新幹線おなじみの風景だった「車内ワゴン販売」が、東海道新幹線で終了となります。惜しむ声が多い中、なぜ終了することになったのでしょうか。JR東海にその背景を聞きました。

なぜ終了となったのか

東海道新幹線ではお馴染みとなった車内ワゴン販売が、10月末を持って終了となります。2023年8月8日に突然の発表となったこのニュースに、ネット上でも惜しむ声が上がっています。

なぜ今回、昔から続けられてきた車内販売をやめることとなったのでしょうか。JR東海にその背景を聞きました。

JR東海広報部は「駅周辺店舗の品揃えの充実、飲食の車内への持ち込みの増加、静粛な車内環境を求めるご意見、また将来にわたる労働力不足への対応等、さまざまな背景を考慮しています」と話します。

さらに、現場の状況がうかがえる背景も話してもらいました。「東海道新幹線は16両あり、車体全長では400mあります。この車内通路をワゴンで往復し、販売業務をおこなうと、かなりの時間や人手がかかり、とても手が回っていないのが現状なのです」(同)。

自由席の通路に多くの立ち客が出る時期などは、「ワゴンがもはや通行出来ない場合もあり、パーサーの判断で営業を中止することもあります」(同)。

車内販売が待てど暮らせどやって来なかった――それは、商品があちこちで売れているため、またはクレーム対応などに追われ、普段より時間がかかって単にその席までまだ到達できていないだけかもしれません。JR東海はすでにこの状況を見越して、あらかじめ駅の放送で「お買い物はなるべく駅でお済ませください」といった案内をしているほどです。

そもそも「パーサー」の仕事は変化している!?

いっぽうで、パーサーが担う役割そのものも、従来から大きく変わっています。2018年に東海道新幹線では乗務員の体制を大きく変更。車掌を3名から2名へ減らし、代わりにパーサーがその業務の一部を兼務することになりました。

具体的には、車内放送や車内巡回といったものから、異常時の脱出用はしご設置や避難誘導といった「保安業務」までを担っています。

現在、パーサーは2~3名体制。これまで、そのうち1名が車内販売の要員に割かれていました。2名体制の乗務だと、パーサーの残り1名と車掌2名で16両分の車掌・保安業務という重要な仕事を賄わなければいけません。この「限界状態」を解決するには、軽食などの提供を「列車外へ転換する」ことが負担削減の最善の策だったのです。

JR東海は今後、パーサーの「2名体制」を基本とし、多客期の臨時運転時を中心とする人手不足を解消する構えです。そのうえで車内業務を4名体制で専任させることで、走行中の安全・安心は確保するとしています。

東海道新幹線のイメージ(画像:写真AC)。