2022年12月9日、日本と英国、イタリアの3か国首脳は、次期戦闘機共同開発協力に関し、「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP:Global Combat Air Programme)に関する共同首脳声明」を発出した。

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 そして、2035年までに次期戦闘機を国際共同開発することを発表した。

 また、同時に発表された「防衛省と米国防省による共同発表」の中で、日本と米国は、次期戦闘機とともに運用する無人機開発などで連携していくことを発表した。

 現在、戦闘機本体の開発は基本構想および技術研究の段階にあるとされ、この基本構想が固まった段階で、各国は具体的な基本設計の作業に入ることになる。

 報道では、各国の開発費分担や作業分担は2024年末までに決定される見込みとしている。

 しかし、この作業分担が決まらないと設計作業の割り当てもできないので、当面は機体構想の検討と作業分担調整、そして作業の進め方に関する合意の形成がプロジェクトの中心的な作業内容となるであろう。

 さて、問題は「防衛省と米国防省による共同発表」で発表された次期戦闘機とともに運用するいわゆる随伴無人機の開発である。

防衛省と米国防省による共同発表」には「日米両国は、来年(2023年)中に自律型システムに関する具体的な協力を始めることで一致した」と記載されている。

 しかし、現在日米間でどのような調整がなされているのか不明である。

 次期戦闘機と随伴無人機は一つの「システム」で、切っても切り離せない関係にある。

 なぜなら、随伴無人機なしに、次期戦闘機のコンセプトの一つである「高度ネットワーク戦闘」は完成しない。

 特にAI技術を適用した自律性の高い随伴無人機と有人戦闘機の連携は、第6世代戦闘機にとって不可欠の能力である。

 日本は大型無人機を開発した経験がなく、かつAIの軍事利用分野でも経験がない。筆者は次期戦闘機開発における日本の弱点は無人機とAIであると見ている。

 さて、本稿は次期戦闘機の共同開発の現況などを取り纏めたものである。初めに、次期戦闘機の開発状況について述べる。

 次に、共同開発の枠組みについて述べ、次に国際共同開発のリスクについて述べ、最後に各国の随伴無人機の開発状況について述べる。

1.次期戦闘機の開発状況

 各国とも第6世代戦闘機の開発状況についてはあまり公表していない。

 グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)については、たまたま、NHK政治マガジンが「どうなる次期戦闘機? 日英伊共同開発 担当者に直撃(2023年4月25日)」という特集記事で、次期戦闘機プロジェクトを統括するポストを務めている防衛装備庁の射場隆昌事業監理官のインタビュー記事を掲載した。

 本項は同インタビュー記事を参考にしている。

(1)開発スケジュール

 3か国の共同開発プログラムでは、今は「コンセプト設計」段階である。それが終わると戦闘機の形状を確定させる「基本設計」、そして製造工程まで含めた「詳細設計」に入っていく。

 こうした設計作業を5年余りかけて行いながら、2035年の開発完了に向け、試作機の製造や地上試験、飛行試験に臨むスケジュールを描いている。

 射場氏によると、現在、日英伊3か国の政府・企業間では、毎日のようにビデオ会議を重ねている。一方、言語が異なる3か国の共同開発ならではの苦労も味わっているという。

 射場氏は次のように語っている。

「我々が英語を話すのもそうだが、イタリアの担当者も英語が母国ではない。英語を母国語としない人どうしで話すと誤解が出ることもある」

「時差もあり、日本時間の夕方にならないと会議ができない。ただ、毎日のように協議しており、日を追うごとにチームの一体感は高まっている」

 次期戦闘機開発スケジュールは図表1のとおりである。

         図表1 次期戦闘機開発スケジュール     

 ところで筆者は、拙稿「日本の次期戦闘機が国際共同開発になった経緯を徹底解説」(2023.1.19)で、「FS-X日米共同開発」を例にとり、次のように述べた。

 国際共同開発では、作業分担の比率、担当部位および技術移転で各国の利害がぶつかる。そして、それらは、「経済合理性、技術的妥当性等に基づき」客観的に決められるということはなく、各国政府、参加企業の利害に基づき最終的には「取引」で決められるものである。

