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はじめに

テスラ曰く、モデルSの新たなプレイド仕様は世界最高の加速性能を持つとのこと。となれば、それを計測しないわけにはいかない。むろん、それだけでなく、ロードテストの俎上に載せなくては。

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結論を隠して焦らすつもりはない。0-97km/hの実測タイムは2.4秒である。これは、かつてのレコードホルダー、ブガッティ・ヴェイロン・スーパースポーツを凌ぐ数字だ。

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テスト車:テスラ・モデルSプレイド    JOHN BRADSHAW

いかなる基準に照らしても、驚くべきパフォーマンスだと言っていい。しかもこれがハイパーカーの類ではなく、11万3480ポンド(約2065万円)で手に入る5ドアの大型サルーンであるというのが二度ビックリだ。

安いとは言えないが、これを打ち負かす可能性があるクルマはどうだろう。ブガッティ・シロンやライマック・ネヴェラ、ピニンファリーナ・バティスタくらいしか候補はないが、どれも億単位の対価を要求するものばかりではないか。相対的に見れば出血大サービスだ。

加速タイムには先に触れたが、さらなる詳細な性能データはこれから紹介する。さらに、ロードテストの評価基準は数字だけではない。加速と減速のタイム以外にも、内装のクオリティは価格に見合っているか、ハンドリングや乗り心地の洗練度はどうか。それも含めて検証していこう。

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

モデルSの登場はもう11年も前だ、とバカにするのは簡単だ。たしかに、納得のいく航続距離を備えた電動サルーンテスラが世界中をあっと言わせたのは2012年のことで、英国導入は翌2013年だった。しかし、そこからの変更ぶりを考えると、デビューしたときのまま旧態化したと考えるのは誤解だと言える。

テスラは技術面の詳細について、あまり語りたがらない。しかし、すでにこのプレイドを分解し、その細部までを検証している第三者がいる。それでわかったのは、スタイリングこそほぼ変わらないものの、中身はまったくの別物になっているということだった。

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途轍もない加速性能を誇るモデルSプレイドだが、外観ではっきりそれと知れるのは赤いキャリパーくらいのものだ。    JOHN BRADSHAW

リチウムイオン電池テクノロジーは、この10年でだいぶ進歩した。モデルSはパナソニックと共同で生産するニッケル・コバルト・マンガン筒型セルを相変わらず使用しているが、その構造や冷却と積載の方法もかなり進歩している。キャパシティはグロスで100kWh、ネットでも97kWhに達した。

シングルモーター版はラインナップ落ちして久しく、現在のモデルSはデュアルモーターのロングレンジと、今回テストする3モーターのプレイドをラインナップ。3モーターはアウディSQ8 E−トロンのように、フロントに1基、リアに左右1基ずつというレイアウトで、フロントは418ps、リアは各420ps。合計すれば1258psだが、総合出力は1034psにとどまる。バッテリー出力の限界があるからだ。また、フルスロットルでも合計値に届かないのは、トルクベクタリングが機能しているのも一因だ。

テスラがクルマづくりの経験値を積み重ねるにつれて、そのプロセスと、モデルSのデザインは磨かれてきた。大部分がアルミ製であることは変わらないが、多くのスタンプ成型による構造部材は鋳造品に置き換えられ、ディテールには無数の改修が入っている。車両重量は、2013年に計測したP85Dに対し、今回のテスト車が45kg重くなっている。

フロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンクというサスペンション形式に変更はない。しかしながら、実際にはリアが4リンクから5リンクに変わっている。また、全車エアスプリング仕様となった。プレイドのリアのモーターとサスペンションを保持するクレードルは専用設計で、2モーターに対応している。

外観では、新型のホイールと改修されたバンパーブラックアウトしたトリムを装着。もっとも明確な変更は、ホイールアーチがワイド化されたことで、より踏ん張りの効いたスタンスを生んでいる。

注目したいのは、プレイドがそれと主張する部分の少なさ。リアのバッジ以外は、ささやかなリップスポイラーと赤いブレーキキャリパーくらいだ。

内装 ★★★★★★★☆☆☆

最新アップデート版の内装は、大きく様変わりしている。もちろん、いかにもテスラ的なインテリアではあり、ボタンウッドパネル、贅沢なレザーといったものを求めるユーザーには向かない。

マテリアルと組み付けのクオリティはなかなかのもので、以前のテスラとは雲泥の差だが、文句なしというには程遠い。グローブボックスを占める際には明らかにボーンと音がするし、ルーフレール付近ではドライバーの左耳の側でなにかがガラガラ言っている。

