東京・京橋のアーティゾン美術館が、館のコレクションと現代美術作家の共演シリーズとして開催している毎年恒例の『ジャムセッション』。画家の山口晃を迎えたその第4弾が、9月9日(土)から11月19日(日)まで開催される。

山口晃(1969-)は、東京芸術大学大学院美術研究科絵画専攻(油画)修士課程を修了。日本の伝統的絵画の様式に立脚しつつ、油絵の技法を用いた独特の作風で知られる。絵画や立体、漫画、インスタレーションなど、多岐にわたる作品を国内外で精力的に発表する一方、2013 年には著作『ヘンな日本美術史』で第12 回小林秀雄賞を受賞するなど、文筆家としても活躍している。美術史にも造詣の深い山口が、西洋の近代絵画と日本の近代洋画の優れたコレクションで知られる館で開かれる同展で問いかけるのは、「近代」とは、「日本的コード」とは、そして「日本の本来性」とは何か、ということだという。

その問いの答えを考えるべく山口が選んだ館蔵品は、日本の室町時代に活躍した水墨画家・雪舟の《四季山水図》と、しばしば「近代絵画の父」とも呼ばれるポスト印象派の画家セザンヌの《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》。同展の大きな見どころは、その雪舟に基づく新作インスタレーションと、セザンヌ理解に向けて山口が行なった「自由研究」の成果の展示となる。

同展ではまた、別のインスタレーション群も出品される。山口の作品を見るときも、また雪舟やセザンヌ、さらには日本の近代絵画を見るときにも、重要な役割を果たすのは鑑賞者それぞれの視覚認知機能だという認識から、その視覚認知機能を改めて意識できるようなインスタレーションが、山口の思考を追体験できるように展開されるのだ。

同展のもうひとつの見どころは、山口が手がけた話題作の原画が初公開されること。2019 年に放映された NHKの大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺〜」のオープニングタイトルバック画となった《東京圖》や、2021 年に完成した東京メトロ日本橋駅のパブリックアート《日本橋南詰盛況乃圖》など、緻密に描き込まれた原画のその精緻さはまさに圧巻である。

ぜひこの機会に訪れて、山口が掲げた問いかけについて、山口とともに考えてみたい。

<開催情報>
ジャムセッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン

会期:2023年9月9日(土)〜11月19日(日)
会場:アーティゾン美術館 6階展示室
休館日:月曜(9 月18 日、10 月9 日は開館)、9 月19 日(火)、10 月10 日(火)
料金:ウェブ予約チケット 1,200 円/窓口販売チケット1,500 円(同時開催展も観覧可)
※学生無料(高校生以上要ウェブ予約)
※予約枠に空きがある場合、窓口販売あり
※『創造の現場 —映画と写真による芸術家の記録』、『石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 読書する女性たち』も同時開催
スペシャルサイト::
https://www.artizon.museum/exhibition_sp/sensation/

山口晃《日本橋南詰盛況乃圖》(部分)2021-2023 年、作家蔵 ©YAMAGUCHI Akira, Courtesy of Mizuma Art Gallery