PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『桜の園』が、8月7日(月)に開幕した。

ロンドン・グローブ座のアソシエイト・アーティスティック・ディレクターを務め、斬新な演出で多くのファンを唸らせてきたショーン・ホームズによる演出ということで、大いに期待されている作品だ。日本でのショーンの演出は、2020年の『FORTUNE』ワールドプレミアでの初登場以来、3回目。ロシアの劇作家アントン・チェーホフによる『チェーホフ四大戯曲」のひとつで、1903年に執筆され、その翌年に初演された『桜の園』は、彼の生涯最後の戯曲。ショーンがこの『桜の園』を手がけるにあたり上演台本に選んだのは、これまで数々のタッグを組んできて信頼を置いているサイモンスティーヴンスによるアダプテーション版。現代の俳優が語っても違和感のない軽妙なセリフにリライトしながらも、作品の本質が率直に捉えられており、戯曲を「古典文学」としてではなく「現代の劇場劇」へ見事に適応させている。

左から)松尾貴史、原田美枝子、安藤玉恵  撮影:細野晋司

物語の舞台は、20世紀初頭の南ロシア。外はまだ凍えるように寒い5月。領主のラネーフスカヤがパリから5年ぶりに、ふるさと“桜の園”に帰ってくる。帰還を喜ぶラネーフスカヤの兄ガーエフ、養女ワーリャ、老召使フィールス、近くの地主ピーシチクたち。だが領地を任せたガーエフに経営の才はなく、ワーリャが取り仕切るも、負債は膨らむばかり。借金返済のため、銀行は8月に領地である“桜の園”を競売にかけようとしている……。

撮影:細野晋司
撮影:細野晋司
撮影:細野晋司

豪華俳優陣が揃うキャストもまた見どころと言わずにはいられない。 女主人のラネーフスカヤ役には原田美枝子。多くの巨匠たちからオファーを受け数々の作品に参加、その確かな演技力で多くの賞を受賞してきた、日本を代表する女優が今回、実に4年ぶりの舞台出演を果たす。

実業家ロパーヒン役には、コミカルな演技と軽妙なトークであらゆるメディアにおいて活躍している八嶋智人トロフィーモフ役には、変幻自在に様々な役柄を演じ、昨年末には第57回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した成河。ワーリャ役には、話題の舞台での好演が記憶に新しい安藤玉恵。アーニャ役には、2023年舞台『キングダム』への出演が記憶に新しい川島海荷

撮影:細野晋司
撮影:細野晋司

エピホードフ役には、日本でのショーン演出作『FORTUNE』『セールスマンの死』に続いて出演の若手実力派俳優の前原滉。シャルロッタ役には、独特の存在感で観客を魅了する個性派の演技が光る川上友里。ヤーシャ役には、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』への出演でも注目を集める竪山隼太。ドゥニャーシャ役には、栗山民也演出『ザ・ドクター』など舞台での好演が続く若手個性派俳優の天野はな。

撮影:細野晋司
撮影:細野晋司

ピーシチク役には、確かな演技で舞台への出演経験も豊富な市川しんぺー。2017年の三谷幸喜版『桜の園』ではロパーヒンを演じた経験がある。ガーエフ役には、多彩な才能がとどまることを知らない、幅広い分野で活躍中の松尾貴史。『鷗外の怪談』で第56回紀伊國屋演劇賞個人賞、第29回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞している。そしてフィールス役には、『獣唄2021改訂版』『にんげん日記』にて第29回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞した稀代の名優・村井國夫。これほどまでに豪華なキャスティングから見ても、ショーンの本気度が伝わってくるようだ。

撮影:細野晋司
撮影:細野晋司

今作は、8月7日に上演が始まった東京公演(会場:PARCO劇場)に始まり、9月からは宮城・広島・愛知・大阪・高知・福岡と公演を重ねる。

120年の時を経て、チェーホフの戯曲が私たちにどう響くのか。

日本のクリエイティヴ・チームとショーンが織りなす国際的コラボレーションによる化学変化を、ぜひその目で確かめて欲しい。

【演出家・キャストコメント全文】
■演出:ショーン・ホームズ

PARCO劇場で3作目となる演出の機会をいただいたことをとても光栄に思っています。
そしてさらにそれがチェーホフの傑作戯曲「桜の園」であることは非常に光栄なことです。私の長きにわたる友人でありコラボレーターのサイモンスティーヴンス版の「桜の園」は、ダイナミックでありながら、原作に忠実で、その奥深さ・矛盾・ばかげた不条理を捉えています。
原田美枝子さんをはじめとする、作品への情熱と才能に溢れるキャストの皆様とご一緒できたこと、そして「セールスマンの死」を共に創ったクリエイティブチームの皆様と再びご一緒できたことは本当に大きな喜びでした。このプロダクションが、同じようにまた観客の皆様を刺激し、楽しませ、そして感動させるものになることを願っています。そして、7日のプレビュー公演で初めて観客の皆様とこの作品が出会う瞬間を楽しみにしています。