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最新のモデルSの運転席からは、ワイパーや方向指示器、ギアセレクターのレバーも姿を消した。テスラらしいといえばそれまでなのだが。    JOHN BRADSHAW

かなり執拗に探さなければ、チープな質感のプラスティックを見つけることはできない。だが同時に、11万3480ポンド(約2065万円)のクルマに期待するような質感のマテリアルもまた見つからない。

テスラはレザー不使用で、合成皮革の感触は本革にかなり近い。しかし、プレミアムなクロスや目を引くステッチ、テクスチャーの入ったアルミパネルといった、高級車なら一般的なオプションが用意されていない。それに代わるまでではないものの、関心を持てるアイテムといえば、ベーシックな見た目のカーボントリムくらいのものだ。

プレイドでは、実体コントロール系の排除を徹底してきた。2次的な操作のほとんどは、毎度ながらセンター画面に統合されているが、さらにワイパーレバーやギアセレクターまで廃止された。このクルマは、ドライバーの行きたい方向を推測し、ブレーキペダルをタップして決定を促してくる。画面にスライダーが用意されてはいるが、あくまでそれはバックアップだ。うまく機能してはくれるのだが、画面がフリーズした場合のリスクは一気に高まった。

ワイパーと方向指示器は、ステアリングホイールに新設された静電容量式ボタンで操作する。このクルマはカメラと舵角センサーををうまく使って、方向指示器を戻す。それはみごとなほどうまくできているのだが、それほど優れた技術を、シンプルなレバーのほうがもっとうまくできる仕事のために使うのはなぜか、疑問を感じずにいられない。

テスラのインテリアは、万人受けするものではないだろう。とはいえ、実用面でケチをつけるのは難しい。フロアがフラットなのを活用して、モデルSには深さがあって実用的なセンターコンソールが設置される。そこには可動式のカップホルダーと小物入れ、さらにはワイヤレス充電器ふたつが設置されている。

ボンネット下のラゲッジスペースはかなり広い。オープンするには、車載ディスプレイかスマートフォンをタップするだけ。いちいち手探りでキャッチを探す手間はいらない。

走り ★★★★★★★★☆☆

モデルSプレイドの加速を極限まで引き出すためには、できるだけバッテリーを充電することがまず前提となる。われわれは90%の段階でテストを開始した。次にすべきは、ドラッグ・ストリップと銘打たれた走行モードを選ぶことだ。これにより、バッテリーがあらかじめ理想的な温度に調整される。そのための時間は多少必要だ。だいたい、7分くらいで準備を完了する。

左足でブレーキを踏みながら、右足でスロットルを床まで踏みつけると、プレイドは数秒でチータースタンスに入る。フロントモーターがその力を余すことなく路面へ叩きつけられるよう、ノーズをリフトに備えて低くした姿勢を、テスラは俊足の猛獣にたとえたわけだ。

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動力性能は圧倒的だが、公道でそれを扱うには不備が目立つ。スロットルペダルのセッティング見直しと、回生と摩擦のブレーキ協調制御導入は喫緊の課題だ。    JOHN BRADSHAW

そうしてスタートラインから飛び出した電気じかけの猛獣は、2.4秒で97km/h、2.5秒で100km/hに到達。その後は4.6秒で161km/h、10.9秒で257km/hに届く。この加速、どこを切り取ってみてもブガッティ・ヴェイロンを凌ぐタイムだった。

0−1kmでさえもW16のハイパーカーを上回ってみせたが、それはリミッターに当たったまま走る時間が5.7秒もあった上での結果だ。さらに、1.6kmストレートが尽きる手前で停止するため、1km通過前にブレーキを踏み始めたことも付け加えておきたい。

ドラッグ・ストリップチータースタンスの無駄な待ち時間や手続きがあっては、せっかくのパフォーマンスも台無しになるのではないかと思うかもしれない。しかしながら、機械への思いやりを多少なりとも持ち合わせているなら、ガソリンエンジン車でも暖気なしに全開加速しないはずだ。

もっとも、ドラッグ・ストリップを使わないタイム計測も参考までに行ってみた。プレイドモードでの0−97km/hは2.7秒、0-161km/hは5.1秒で、スポーツモードに落としても、フォード・マスタングマッハEを打ち負かす3.7秒で97km/hに達した。チルモードでの7.3秒という0-97km/h加速も決して遅くはないが、ほかのモードの後に試すと、ノロノロ運転に思えてしまったというのが正直な感想だ。