 FS-X日米共同開発では開発経費はすべて日本が負担したため開発費の分担は問題とならなかった。

 今回の日英伊共同開発も同様である。射場氏は、水面下で行われている、熾烈な「綱引き」の一端を明かした。

 設計段階の2024年にかけて重要な局面を迎える。戦闘機の「どの部位」を「どの国」が担当するかを決めることになるからだ。

「例えば前胴、中胴、主翼、後胴、さらに、センサーやレーダー、エンジンなど、誰がどこを担当するか。どの国も自国の防衛産業を極めて重視しているし、自分の望むタイミングで改修するためにも、各国ともとりたい部位がある。その交渉を一生懸命やっている」

 戦闘機は30年から40年にわたって使用されるため、今の交渉は将来の日本の防衛産業の行く末をも占う重要な分岐点となる。

 では、日本はどの部位の担当を取りたいのであろうか。

 射場氏は「交渉中だ」と留保した上で「機体構造の軽量化」「エンジン」「レーダー」の3点を挙げた。

「機体構造の軽量化」は、三菱重工業が2014年から8年間にわたり研究してきた技術だ。

 炭素繊維などを用いた複合材を接着することにより、金属製のボルトの使用を大幅に削減することに成功した。これにより、重量を抑えることができるという。

 射場氏は、「戦闘機は、重さイコール費用で、軽く作るのがすごく大事だ。米国が『F-35』を開発するときもウエイトコントロールがすごく大変だった。ボルトを使わずにつなぐ新しい技術は、我々がすごく力を持っている」と語る。

 的場氏が次に挙げたのが「エンジン」だ。

 IHIは、2018年に「XF9-1」という、推力15トン級のエンジン開発に成功し、防衛装備庁に納入している。

 今回、国産エンジンを次期戦闘機に積むことは日本の悲願だという。

F-2戦闘機を日米共同開発した際は、日本の技術が足りず、米国製エンジンを購入せざるを得なかったからだ。

 射場氏は、「国産エンジンは悲願だ。自分で作れないものが明確にあると、交渉にも弱くなってしまう。XF9の開発に成功しているので自信を持っている」と語る。

 このほか、高性能の「レーダー」も、F-2戦闘機開発の頃から日本に強みのある技術だとして、射場氏は自信をのぞかせた。

 さらに、射場氏は、より多くの部位を日本企業が担うことで、国内の防衛産業の強化や、幅広い経済波及効果につなげたいと考えている。

 そして、射場氏は「米国、ヨーロッパでは企業合併により、防衛関連企業がすごく巨大化している。そういうところとしっかり伍していけるような防衛生産基盤をつくることに強いこだわりを持っている」と語った。

(2)次期戦闘機の開発コスト

 政府は2022年12月23日、過去最大の6兆8219億円に及ぶ2023年度防衛予算案を閣議決定した。このうち、航空自衛隊の次期戦闘機の研究開発費として1054億円を予算計上した。

 内訳は、日英伊の共同開発を推進するための機体の基本設計やエンジン製造など「次期戦闘機の開発」に1023億円、戦闘機用エンジンの効率性向上など「次期戦闘機関連研究」に31億円となっている。

 政府は、これまでの開発を見据えた研究費も含めると、既に5343億円を投入している。

 図表2「次期戦闘機の開発コスト」の左上の2019年度以前の研究開発費2277億円には、ステルス技術実証機「心神」やエンジンXF9の開発費が含まれている。

 最終的にどのくらいの費用がかかるかは、今後の設計や各国の負担割合に左右され、現時点では見通せないという。

        図表2 次期戦闘機の開発コスト       

 直近の海外の戦闘機開発の例を見ると、「第5世代機」で2005年に運用を開始した「F-22」の開発費は2.3兆円。

 2015年に運用を開始したF-35は6.1兆円とされる。詳細は、図表3「新型戦闘機の開発について」を参照されたい。

図表3 新型戦闘機の開発について

 日英伊共同開発では、不足する技術を相互に補いながら、リスクを低減し、開発コストの増大を抑えていくことが求められる。

 射場氏は、英国とイタリアが過去にドイツスペインとともにユーロファイターを共同開発した際、合弁企業(JV=ジョイントベンチャー)と管理機関を作ったことを参考に、効率的な体制を作りたいと述べた。

