『シーナ&ロケッツ 鮎川誠 〜ロックと家族の絆〜』(8月11日福岡先行公開、8月25日全国公開)の公開記念イベントが8日に都内で行われ、お笑いコンビ「バイきんぐ」の小峠英二と本作のメガホンをとった寺井到監督が登壇した。

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2023年3月に開催されたTBSドキュメンタリー映画祭で上映された『シーナ&ロケッツ 鮎川誠と家族が見た夢』をもとに、ゆかりの人物へのインタビューやプライベート映像、貴重な音源などを加えて再編集した本作。1978年シーナ&ロケッツを結成し、揺るぎないロック哲学とロック教養を持ったロックギタリストであると同時に、妻と3人の娘たちと過ごす時間をなにより大切にする優しい家庭人であった鮎川。彼の素顔と情熱、そして生涯見続けた夢が、バンドのファンであった俳優の松重豊のナレーションと共に綴られていく。

鮎川と同郷の福岡県出身で、ロック好き芸人としても知られる小峠は、鮎川が亡くなる前に東京で行われたシーナ&ロケッツのライブを生で観たとのことで、その会場で買ったTシャツを着て登壇。「いままで見たことのないような、ものすごくプライベートなところも流れる。皆さんもきっと楽しめるはずです」と、ファンの目線で本作に太鼓判をおす。

福岡時代に「レモンティー」を聴いてシーナ&ロケッツに出会ったという小峠は「“曲がかっこいい”から入り、ライブも何度も観ました。鮎川さんはギターを弾いている時は鬼気迫っているけれど、MCになると温かい人間味が出て、いい人だと思いました。そのギャップがすばらしいです」と回想。そして「家族愛にあふれた方で、それが曲にも投影されている。速くて尖った曲も、伝わり方がマイルドでトゲの先端は実は丸い。それは鮎川さんの温かな人間味があるからでしょう」と、本作を通じてシーナ&ロケッツの魅力を再発見したことを語った。

作中では土屋昌巳や浅井健一、甲本ヒロトら著名人が鮎川について語っており、なかでも小峠は、甲本の「鮎川さんとシーナがいなくなったことはたいしたことじゃない。“いた”ってことがすごいんだ」という言葉に痺れたという。「あれだけかっこいい音源やライブを生んだこと自体がすごいこと。僕もその言葉に納得しました」としみじみする小峠。すると寺井監督は「追悼作品のようになるのは嫌だった。ゆかりのある人たちが語るエピソードを集めれば、鮎川さんの人となりがわかると思いました」と、甲本の言葉から本作の方向性を決めたことを告白した。

そして寺井監督は、「鮎川さんが亡くなったから僕はこの場に立てているということに複雑な思いがあります。シーナさんが亡くなられてもなお鮎川さんがバンドを続けている姿を撮りたくて、カメラで追っていた。その点では素直に喜べません。とはいえ、この作品を通して鮎川さんの素敵さが多くの方に伝わるのはうれしいことです」と複雑な心境と共に、本作に込めた強い思いを明かしていた。

文/久保田 和馬

『シーナ&ロケッツ 鮎川誠〜ロックと家族の絆〜』の完成披露イベントが開催!