モデルSプレイドが、呆れるような動力性能の持ち主であることは疑う余地もない。しかし、公道上でのドライバビリティについては、話が違ってくる。

幻覚が見えそうなくらい速いので、公道でフルスロットルを楽しめるのはほんの数秒だ。ではあるが、あまりに瞬間的で暴力的なので、本能的に味わう体験となってしまう。ガソリンエンジン車なら、どんなに速いスーパーカーでも、なるべく早く正しいギアを選び、ターボが立ち上がるのを待つ猶予が、わずかながらでもあるところだ。

テスト中、ほとんどの間はスポーツモードで走らせた。プレイドモードの有り余る動力性能を容易くスムースにコントロールするには、スロットルのトラベルが十分になかったからだ。

事態が厳しくなるのは、ペースを落としたときだ。テスラは最新EVのほとんどがやってのけるようには、回生と摩擦の両ブレーキを協調させることができない。ブレーキペダルはディスクブレーキ専属で、回生ブレーキスロットルオフによってのみ作動する。

テスラのワンペダル運転は、最高レベルに数えられる。それだけに、普通に運転している分にはみごとだ。しかし、ふたつのペダルをどちらも使いたいというEVのドライバーはかなり多い。

サーキットでは、ブレーキ協調の欠如が深刻な問題になる。正確にしっかりブレーキペダルを踏むことが必須となり、それをテスラが認識しているかのように、トラックモードでは回生の効きが弱められる。しかし、そうなるとディスクブレーキは単独で2tの重量と1034psのパワーを備えるクルマの運動エネルギーを引き受けなければならない。当然ながら、短時間でオーバーヒート傾向を示すようになってしまう。

ブレーキペダルのフィールそのものは良好で、113km/hからの完全制動に要する距離は43.1mと、この重さのクルマとしては悪くないのだが。

使い勝手 ★★★★★★★★☆☆

インフォテインメント

テスラはおそらく、大画面のタッチ式ディスプレイにさまざまな操作部を統合するトレンドの先鞭をつけた存在だ。それも、そこまで頭に来ないで操作できるだろうという程度で扱えるものとして。

それは、最新型でも言えることだ。超高解像度の17.0インチ画面は、即座に反応し、さまざまなアプリケーションを上下左右自在に動かせるのはじつん賢く直観的なやり方だ。Googleベースのナビも、うまく機能してくれる。

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あらゆる操作をタッチ画面に統合するトレンドは、テスラが火をつけたもの。ムカつくほど使いにくいわけでははないのだが、よく使う機能は専用のスイッチがほしいという思いは拭えない。    JOHN BRADSHAW

とはいうものの、少なくともいくつかはボタンを残したシステムなら、もっと集中力を削がれずに済む。シートのヒーターやベンチレーターのような機能を使うのに、タップすべき回数が多すぎるのも気に入らない。

テスラがApple CarPlayとAndroid Autoの導入を頑なに拒否し続けているのも、フラストレーションのもととなっている。システム内蔵のSpotifyアプリは、CarPlayの同種のものより出来がいいものの、Apple Musicアプリは使い物にならないほどバグが多い。さらには、WhatsAppやApple Podcastsもサポート対象になっていない。

オーディオは、960Wで22スピーカーのシステム。気の利いたネーミングはされていないが、これより音のいいものはそう多くはない。

燈火類

マトリックスLEDヘッドライトを装備しているが、アダプティブビームとして使うためのソフトがインストールされていないので、普通のLEDヘッドライトとしてしか使えなかった。パワーはそこそこだが、このセグメントにおいては物足りない。

ステアリングとペダル

左ハンドル仕様のみで、ペダルオフセットがあっても言い訳できないところだったが、ありがたいことに、とことん普通のレイアウトだった。

操舵/安定性 ★★★★★★☆☆☆☆

ポルシェ・タイカンがスーパーサルーンだけど電動だとするなら、モデルSプレイドは1970年代のマッスルカーの電動版、といった趣だと言ってもいい。これがニュルブルクリンクにおける市販EVのレコードホルダーで、トラックモードを備えるクルマだと聞いたら、驚かれるのではないだろうか。

振り返ると2013年、英国デビュー間もないモデルSをテストしたとき、われわれは「運動性能は満足いくものだが、特別ではない」と結論づけた。公道上での振る舞いに関しては、当時とまったく同じ感想だ。