「共同開発の枠組み」の詳細は後述する。

 ところで、開発費の分担について、2023年3月15日付けロイターは次の様に報じている。

「日本と英国、イタリアの3カ国が進める次期戦闘機の共同開発について、焦点だった開発費の分担を日英で4割ずつ対等にする方向で協議していることが分かった」

「関係者らによると、現在は月1回程度のペースで協議し、日英が開発費の4割ずつ、イタリアが残りを負担する案が有力になりつつある。詳細は2024年末までに決定するため、比率は変わる可能性がある」

(3)次期戦闘機の開発国以外の第3国への輸出と「防衛装備移転三原則」

 今後、注目されるのが、次期戦闘機の完成品や部品を開発国以外の第三国に輸出できるようにするかどうかだ。

 開発パートナーの英国とイタリアは、第三国への輸出を重視している。

 一方、日本の「防衛装備移転三原則」の運用指針では、共同開発国への移転は認められているので、英国・イタリアへの移転は可能であるが、それ以外の第三国への移転は明確に規定されていない。

 こうした点をどうするのか、防衛装備品の海外移転を進めるため自民・公明両党が行う協議でも、焦点の一つになる。

 射場氏は、「与党の議論を踏まえながら政府として検討する」とした上で次のように、第三国への輸出がもし実現した場合のメリットを語った。

「英国とイタリアには輸出にこだわりがある。ユーロファイターは700機弱のオーダーがあり、中東にも売られている」

「たくさん売れば売るほど単価が下がるので、産業の観点から、たくさんの機数が出ることは非常に大事だ」

「また、日本の戦闘機を使っている国が出れば、その国との連携は今まで考えられなかったほどに強固になる。国際安全保障環境の安定を生み出す上でも非常に重要なツールだ」

 一方、防衛装備品の海外移転は、意図しない形で流用・転用されるおそれや、間接的に紛争に関与するリスクをはらむ。

 高い殺傷能力を持つ戦闘機なら、なおさらだ。

 与党幹部からも「いたずらな海外移転の拡大を招かないようにすることが重要だ」と慎重な議論を求める声が上がっている。

 さらに、国際共同開発ならではの課題も指摘されている。

 現行の運用指針では、開発パートナーである英国・イタリアが第三国への移転を望んだ場合、相手国との間でどのような手続きが必要か、明確に定められていないのである。

 今後、この点についても、与党や政府の議論を注視する必要がある。

2.次期戦闘機の共同開発の枠組み

 本項は、メルクマール「日英伊『次期戦闘機F-X』 共同開発に立ちはだかる“爆弾倉”技術という難題」(2023.7.10)を参考にしている。

 ユーロファイターの場合、英など4か国の合弁企業(JV)の作業を管理・監督する300人程度の国際調整機関が設置された。

 今回も、日英伊の政府方針を調整し、JVを効率的に指揮するため、同様の機関設置を検討している。

 同機関には、各国防衛当局や自衛隊・軍の人員を派遣することが予定されており、設置場所やポストの調整が必要となる。

 次期戦闘機を開発する民間企業の側では、三菱重工業、英BAEシステムズおよび伊レオナルドが、機体の設計開発および生産を進める共同事業体(JV)を設立する方向で調整が進んでいる。

 これに対して、開発の管理・監督を行う各国の政府側も、合同の調整機関を新設する方針を固めた。早ければ年内の関連条約署名を目指し、調整を進めている。

 さて、発注側と受注側の主体をそれぞれ一元化することは、プロジェクトをスムーズに運営するうえで重要な条件である。

 この体制が整う2024年以降、本プロジェクトが本格的に始動することになる。

 BAEシステムズの幹部は、2035年の運用開始は十分達成可能だと強気の姿勢を見せているが、具体的なタイムラインは示されていない。

3.国際共同開発のリスク

 本項は、拙稿「日本の次期戦闘機が国際共同開発になった経緯を徹底解説」から再録している。

 共同開発は、往々にして空中分解することがある。

 英国は1960年代、戦闘攻撃機トーネード」の開発に乗り出した。その合意覚書へ1968年にサインしたのは、英国と旧西ドイツイタリアオランダベルギーカナダの6か国であった。

