生まれ持った家庭環境が、子供に与える影響は計り知れない。何不自由なく、愛情たっぷりに子供を育てる親がいる一方で、過干渉や暴言、暴力などで子供を思い通りに支配したり、自己愛が強く子供を構わない「毒親」と呼ばれる親も多い。

【漫画】周囲との会話で気が付いた自分が「ネグレクト」出身だということ

そんな「毒親」だった両親と、分籍・住民票閲覧制限で絶縁したことをきっかけに「そんな親、捨てていいよ。~毒親サバイバーの脱出記録~」「こんな家族なら、いらない。」などの漫画を執筆した、漫画家・尾添椿が、毒親による“虐待”を受けた子供たちのリアルを徹底取材。

実際に、虐待を受けて育った子供たちは、どのような人生を歩んでいるのか―。著者の取材後記を踏まえ、本記事を「それって、愛情ですか?」と題してお送りする。今回は、ネグレクトされたむつみさんを取材。彼女は大人になるまで自分がネグレクト育ちだと気がつかなかったと言います。

※この記事には不快に感じる可能性のある描写が含まれます。ご了承のうえ、お読みください。

――今回は友人のむつみさんを取材してみていかがでしたか?

「むつみさんは友人の中で一番、家庭に問題がなさそうな印象の人でした。なぜかというと、普段から笑顔で明るくて家族や家庭環境の話をまったくしないから。何の問題もないんだろうなと感じていたので、むつみさんが家庭の話をしてくれたときは唖然としました。むつみさんが『他人に自分のことを話す習慣も文化もないから、結婚して子育てするまで自分がネグレクト育ちだったことに気がつかなかった』と言っていて。改めて人と話すことは本当に大事なことだと感じた取材でした」

――このエピソードを通して、伝えたいメッセージとは?

「子供は放っておいても育つわけがない、ということです。子供の人格に触れて内面を育てていくことが子育ての本質なのだと思います。産むことは女性にしかできない、人を人として育てることは人間だからできること。大事なことを教えるのは大人の責任ということを忘れずに生きていたいです」

過去を乗り越えて今を生きるすべての人に、明るい未来が待っていることを願いたい。

「それって、愛情ですか?」むつみの場合より/漫画=尾添椿