なかやまきんに君

タレントのなかやまきんに君が、4日に自身のYouTubeチャンネル『ザ・きんにくTV 【The Muscle TV】』を更新。陸上自衛隊習志野駐屯地の第一空挺団レンジャー訓練の「体力向上運動」12種目のうち5種目に参加した様子を投稿した。SNS上では、過酷な訓練に驚く声や、訓練に耐える自衛官を称賛する声があがり、その訓練について行こうとするきんに君に感動する人も見られている。

このレンジャー訓練がどれほど過酷なものなのか、きんに君はどれほどスゴいのか。元レンジャー教官の筆者が解説する。


■レンジャーの中でも別格の「空挺レンジャー」

習志野駐屯地に所在している第一空挺団は、その名の通り空から「落下傘」というパラシュートで敵地に潜入する部隊である。そのため仮に部隊がバラバラになっても、個人で考えて行動できるよう隊員は日々訓練している。

その彼らの避けては通れない試練が空挺レンジャー課程。小部隊として敵の後方地域に対して攻撃することができるようになるための訓練で、陸上自衛隊で「最も過酷な課程教育」なのである。


関連記事:「自衛隊は訓練でヘビを食べる」は本当? 元レンジャー教官が明かす噂の真実

■終わりが見えない体力向上運動

空挺レンジャー課程の最初の関門が体力向上運動である。長期間の作戦に耐えられるよう隊員の基礎体力を向上させるために実施されるこの運動は、12種目を通じて全身が鍛え上げられる。

その中でも一番キツいのは、開始前後の「長時間の姿勢維持」と「回数の不明確さ」にある。この2つは教官のさじ加減で開始と終わりが示されるため、訓練に参加している自衛官は終わりが見えない苦しさとも戦うことになる。この一連の運動を通して、強靭な精神と体力を醸成させるのである。


■元レンジャー教官から見たきんに君のスゴさ

では、きんに君の訓練練度はどうだったのかだが、心の底から大変素晴らしいと感じた。12種中5種と少ない課目ではあったものの、減量中という悪いコンディションの中でやり切っていて筆者はとても驚いた。

悪条件にも関わらず、途中にギャグを挟みながら、かつ教官の指摘に応えつつやりきったのである。訓練は動画で見る以上に過酷で、体力の限界であれば教官の指摘に対応することもできないほどだからだ。

体力だけでなく、どんな状況でもやりきる精神力も持ち合わせている彼は、もし空挺レンジャー課程に実際に参加したとしてもその課程を乗り越える力があると筆者は考える。


■レンジャー志願者は事前準備を欠かさない

空挺レンジャー志願者は、概ね20代〜30代前半の年齢層で構成され、彼らは必ず事前に自ら過酷な体力練成を積んだ上で参加している。

体力向上運動の種目も事前に分かっているため、各種目に対しての耐性をしっかりつけてから教育を受けているが、それでもギリギリで乗り越えるのである。

それに対しきんに君は、初めての訓練かつ44歳にも関わらず、回数等を誤魔化すことなくやりきっており、筋トレで鍛え上げた肉体がしっかりと任務に耐え得ることを身をもって証明した。元レンジャー教官として心の底から尊敬したい。


■執筆者紹介

安丸仁史(やすまるひとし):1994年福岡生まれ、福岡育ち。防衛大学校(人文・社会科学専攻)中退後、西南学院大学文学部外国語学科卒業。 2017年陸上自衛隊に幹部候補生として入隊。

職種は普通科で、小銃小隊長や迫撃砲小隊長、通訳などを務める。元レンジャー教官。 現在は複数事業を経営。

・合わせて読みたい→自衛隊小銃乱射事件は起きるべくして起きた 元第10師団内レンジャー教官が明かす募集難の苦しい実状

(文/Sirabee 編集部・安丸仁史

陸上自衛隊で「最も過酷な訓練」に挑戦したなかやまきんに君 元レンジャー教官が語るそのスゴさ