バーチャルタレント事務所・にじさんじによる一大企画『にじさんじ甲子園』が、8月11日から13日の3日間にかけて開催される。

 同企画は、『eBASEBALLパワフルプロ野球2022』(2023年選手データ版)内のゲームモード「栄冠ナイン」を3年間分プレイし、にじさんじに所属するタレントを基にしたオリジナル選手でチームを作成。2リーグで計10チームが優勝を目指して対戦していくという内容だ。

【画像】「★999」をマークした“歴代最強投手”・葛葉の能力値

 個人VTuberとして活動している天開司が2019年8月に開催した企画『Vtuber甲子園』を前身とし、友人であるにじさんじ所属・舞元啓介が引き継ぐ形で『にじさんじ甲子園』をスタートさせた。

 『にじさんじ甲子園』としては2020年の初開催から数えて今年で4度目の開催であり、監督(参加ライバー)枠は史上最多の10名に拡大。これまでもデビュー前から野球に強い愛情を注いできたライバーや、野球に関してはサッパリだが高いゲームセンスを持ったライバーもおり、150人以上いる所属タレントのなかから野球愛・ゲームセンスを備えた所属タレントが選ばれてきた。

 また、本企画には『パワプロ』発売元のコナミデジタルエンタテインメントが協力している点も含めて初回大会から大きな注目を集めており、昨年には最大同時視聴者数が30万人を超えるほどの超人気企画となった。

 昨今はストリーマー・配信者、VTuberなど数多くのクリエイターがライブ配信をする時代。そうしたなかでも、トップレベルと目される面々の視聴者数は平時で1万人から2万人ほど。

 なにかしらの面白い企画で注目を集めているとしても3~5万人、音楽ライブなどの特別な機会であれば10万人規模を集めることもあるが、そういった配信ができるのは本当に一握りの存在のみ。

 『CRカップ』『VTuber最協決定戦』といったFPSタイトルを中心にしたゲーム企画は大きく注目されるが、こちらはどちらかといえば参加者個人の視点にリスナーが分散されがち。そうしたなかで、1つの配信枠に3日間で20万人~30万人前後を集めてしまう『にじさんじ甲子園』の突出ぶりと祝祭感がいかに高いかが伝わってくるだろう。

 8月6日までに全チームが育成を終了しており、8月11日午後1時からはいよいよ決戦がスタートする。まずは、今大会の大まかな展望について記してみよう。

■2023年大会はハイレベルな争いに? “投高打低”の様相で投手戦に期待

 まず大前提として、今大会は出場チームすべてが春夏の甲子園に出場することができた、史上初めての大会となった。しかも、参加チーム10校のうち、5校がゲームスタートから3年以内で全国優勝を経験し、野球部を名門にまで導いた。

 出場する監督内で、年を経るごとに栄冠ナインの育成ノウハウが広まっていった影響もあるだろう。しかし、『にじさんじ甲子園』初回大会では「そもそも3年間で甲子園大会を優勝することすら難しい」といわれていたのだ。今年の各監督の育成をみていると、そんな話がうそのように思えてしまうほどである。

 結果、10人の監督が育成したチームはどれも高レベルな仕上がりに。過去の大会であれば上位進出が狙えるレベルのチームでも、「今大会では下位に沈むのでは?」という予想すらされてしまう“異常事態”となった。

 これまで『にじさんじ甲子園』ではさまざまな選手が制作されてきた。「にじさんじ所属のタレントを使ってオリジナル選手を制作する」という企画であるため、たとえば月ノ美兎に限ってもこれまで3人の「月ノ美兎」が制作されており、開催回によってステータスや特殊能力は違っている。それを振り返ってみても、やはり初年度に比べれば制作された選手たちの平均能力があがってきている。

 とはいえ、使用されるソフトが『パワプロ2020』『パワプロ2022』と開催ごとに変わっており、特殊能力の効果なども多少異なっているため、「歴代最強野手・投手はだれか?」という問いかけに明快な答えを出せるわけではない。

 そこで、一つの指標として利用できるシステムに「星評価数」というものがある。ステータス・特殊能力などを含む選手の能力を計測して数値化したものなのだが、ここで一度歴代選手と今大会の星評価数をズラっと上位から見てみよう。

〈野手〉
ルカ・カネシロ(2022年/神速高) 星598
葉山舞鈴(2022/チョモ高) 星560
ミユ・オッタフィア(2021/レインボール高 星540
鈴鹿詩子(2022/にじ高) 星530
ヴォックス・アクマ(2022/にじ高) 星529

