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KANA-BOON8月9日に東京・LIQUIDROOMで対バンツアー「KANA-BOON Jack in tour 2023」のファイナル公演を開催した。

【写真】2012年に「キューン20イヤーズオーディション」でグランプリを獲得したKANA-BOON

6月20日にスタートした「KANA-BOON Jack in tour 2023」には四星球、WurtS、カネヨリマサル、ネクライトーキー、ねぐせ。、Mr.ふぉるて、ハンブレッダーズ、04 Limited Sazabys、KEYTALKが出演。最終日にはASIAN KUNG-FU GENERATIONが登場する予定だったが、伊地知潔(Dr)の新型コロナウイルス感染を受け、残念ながら競演が叶わなかった。LIQUIDROOMはKANA-BOONが2012年にアジカンのライブのオープニングアクトを懸けたオーディション「キューン20イヤーズオーディション」でグランプリを獲得した会場。KANA-BOONはツアーファイナルで“始まりの場所“に立ち、ワンマンライブとして全17曲をパフォーマンスした。

大きな拍手に迎えられながら谷口鮪(Vo, G)、古賀隼斗(G)、遠藤昌巳(B)、小泉貴裕(Dr)の4人が登場。まず谷口は「最初に言わせてほしい。今日は来てくれて本当にどうもありがとうございます」とオーディエンスに感謝し、「今日一番悔しい思いをしてるのは潔さんだと思うので、俺たちが『悔しい』なんて言ってちゃいけないなと思っています。今日は初めてのLIQUIDROOMワンマンです! 思いっ切りいきます!」と意気込んだ。KANA-BOONは熱い気持ちをたぎらせ、「シルエット」「1.2. step to you」といきなり代表曲を連続投下。ライブ序盤から会場の熱気を引き上げると、アクセル全開で「フルドライブ」を放った。「今日の古賀はどうなのよ?」と谷口に話を振られた古賀は「めちゃくちゃ楽しいです」と笑顔を見せ、遠藤は「こんなに集まってもらえるなんて思ってなかったから、出てきた瞬間に泣きそうになった」と会場を見渡す。小泉は「今日俺、潔さんからもらったスティックでやってます!」と誇らしげにスティックを掲げた。

さらに「タイムアウト」「ウォーリーヒーロー」と、気迫のこもった彼らのプレイは続く。オーディエンスはエネルギッシュな4人のサウンドに心をたかぶらせ、腕を一層高く掲げて揺らした。「ひさしぶりに帰ってきました! 成長した俺たち、めちゃくちゃにあなたたちを踊らせるぞ!」と谷口が告げると、彼らは「FLYERS」を披露する。谷口はハンドマイクでまくしたてるようにリリックを放ち、ステージでジャンプ。オーディエンスも一斉に飛び跳ね、開放感あふれる空気が会場に広がった。そんな自由な空気を引き継ぐように、彼らは「ネリネ」を軽やかに演奏。「結晶星」では「そうさ、俺たちは俺たちの道のりを歩いてきたわけだ」と谷口が歌詞を変えて歌い、フロアから歓声を浴びた。

その後、谷口は昨年末にアジカンの後藤正文(Vo, G)に寿司屋に連れて行ってもらったエピソードをうれしそうに話す。そして「普段ライブで何を話そうかは事前に考えないんですけど、昨日は珍しく“あいうえお”について考えました」と話を切り出すと、あいうえお作文を披露し、「『あ』は『愛』です。俺たちはアジカンが大好きです。その愛をずっと中学時代から持って今日ここまで来ています。『い』は意思です。強い意思を持ってきました。アジカンが大好きという。ほかのみんなが『俺、アジカン好きなんだ』って言っても、『ナメんなよ』って言えるくらいの強い意思を持ってずっと生きてきました」とアジカン愛を爆発させた。さらに谷口は「運」「縁」という言葉で「キューン20イヤーズオーディション」でグランプリを受賞し、大切な人々と出会った日々を振り返る。最後の「お」には「恩」という言葉を挙げ、「今日来ないという選択肢もあったと思うんですけど、それでもKANA-BOONがワンマンでやることになっても見届けに来てくれたあなたにすごく恩を感じています」と感謝の思いを伝えた。「こういう話に通じる曲があるから、それをやります」と谷口が宣言し、歌ったのは「きらりらり」。温かなサウンドに乗せて、彼らの道のりを示す飾り気のない言葉がまっすぐに届けられた。