 しかし、1970年には英国・旧西ドイツイタリアの3か国に減ってしまった。

 これは、財政上の理由や、全天候運用能力などをめぐる要求が各国で異なっていたためであった。

 現在、英国空軍・ドイツ空軍の主力戦闘機である「ユーロファイター・タイフーン」も、もともと英国と旧西ドイツフランスが目指したECA(European Combat Aircraft)計画として立ち上がった。

 しかし、その後計画名を幾度か変え、最終的に英国はドイツイタリアスペインとの4か国共同で「ユーロファイター・タイフーン」を、フランスは単独で「ラファール」をそれぞれ開発した。

 フランス艦上機としての能力を備えることとパワープラントに自国産の「スネクマ M88」を採用することを最後まで妥協せず、「ユーロファイター・タイフーン」の共同開発計画から脱退した。

 このように共同開発は、運用要求や開発スケジュールがまとまらなかったり、出来上がった機体の性能に満足するかどうかを巡って、開発が空中分解するリスクがある。

 今回の日英伊共同開発は、運用要求や開発スケジュール、機体の性能では問題がなさそうである。

 しかし、これからが大変である。費用や仕事量の分担等はこれから詰めることになっている。

 大型装備品の国際共同開発に慣れていない日本が、国際共同開発において経験豊富、別の言い方をすれば老練な英国を相手に、どこまで対等に計画を進めることができるかが注目される。

 イタリアクロゼット国防相は、2022年12月、ロイターとのインタビューで、日英との戦闘機共同開発を巡り、イタリアは平等な扱いを受けなければならないと述べている。既に駆け引きが始まっている。

4.各国の随伴無人機の開発状況

 軍用無人機は、用途により、無人攻撃機(自爆型無人機を含む)、無人偵察機、無人警戒監視機などに分類される。上記の用途に用いられる無人機は既に実用化されている。

 だが、無人で空中格闘戦などの制空戦闘を行う無人戦闘機(UCAV:unmanned combat air vehicle)の研究が各国で続けられているが、いまだ構想段階にある。

 ところが、2023年3月6日、香港の英字新聞サウスチャイナ・モーニング・ポスト (SCMP)は、中国がAI搭載の無人戦闘機の開発に成功したと報じた。

 詳細は、拙稿「倫理などお構いなし、世界の大脅威となりつつある中国の無人兵器」(2023.4.14)を参照されたい。

 現状では、制空戦闘を行う無人戦闘機の開発が難しいため、先進各国では有人戦闘機と協働し、有人戦闘機を支援する随伴無人機の研究開発に取り組んでいる。

 随伴無人機が促進される理由としては、

①有人戦闘機との役割分担でパイロットの負担を減らすことができる

②随伴無人機の機能を空中給油や電子戦などの機能に限定すれば格闘戦などの戦闘よりは単純な動きになるので技術面、経費面で開発が容易となる――などが考えられる。

 また、AI技術の発展に伴い、随伴無人機には高度なAIを搭載した自律戦闘能力が求められている。

 現在、開発中の随伴無人機は次の3機種である。

 1つ目は、オーストラリア空軍とボーイングが開発するAIを搭載した無人機「Loyal Wingman(ロイヤルウイングマン)」である。

 ロイヤルウイングマンのプロトタイプが2021年2月に初飛行に成功した。

 ロイヤルウイングマンは、全長11.7メートル、航続距離は3700キロ以上で、AI(人工知能)を活用し、ほかの有人機や無人機と連携しながら情報収集・警戒監視・偵察・電子戦などの任務を遂行するとされる。