〈投手〉
叶(2021/にじ高) 星646
月ノ美兎(2022/王立ヘルエスタ高) 星573
社築(2021/加賀美高) 星538
黛灰(2022/神速高) 星509
遊間ユーゴ(2022/コーヴァズ高) 星490

 こうしてみると、2022年大会の野手陣がいかに素晴らしいかが伝わってくるだろう。続けて、今年度の大会を見てみよう。歴代でもトップレベルの投手が次々と生まれたのが分かるはずだ。

〈野手〉
小野町春香(2023/まめねこ工科高) 星472
東堂コハク(2023/まめねこ工科高)星472
ヴォックス・アクマ(2023/横須賀流星)星448
三枝明那(2023/快盗学園高)星446
ミリー・パフェ(2023/にじさんじ高)星425

〈投手〉
笹木咲(2023/まめねこ工科高)星673
ヤン・ナリ(2023/勇者育成高)星629
不破湊(2023/横須賀流星)星562
アンジュ・カトリーナ(2023/王立ヘルエスタ高)星515

(※参考)
葛葉(2023/にじ高)星999
ローレン・イロアス(2023/コーヴァス高)星860
卯月コウ(2023/快盗学園高)星711
鷹宮リオン(2023/まめねこ工科高)星451

 あらかじめお伝えしておくが、星評価の方式は、野手能力と投手能力を加算して評価されることがポイントになる。サブポジションとして投手以外にも守備につくことができ、投手能力に加えて野手能力が優秀であれば、投手専門の選手よりも星評価が高くなるという傾向がある。

 例えば今回レオスによって制作された鷹宮リオンは、二番手ピッチャーとファーストを兼任する選手だが、ミリーや三枝よりも星が高い。こういった事例があるため、あくまで「指標」「目安」といった一面があることは留意すべきだろう。

 葛葉・ローレン・卯月コウの3人はサブポジションを持ったエースピッチャーであり、「純粋な投手」としてどれほどの強さか数値上では分かりづらくなるため、参考として分けさせてもらった。それでもなお、ピッチャーとしての能力値をみれば3人ともに投手能力も非常に高いことは明白だろう。

 注目すべきは不破・アンジュの両名で、2人とも星600以下と一覧では評価が低く見えるかもしれないが、歴代投手の数値から考えてみれば「大会屈指のエース投手」「今年の大会を代表する投手」と目されるレベルにある。

 主に投手として活躍している選手が星評価が600以上を計測するだけでなく、それが3人も4人も現れたというのは今大会の大きなトピックである。

 反対に、2022年には星評価500以上の野手が複数人いたが、今年は1人も現れなかった。最高値は472であり、各チームのスタメン野手の星評価は200中盤~300台となっている。

 結果として、今大会は「歴代屈指」という語義が色あせてしまうほどに、怪物級の投手が7人も揃った奇跡的な大会となった。"投高打低"の様相が漂う今大会を制したチーム、そのエースこそが「にじさんじ甲子園」歴代最強と目される投手となることは間違いないだろう。

■実力伯仲・Aリーグの「台風の目」はどのチームなのか?

 続いて、A・Bリーグの各監督・チームの特徴などについても記していこう。

〈Aリーグ
王立ヘルエスタ高校 監督:リゼ・ヘルエスタ(2年連続3回目の出場)
勇者育成高校 監督:ニュイ・ソシエール(2年連続2回目の出場)
アザラシ学院高校 監督:五十嵐梨花(初出場)
横須賀流星高校 監督:社築(3年ぶり2回目の出場)
快盗学園高校 監督:渡会雲雀(初出場)

 昨年大会を優勝したリゼ・ヘルエスタが率いる王立ヘルエスタ高校を筆頭に、横浜DeNAベイスターズファンである社築と昨年大会出場しているニュイ、ここ1年でデビューしたばかりだが野球ファンを公言していた五十嵐梨花と渡会雲雀とフレッシュな2人をくわえた5チームが対戦することになったAリーグ

 そんなAリーグを引っ張る台風の目は、昨年優勝したリゼではなく、今回が初出場となった渡会が監督を務める「快盗学園高校」だろう。

 小・中学校で軟式野球を経験、内野手でキャプテンを務めており、デビュー以前からの『パワプロ』ファンだったと語る渡会。そうした経験も影響してか、そのプレイングや戦術からは手堅さを感じられる。

 さらに、“怪盗”という自身のプロフィールにも引っかけて、早々から「走力野球」を公言。スタメンには走力Aの選手を5人以上も揃え、攻撃・守備ともに走力を活かした戦いをしかけてくるだろう。

