イギリス在住のある男性は、1970年代から、同じ理髪店に通い、同じ理髪師を指名してきた。そして約10年ごとに、その記録として鏡越しから2人の姿が写る写真を撮影していた。
2人とも同じように年を取り、髪に白髪がまじりはじめ、毛量も減ってきたが、その分信頼関係は深まっていた。カメラも形が変わり、スマホとなった。
そしてついに50年がたった。78歳になった男性は5回目の撮影を終えた。思い出がたくさんつまったこの記念撮影は、今回が最後になるかもしれないという。
British shoppers stay loyal to locals, study finds
イギリスのバースに住む元新聞カメラマンのサム・ファーさん(78歳)が、ジョー・ペイスさんが経営する理髪店「Giuseppe’s Of Bath」に通い始めたのは、今から50年前の1970年代のことだ。
以降、サムさんはジョーさんにずっと髪を切り続けてもらってきた。そして、約10年ごとに鏡越しから2人の姿を撮影してきた。
最初の1973年の自撮りは白黒写真だ。サムさんは当時28歳で2人とも若者だ。
サムさんは、当時大金だった100ポンド(現在の価値では約18000円)ほどのローライフレックスのカメラを買ったばかりだった。
仕事柄、自分以外の人の写真はたくさん撮ってきたが、自撮りをしたことはなかった。そこで、理髪店で散髪してもらっている自分がどのように見えるか、撮影しようと思ったそうだ。
そしてそれは10年ごとの伝統になった。
2回目の自撮りの1985年でサムさんは40歳となった。写真はカラーだ。
2007年、サムさん62歳。
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2015年、サムさん70歳。記念写真のたびにカメラも新しくなっている。
2023年、サムさんは78歳となった。
理髪師と顧客を超えた友情を育んできた2人
2児の父であるサムさんは、今は定年退職者だ。50年間の変化は、髪の色にも表れている。
同じように50年分年を重ねてきたジョーさんとは、長い年月の間にかけがえのない友情を築き上げた。
ジョーさんは、このように話している。
サムとは、顧客と理髪師という垣根を越えて、友達として家に呼び合って家族ぐるみで一緒に食事したり、旅行に出かけたりもしたよ。
サムは、顧客以上に私の素晴らしい生涯の友人なんだ。
しかし、残念なことに、サムさんの記念写真は今回が最後になってしまう可能性があるという。
特別な思いで50年目を迎え散髪してもらったサムさん
サムさんの娘のニッキー・ヒグビーさん(48)によると、サムさんはパーキンソン病を患い、ほかの病気も抱えていることから、カメラを持つことも困難になっているようだ。
事情を知っているジョーさんは、ちょうど50年目の節目ということもあり、無料で散髪をしてくれたそうだ。
ジョーはなんてったって、50年も長いことやっているからね、3回も店の場所が変わったんだ。
それでも私はいつもジョーに散髪してもらっていたよ。ずっと通い続ければいつかはちゃんと散髪してくれるだろうと期待しながらね(笑)
私が店に来るたびに、ジョーはいつも「もう30年だよ」「40年目だよ」なんて言っていたんだけど、今もう50年も経ったんだなと驚いたよ。
私が自撮りを始めた頃の話をジョーが持ち出すまで、そんなに年月が経ったなんて思いもしてなかった。あっという間だった。
でも、50周年を迎えたとき、それを祝うことは特別なことだと思ったよ。(サムさん)
サムさんは最初の散髪以来、50年間一度も髪型を変えていないそうだ。ジョーさんは、サムさんの見た目を「年老いたビートルズ」と表現して笑う。
サムさんの娘ニッキーさんは、「この(自撮りの)伝統は、父にとっても私たち家族にとっても素晴らしいものでした」と話している。
ジョーさんはいつも父の親友で、2人の写真は常にSNSでシェアされます。最近、Reddit で父の自撮り写真に関する投稿を目にしましたが、そこには何千ものコメントが付いていました。
うれしいのは、父とジョーさんが「いつも幸せそうだ」とコメントしてくれることです。
これまで長きにわたってサムさんの散髪をしてきたジョーさんは、理髪師としての仕事をこよなく愛しており、「定年の年になっちゃったけど、この仕事が好きだからハサミを握れなくなるまでやっていくよ」と笑顔で語っている。
References:Incredible mirror selfies documents man’s trip to the same barber over 50 years/ written by Scarlet / edited by parumo
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