 ボーイングは2022年3月21日ロイヤルウイングマンが「MQ-28A Ghost Bat(ゴーストバット)」と命名されたと発表した。

 2つ目は、ロシアの「スホーイS-70 オホートニク-B」である。

 2019年9月27日ロシア国防省は「スホーイ57(Su-57)」のそばを飛行するオホートニクの初飛行を紹介する動画を公表した。

 ロシアのイタルタス通信は2021年6月、スホーイ57が合計で4機の無人ステルス機「S70 オホートニク-B」を運用できるようにすると報じた。2024年に運用開始されると見られている。

 3つ目は、米空軍が開発する「XQ-58A ヴァルキリー」である。

 XQ-58は、親戦闘機によって制御される無人機として機能するように設計されており、偵察などの任務の実行、また攻撃された場合に敵からの攻撃を防御するとされる。

 2021年3月26日、XQ-58Aは6回目のテスト飛行を完了し、内部の兵器ベイから、小型無人機システムアルティウス-600(ALTIUS-600)の発射に成功した。

おわりに

 筆者は、これまでJBpressに次期戦闘機開発に関する記事を2本投稿している。

 1本目は、「世界が絶賛する、日本の次期戦闘機(F-3)開発全貌」(2022.5.6)で、2本目は、「日本の次期戦闘機が国際共同開発になった経緯を徹底解説」(2023.1.19)である。

 1本目は、筆者は次期戦闘機の国産化に決まったと判断して、「ゼロ戦の夢を再び」という願いをこめて執筆した。

 筆者は、1本目執筆当時、次のような理由から国産化に決まったと判断した。

 2011年度に生産が終了したF-2戦闘機以降、国内における新たな戦闘機開発事業は途絶えており、次期戦闘機の開発は国内の戦闘機の生産・技術基盤を維持するための重要な機会であった。

 そして、防衛省・防衛企業は、次期戦闘機の国産化に向けて、並々ならぬ努力をし、自国生産ができる十分な実力をつけてきた。

 例えば、防衛省技術研究本部(現防衛装備庁)は1990年代から日本の技術で次期ステルス戦闘機の開発の可能性を探るため先進技術実証機(X-2)を開発した。

 また、日本の弱点と言われるエンジンもIHIが、米国の「F-15戦闘機のエンジンと同等以上の出力を持つ「XF9-1」という戦闘機用エンジンの試作機を開発した。

 さらに、防衛省は2009年に「戦闘機の生産技術基盤のあり方に関する懇談会」を立ち上げ、次期戦闘機の国産化が行われなければ、わが国の防衛生産技術基盤を維持できないとする提言を発出した。

 加えて、米国の第6世代戦闘機の開発が遅れており、FS-Xの時のように米国から横やりが入らない状況だった。

 以上のことから、筆者は、次期戦闘機の国産化は間違いないと判断した。ところが、案に相違して、国際共同開発となった。

 国際共同開発になった背景としては次のことが考えられる。詳細は2本目の記事を参照されたい。

①国際共同開発が世界の趨勢となっている。

②日英間では、既に、次期戦闘機用のミサイル、エンジンおよびレーダーに関する共同研究・開発が進んでいた。

③日本の次期戦闘機開発計画と英国のテンペスト計画の開発スケジュールとスペック(性能)が類似していた。

④米国の日本に対する信頼度の向上。

⑤完成した次期戦闘機の海外輸出への布石。

 そして、2022年12月9日、「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)に関する共同首脳声明」が発出されたのである。

 さて、国際共同開発はわが国の安全保障にとって重要な挑戦である。米国以外との防衛装備の共同開発は初めてであり、官民の最先端技術を結集した数兆円規模の国家プロジェクトとなる。

 既述したが、FS-X日米共同開発で得た教訓は、国際共同開発は作業分担、担当部位、技術移転などで各国の利害がぶつかる。そして、それらは、「経済合理性、技術的妥当性等に基づき」客観的に決められるということはなく、各国政府、参加企業の利害に基づき最終的には「取引」で決められるものであるという。

 大型装備品の国際共同開発に慣れていない日本が、国際共同開発において経験豊富、別の言い方をすれば老練な英国などを相手に、どこまで対等に計画を進めることができるかが注目される。

 筆者の個人的な意見であるが、不合理な譲歩をするくらいなら共同開発から脱退して、国産化に戻ってもよいと思う。

 失敗なくして成功なしである。

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