 3年間の育成期間においては、その機動力で各大会を席巻した。攻撃時には送りバントスクイズを多用し、守備時にも走力をフルに活かして守り勝っていく。まるで石橋を叩いて渡るかのような手堅いスモーベースボールを展開し、2年目春の甲子園大会優勝、3年目夏の甲子園出場(準優勝)を果たした。

 その結果、選手ステータスが一気に上昇。特に先発投手として期待を寄せていた卯月コウは星評価点700点を超える投手に成長を遂げた。金特殊能力「強心臓」を中心に7個の特殊能力と5種類の変化球を持ち、球速160キロ、コントロールA/スタミナSというステータスを誇る。

 ちょっとやそっとでは崩れることのない大黒柱が抑え、少なくないチャンスを機動力でこじ開けていくスタンスで、Aリーグを突破を虎視眈々と狙っている。

 そんな快盗学園高校を追いかける他4校も、じつはかなり実力伯仲としている状況だ。

 ニュイ・ソシエールが監督を務める「勇者育成高校」では、卯月コウと同レベルの先発投手ヤン・ナリが頭角をあらわし、快盗学園同様に彼女のピッチングを中心に勝ち上がっていくチームとなった。

 育成初年度に阪神タイガースで活躍する西勇輝を「転生プロ」(※実在のプロ選手が入部してくるシステム)として獲得、ヤン・ナリとして育成を開始した。3年を経過した時点で、変化球4種、球速160キロ、コントロールA/スタミナSという基礎ステータスにくわえて、「重い球」「緩急〇」を始めとする8つの特殊能力がサポートする超強力な投手に仕上がった。

 星評価点600以上を超えるナリと卯月2人は、Aリーグを代表する二大投手であり、先にも挙げたように過去大会で育成された投手と比較しても“トップオブトップ”と呼んでも差し支えない能力値だ。そんな2人の投げ合いはおそらくロースコアゲームが予想される。激戦必至の必見カードだ。

 昨年大会優勝を果たした「王立ヘルエスタ高校」は、昨年と同じく「総合力」がウリになるだろう。エースであるアンジュが試合をまとめ、女房役・魔使マオフレンの強打でランナーを返していくという王道な野球を展開していく。

 星評価点515となったアンジュは、卯月やヤン・ナリと比べると格は落ちるが、同作に収録されているプロ選手と見比べてもまったく見劣りしないエース投手だ。アンジュが打線を抑えきり、いかに粘り強く戦いきれるかがポイントになるだろう。

 つづいて紹介したいのは、プロフィールはビールの売り子、デビュー時からオリ姫(オリックス・バファローズの女性ファン)を公言するほどの野球女子である五十嵐梨花率いる「聖アザラシ高校」。

 同校は本間ひまわりと闇ノシュウの2枚看板をウリにしたチーム。「重い球」「奪三振」「闘志」と強い特殊能力をもった右投げ・本間ひまわりが先発し、「重い球」「勝ち運」を持った左投げ・闇ノシュウがリリーフしてくるという、いわば「重い球」リレーで相手打線を封じていく作戦だ。

 自身の配信でもすでに2度ほど栄冠ナインをプレイしており、その経験は今大会の育成においても活かされている。たびたび厳しい状況に陥ってもチームをしっかりと育成し、にじさんじに入るきっかけとなった先輩・本間ひまわりや同期組である石神のぞみらを強力な選手へと育て上げた。

 最後に紹介するのは、他4校とは少々異なる育成方針を見せてくれた「横須賀流星高校」だ。

 なんといっても注目は、監督・社築が愛する横浜DeNAベイスターズを彷彿とさせるマシンガン打線

 先発投手を務める不破湊が粘り強いピッチングをみせる裏で、ヴォックス・アクマシスター・クレアソ・ナギ、虎姫コトカ、アルバーン・ノックス桜凛月エリー・コニファーと、ミートB/走力B以上を備えた巧打者がズラリと揃った強力打線で援護していく。

 育成配信では、不破が打ち込まれてビハインドを背負った戦況から、自慢の打線で逆転試合を演じていくという“ドラマティック・ベースボール”を展開。2年目の夏から3年目の夏にかけての快進撃は多くのリスナーを興奮させただろう。

 なにより、日・韓・英とそれぞれ異なる活動域のライバーたちが打線を組み活躍していくラインナップは、現在のにじさんじの縮図でもあり、外国籍在住者が多く多国籍な色合いが強い神奈川県や横浜という土地をも表現しているかのよう。筆者イチ押しのチームだ。

 にじさんじ内でも友人であり、過去に監督として同大会の優勝を果たした“激打”・加賀美ハヤトを思わせる、打撃力をウリにしたチームを作り上げた「横須賀流星高校」。“投高打低”という趣が強くなった今大会において、打撃力で大会を席巻する未来も十二分にありえるだろう。