「スターマーカー」では四つ打ちのビートに合わせて、フロアにオーディエンスの腕が楽しげに揺れた。谷口はライブについて「俺はこれが仕事だと一切思ってません。仕事っていう感じではなくて、すべては俺が楽しくてやっていること」と話し、「ただあなたに会いたいと思って来た。あなたに会いたいだけなんです」と伝える。そしてそんな思いを込めるように「彷徨う日々とファンファーレ」で「会いたいだけ 会いたいだけ」とストレートに歌い上げたあと、「恥ずかしげなくも言うよ! あなたのことが大好きだー!」と谷口はフロアに向かって愛を叫び、「ただそれだけ」を熱唱した。

「次の機会も必ず作ります!」とLIQUIDROOMでのアジカンとの競演を観客に誓った谷口。彼は「今回すぐに後藤さんから連絡もらって。『俺たちアコースティック編成とかですぐにできるように準備しておくから、どうするかKANA-BOONが決めて』と言ってくれて、本当にすごく温かくて優しい先輩で。でも、やっぱり全員そろった状態で俺はここでやりたいから、『今回はワンマンにさせてください』というふうにさせてもらいました」と思いを語り、「見せたかったな、今のKANA-BOONを。でも、次にやるときは俺たちはもっともっと強くタフに、そして14歳から16歳くらいの自分たちが観てもカッコいいと思えるバンドになっているはずなので、また実現するときどうぞよろしくお願いします!」と頼もしい言葉を口にした。

「今まで何度も立ち上がってきました、あなたのおかげで。俺たちは立ち上がり方を知っています。そういう強いバンドです。俺たちを見ていてください」と谷口は言い切り、「フカ」を力強く歌い上げた。4人がドラムの前に集まり、向かい合って演奏し始めたのは「まっさら」。彼らはありったけのエネルギーを爆発させるようにパワフルなパフォーマンスを繰り広げた。最後には「ないものねだり」をオーディエンスと一緒に熱唱。「ゆらゆらゆらゆら」のコール&レスポンスを「アジアジアジアジカン」に変えて最後までアジカン愛をあふれさせ、歓声を浴びながらステージをあとにした。

アンコールを求める拍手に呼ばれて、4人は再びステージに登場。谷口は「俺たちはこれまで友達もそんなにいないバンドだったんですけど、最近は、これだけずっとバンドを続けてれば何も言わずともお互いに仲間だなと思える人たちもたくさんいて」と話を切り出し、「社交的でもないし、うまいことサバイブしてこれたバンドではないんですけど、それでもフェスで友達と呼べる人がいたり、親しげにしゃべる先輩がいたり、俺たちに懐いてくれる後輩がいたり。メジャーデビュー10周年で、若手でもベテランでもない。間にいる中堅というポジションなんですけど、中堅30代、めちゃくちゃ楽しいです」としみじみと語った。ここで谷口は「なんか赤いギターがある」とステージに置かれた赤色のギターを指差す。さらに眼鏡まで装着し、佇まいにもアジカンへのリスペクトをあふれさせた。その姿でKANA-BOONは、高校生の頃からコピーし続けてきたアジカンの「君という花」を披露。4人が楽しげに笑顔を見せながらこの曲を演奏すると、アジカンのライブではおなじみの「らっせーらっせー!」の掛け声もフロアに響き渡った。ラストナンバーは、現在放送中のテレビアニメ「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」のオープニングテーマ「ソングオブザデッド」。新曲でタオル回しによる壮観な景色をフロアに生み出した4人は、いつか訪れる大好きな先輩とのLIQUIDROOMでの競演に期待を膨らませて今回の対バンツアーを締めくくった。

KANA-BOON「KANA-BOON Jack in tour 2023」2023年8月9日 LIQUIDROOM セットリスト

01. シルエット
02. 1.2. step to you
03. フルドライブ
04. タイムアウト
05. ウォーリーヒーロー
06. FLYERS
07. ネリネ
08. 結晶星
09. きらりらり
10. スターマーカー
11. 彷徨う日々とファンファーレ
12. ただそれだけ
13. フカ
14. まっさら
15. ないものねだり
アンコール
16. 君という花
17. ソングオブザデッド

「KANA-BOON Jack in tour 2023」東京・LIQUIDROOM公演の様子。