米カリフォルニアのデスバレーでは、摂氏56度という殺人級の熱波を記録。さらに、イタリアスペインメキシコなど世界各地で危険な暑さが続く中、世界気象機関(WMO)は世界における7月の平均気温(1日~23日)が16.95度だったと発表した。これは2019年の16.63度を大きく上回るもので、なんと地球上で12万年ぶりの暑さとなることはほぼ間違いないとされるのだ。

 そんな酷暑のさなかの7月27日ロシアドイツの研究チームにより、シベリア永久凍土で休眠していた線虫が4万6000年ぶりに覚醒したとする論文が、科学雑誌「PLOS Genetics」に掲載された。これが世界の生物学者を激震させているのだ。サイエンスライターが解説する。

「今回発見された線虫は、地下40メートルの永久凍土から見つかったもので、クリプトビオシスと呼ばれる休眠状態に入ることによって、厳しい環境を生き延びていたと推測されます。この状態にある生物は水や酸素の有無に関係なく、高温や凍結状態にも耐えられる。つまりこの間、生物は『死と生の間』のような状態にいるということです」

 発見したロシア土壌科学の研究チームが、うち2匹に水を加えたところ、復活したため、さらに分析を進めるため、ドイツの実験室に約100匹を持参。解凍後、植物性物質の放射性炭素分析の結果、これらの線虫が少なくとも4万5839年前から解凍されていなかったことが確認されたという。

 研究者らはこの新種を「パナグロライムス・コリマエニス」と命名し、休眠状態を生き抜くためにどのようなプロセスが維持されてきたのかを、さらに踏み込んで分析している。そこで懸念されるのが、未知の病原体出現の可能性だ。前出のサイエンスライターは、恐ろしい結末について語る。

「単純に考えて、4万6000年前から凍結状態で生きてきたということになれば、当時の世界に生存した病原体も持っている可能性が高い。つまり、それは現代人が免疫を持っていない種類である可能性が高いということ。だとすれば、太古の病原体が現代に出現した場合、免疫を持っていない我々は未知の病原体に負け、そちらが優占種となるかもしれない。それはすなわち、人類の滅亡に繋がる可能性も否定できないということです」

 地球温暖化に始まる気候変動により、氷河や永久凍土の融解が進み、このままの状況が続けば、大気中には大量の二酸化炭素メタンが放出される。それに加えて、太古の病原体の出現となれば、人類が打つ手はあるのだろうか。

ジョン・ドゥ

アサ芸プラス