■ミッション「にじさんじ高校を止めろ」? 歴代最強レベルの“怪物”を打ち砕けるか

Bリーグ
VR関西圏立高校 監督:樋口楓(2年ぶり3回目の出場)
にじさんじ高校 監督:椎名唯華(4年連続4回目の出場)
虚空学院 監督:剣持刀也(3年ぶり2回目の出場)
まめねこ工科高校 監督:レオス・ヴィンセント(2年連続2回目の出場)
帝国立コーヴァス高校 監督:イブラヒム(2年連続2回目の出場)

 『にじさんじ甲子園』で毎年注目を集めるのが、スタート直後の初年度にやってくる新入生だ。

 というのも、3年縛りの育成ルールということもあり、初年度に入学する面々がどのようなステータスをしているかが大きなカギを握るからだ。大会ルールとして3回までやり直しが可能であり、「新入生ガチャ」として親しまれる注目の瞬間だ。

 10万人近い視聴者が見守るなか、初回大会から現在まで連続で出場している監督・椎名唯華が見事にロサンゼルス・エンゼルス所属の大谷翔平を転生選手として引き当てると、Twitter(現:X)のトレンドには「しぃしぃ大谷」など関連するワードが並んだ。

 そもそも現役プロ・OB選手が転生選手として出現することすら稀な「栄冠ナイン」において、そのなかから大谷翔平を引き当てるとなると超々低確率になる。豪運で知られる椎名の“ヒキ強”っぷりに、ファンたちが騒然としたのも無理はないだろう。

 こうして大谷翔平こと葛葉を中心として快進撃を続けた結果、椎名率いる「にじさんじ高校」は2年目夏から3年目夏までの公式大会を蹂躙。2年目・夏の甲子園、2年目・春の甲子園、3年目・夏の甲子園と3季連続の優勝を果たすという怒涛の快進撃を記録した。

 葛葉だけでなく、チームメイト全員のステータスも非常に高いレベルにまとまっており、にじさんじ高校は打撃・走力・守備・投手どれをとっても穴がないチームとなった。

 注目選手はやはり、大谷翔平の能力を引き継いだ葛葉だろう。6種類の球種、球速161キロ、コントロールA/スタミナS、特殊能力は10個以上という怪物じみた能力値に仕上がった。

 しかも、ここまでならば卯月コウ、ヤン・ナリも負けず劣らずの投手能力を持っているが、これに加えて野手として「パワーヒッター」「広角打法」といった特殊能力を有するホームランバッターとしても活躍しているのだから圧巻だ。星評価点は999、当然であるが、“大会史上最強選手”である。

 『にじさんじ甲子園』の歴史において、歴代最強の選手・葛葉を軸にしたにじさんじ高校は、過去のにじさんじ高校と比較しても圧倒的な実力を誇る。目下優勝候補の最右翼だ。

 そんなにじ高に食らいつくのは非常に難しいが、「まめねこ工科高校」と「帝国立コーヴァス高校」の2校は、打倒・にじさんじ高校を狙う2校として数えられるだろう。

 まずは帝国立コーヴァス高校。大谷翔平を引き当てて育成するにじさんじ高校を打倒しなくてはいけないプレッシャーのなか、同校を率いるイブラヒムが初年度に引き当てたのが、なんと「天才肌」の投手だった。

 育成選手には性格がそれぞれ設定されており、「天才肌」の選手は通常の選手よりも経験値が稼ぎやすく、強力な選手に育成しやすくなる。しかもこの選手、投手能力はおろか野手能力も非常に高く、大谷翔平にも対抗しうる二刀流選手として育てることも夢ではないほどのポテンシャルを秘めていた。

 育成が始まる前は「大谷翔平」というビッグネームの存在に気弱になっていたイブラヒムだが、にじさんじ高校を打倒しうる重要なキーを手に入れたことで一気にモチベーションを高め、「裏で天才投手三年縛りで育ててみる」とSNSで報告、育成配信はおろか普段の配信すらペースを抑え「栄冠ナイン」の練習に取り組むなど、かなり戦略的に育成方針を考えていくことになったのだ。

 結果、育成期間中に甲子園優勝とまではならなかったものの、夏の甲子園に2度出場したことでスタメン選手のステータスは軒並み高水準に。横須賀流星高校と同じくミート・走力が高いバッターがズラリと揃っており、天才投手となったローレン・イロアスがそれを後押しする。