■ラネーフスカヤ役:原田美枝子

パワフルで繊細で楽しい、素晴らしい演出のショーンさんが船長となって大航海に出ていく感じです。良い船出ができると思います。ショーンさんは皆の力を引き出してくれるので、こちらもついついエネルギーを出してしまう程、毎日芝居をするのが楽しい稽古場でした。人の心を動かすとはこういうこと事なんだと体感できると思いますので、是非劇場に足をお運びください。

■ロパーヒン役:八嶋智人

演出家のショーンさんは演劇的スタミナがすごくあって、稽古の密度もあり楽しいから、ついつい我々もどんどん役に入っていきました。役の関係性が、素の関係性にも入り込んでいくので、八嶋は美枝子さんにメロメロでした。(安藤玉恵さんから突っ込みが入り、「あなたの事は好きなんですけど」と笑わせる場面も )ショーンさんを中心にチェーホフの作品が新しい形で出来上がっていて、我々もつくりながらワクワクしていました。たくさんの人に劇場で体験をしていただけたら嬉しいです。

トロフィーモフ役:成河

演出のショーンさんや美術のグレイスさんの発想が刺激的で、そんな考え方や表現の仕方があるんだ!と日々驚きの連続でした。今日のプレビュー公演はショーンさんもいらっしゃるので、まだまだ作品を尖らせて、余分なところも削ぎ落としていけると思っております。お越しいただいた皆様からのご意見もいただいて一緒に作品を作っていただければと思います。

■ワーリャ役:安藤玉恵

演出のショーンさんは稽古中に「Lovely」とか「Well done!」という言葉で導いてくれたのですが、言われるだけでやる気が出てくるし、「Are you happy?」」とキャストがhappyか聞いてくれるので、演じるのが楽しくてしょうがない稽古場でした。チェーホフの作品は難しいと思われるかもしれませんが、ショーンさんと一緒に理解しやすい作品になったと思います。ぜひ皆さまに見てもらいたいです。

アーニャ役:川島海荷

海外の演出家の方とのお仕事は初めてだったのですが、ショーンさんはセリフの語尾など些細な部分から心の中がバレてしまうんです(笑)初めて『桜の園』読んだ時は難しい印象だったのですが、稽古を重ねていくうちにやればやるほど面白い作品になっていきました。私は初舞台が 劇場だったので、成長した姿をみせられるように頑張りたいです。

■エピホードフ役:前原滉

ショーンさんの演出作品に出演するのは今回が3回目ですが、毎回毎回、面白い作品が続いていて、「こういうふうに作品を組み立てていくんだ!」という驚きがあります。今日の稽古でも直前に変更があったりしましたが、どんどん豊かになっていくのを自分でも感じるので皆さんが観たことのない『桜の園』が観られると思います。是非劇場にお越しいただいて楽しんでいただければと思います。

■ガーエフ役:松尾貴史

ショーンさんとの稽古は泉のようにアイデアが湧き出てくるので毎日が驚きの連続でした。公演が続いていく中でどのように成長していけるかがテーマかと思いますので、全国の皆さまにも楽しみにしていてもらえたらと思います。稽古が始まる前に『セールスマンの死』に出演していた鈴木保奈美さんにショーンさんのことを聞いたところ「雰囲気がリベラルでアイデアを採用してくれる」と聞いていたので安心して稽古に臨みましたし、全くその通りでした。

フィールス役:村井國夫

ショーンさんは、言葉の一つ一つの裏を考えて、なぜその言葉になったのかを深堀し、人間の欲望、裏切り、醜いものまでを掘り起こして、我々に演出をしています。日々、深いものを感じさせていただいてるので、これから全公演演じるのがとても楽しみです。自由さと美しさが日々変わっていっているので、参加できてよかったなと思っています。

<公演情報>
PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『桜の園』

作:アントン・チェーホフ
英語版サイモンスティーヴンス
翻訳:広田敦郎
演出:ショーン・ホームズ

出演:原田美枝子、八嶋智人、成河、安藤玉恵、川島海荷、前原滉、
川上友里、竪山隼太、天野はな、永島敬三、中上サツキ
市川しんぺー/松尾貴史、村井國夫

【東京公演】
2023年8月7日(月)〜29日(火)
会場:PARCO劇場

【宮城公演】
2023年9月2日(土)
会場:東京エレクトロンホール宮城大ホール

【広島公演】
2023年9月6日(水)
会場:上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)

【愛知公演】
2023年9月13日(水)
会場:日本特殊陶業市民会館ビレッジホール

【大阪公演】
2023年9月16日(土)・17日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール

【高知公演】
2023年9月20日(水)
会場:高知県立県民文化ホール・オレンジホール

【福岡公演】
2023年9月23日(土)・24日(日)
会場:キャナルシティ劇場

チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2343356

公式サイト
https://stage.parco.jp/program/sakuranosono2023/

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『桜の園』より