 ローレンは球種5種、球速158キロ、コントロール/スタミナともにAと投手としての能力は十二分。イブラヒム本人は「最後の夏であと1勝、2勝すればより完成していた」と悔やんでいたが、にじさんじ高校の打線を抑えきる可能性を秘めた優秀な投手といえるだろう。

 そして、もう一校の対抗馬はまめねこ工科高校。レオス・ヴィンセントが率いる同チームは、投手力・守備を主体にしながら抜け目ない打線で勝利を重ねていくチームへと仕上がった。

 なんといってもエース投手・笹木咲の存在は大きい。5種類の球種、球速162キロ、スタミナS/コントロールAにキレ〇、奪三振など特殊能力は8つ揃え、星評価点は673をかぞえており、2021年大会において「お化け投手」としてファンの記憶に深く刻まれた投手・叶よりも評価点が高いのだ。

 そんな大エースを盛り立てるのは、各選手たちの高い走力と守備力だ。走力・守備力をともにB以上備えた選手が6人以上も揃っており、脚を活かしてボールに追いつき守り抜く様は、まさに鉄壁。

 特に、東堂コハク小野町春香の二遊間は、舞元啓介天開司の主催者2人をして“歴代最強レベルの二遊間”と評されるほど。しかも、2年目春の甲子園・3年目夏の甲子園で優勝すると、目標としていた打撃力の強化にも成功。レオス自身は守備・投手力を推しているが、その攻撃力も相応に高い。にじさんじ高校にも比肩しうる総合力が高いチームであろう。

 Bリーグはにじ高・コーヴァス高校・まめ工による三つ巴の戦いという様相を呈しているが、残る2校も侮れない。

 剣持刀也が監督を務める「虚空学院」は、「栄冠ナイン」のなかでも激戦地区である東東京を選んだことが影響し、地方大会の戦いに苦戦を強いられた。2年目の夏こそ甲子園に進出したものの、にじさんじライバーが主力となった2年目の秋から3年目の夏にかけては地方大会で惜敗してしまった。

 そんなチームにあって、大黒柱である先発投手天宮こころスタミナS、6つの球種、対ピンチ/対左打者もCと、試合をしっかりとまとめられる高いステータスで対戦相手と勝負していける。

 ミート力の高いバッターも複数人いるので、連打を重ねて点数を稼ぎ、天宮がバッチリと抑えきる、そんな戦い方ができれば勝利を収めることができそうだ。

 最後に樋口楓が率いる「VR関西圏立高校」。こちらも激戦地区である大阪を選んだことが災いし、地方大会で苦渋を舐め続けてしまった。1年目・2年目と地方大会で4度敗北、うち3度は1回戦での敗北であり、経験値を大量にゲットできるチャンスを逸してしまったのだ。

 他チームが甲子園出場・優勝といった好成績を収めていくなかでの大苦戦に、樋口はかなりのプレッシャーを感じたのだろう。3年目・最後の夏大会前には立て直しを計るべく徹底的に自チームを分析、戦い方を研究・模索することに。樋口いわく、他チームがどのように戦っているかまでチェックしていたと語っていた。

 その苦労が報われるように、みごと夏の地方大会を優勝と甲子園進出を決めてみせると、おもわず涙をこぼしてリスナーに感謝を述べていた。その後、見事に夏の甲子園優勝を果たし、樋口楓にとって3度目の『にじさんじ甲子園』参加にして、初となる甲子園優勝をもぎ取ったのだ。

 険しい3年間を経た今年のV西は、夜見れなとエナー・アールウェットの投手2本柱を見事に育成した。大会成績こそ振るわなかったものの、ゲーム内でも屈指のレアイベント・選手覚醒を2度も起こし、3年間で10回以上も練習試合カードを引いて試合経験値もカバー、同校を支える柱へと成長することができたのだ。

 先発・夜見が抑えつづけ、打ち込まれれば「威圧感(投手)」を持つエナーがリリーフに登場するという陣容であり、2人ともスタミナB/コントロールB以上、星評価は400以上の好投手が織りなすピッチングに大きな期待が集まるところだ。

 にじさんじきっての超人気企画ということで、多くのにじさんじファンからVTuberファン・パワプロファンに野球好きまで、多くの視聴者の注目を集めるだろう。

 そんな期待が渦巻く今大会は、未来にも爪痕を残す怪物同士の投手戦となるのか? そして、彼らを打ち崩すチームはどこなのか? 歴代最高レベルに仕上がった10チームによる戦いは、どこが優勝してもおかしくない非常にエキサイティングなものになるだろう。

 『にじさんじ甲子園』本戦は8月11日の13時から開幕する。プレイボールのその瞬間まで、楽しみに待ちたい。

(文=草野虹)

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