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ワイドなタイヤはグリップがみごとで、ボディコントロールも悪くない。しかし無感覚なステアリングが自信を挫き、走り好きなドライバーを欲求不満にする。直線加速を別にすれば、だが。    JOHN BRADSHAW

ワイドなテスラ専用ミシュランはかなりのグリップをもたらし、速めのステアリングは十分に鋭い反応ぶり。アダプティダンパーを備えるエアサスペンションは、良好だが地味なボディコントロールをみせる。ほとんどのドライバーが、一般道ならこれで十分だと思うだろう。

いっぽう、スーパーサルーンらしさをどことなくでも求めるなら、プレイドには心動かないはずだ。かなり幅が広い上に左ハンドルのみなので、自然に一般道で攻める気は失せる。左カーブで、周囲を視界に収めるのが難しいのだ。

広くて見通しのいい道でも、このモデルSはコンフィデンスをさほど引き出してくれない。その元凶はステアリングだ。はじめは、手応えがよくて比較的セルフセンタリングが強めに感じる。しかしすぐに、それ以上はなにもないことに気づいてしまう。前輪になにが起ころうと、手応えは一定のまま。やや不気味で、戸惑いを覚える。もしも熱中しすぎて、パワーをかけるのが早すぎてしまうと、アンダーステアに陥ってしまう。

加速テストの最中には、260km/h手前くらいで進路を外れはじめるようにも感じられた。

自動運転に関しては、欧州の厳しい基準に遭ってお手上げというありさまで、残されたのはきわめて初歩的な運転アシストシステムだった。レーンキープアシストはやたらと介入してくるし、オフにするには何度かタップする手間が必要。アダプティクルーズコントロールは容易に揺らぐものではないが、加速が遅すぎる。車線追従も、切っておかないと修正舵を一切見逃してくれない。

快適性/静粛性 ★★★★★★☆☆☆☆

穏やかに走らせていると、プレイドは事態が好転するが、それだけだ。エアサスペンションはたしかに、レンジローバーやメルセデス・ベンツSクラスのそれのような魔法のじゅうたん感覚は持ち合わせていない。それらよりはやや余分に、地形変化を乗員へ伝えてくる。

高級車基準では、わずかながらゴツゴツ感があるものの、このレベルのパフォーマンスを持つクルマとして見れば、きわめてスムースだ。21インチタイヤを履いていてさえ、路面不整の角をうまく丸めてくれる。

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エアサスを備える大型サルーンとしては物足りない乗り心地も、ド級のハイパフォーーマンスを考えれば満足のスムースさ。ただし、路面方向の遮音性には難ありだ。    JOHN BRADSHAW

シートは、最高峰の高級車が備える、調整機能満載のシートのように至れり尽くせりではない。それでも、どんなドライバーでも、長距離でも快適さを保てる、まずまず納得のドライビングポジションを取れるはずだ。

唯一、決定的に後れをとっているのは静粛性だ。フレームレスドアだが、風切り音は問題ではない。悩みの種は、速度を上げるとコンスタントに入ってくるロードノイズ113km/h巡航時の室内騒音は70dBAだったが、タイカン・ターボは同条件で66dBAだった。

購入と維持 ★★★★★★★☆☆☆

テスラは2020年にモデルSの右ハンドル仕様の生産を中断し、その後はいまだ再開していない。英国へ再上陸したものの、量販モデルというよりはブランドのイメージリーダーとしての意味合いのほうが強い。

左ハンドルのほうがいい、というユーザーもいるだろう。そうでなくても、もしも世界最高の加速を誇るサルーンがほしいなら、ハンドル位置など気にしないかもしれない。

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モデルSの残価予想データはない。テスラのリセールバリューはかなりいいほうなのだが、なんといっても左ハンドルのみというのがマイナス材料すぎて予測が立たないのだ。    JOHN BRADSHAW

しかしながら、常につきまとうのが、テスラの移り気への懸念だ。いつプレイドの右ハンドル版を造りはじめるか、わかったものではない。そして、英国では左ハンドル車の残価率は壊滅的に低い。

モデルSの現在の最廉価仕様であるロングレンジは9万3480ポンド(約1701万円)だが、11万3480ポンド(約2065万円)のプレイドがほしいなら、オプションも高くつく。しかも、今はリストが公表されているのみなので、理想の仕様にするにはいろいろ発売を待たなければならない。

トラックパッケージが英国へ導入される時期も未定だ。ドイツ仕様では、セラミックブレーキが1万1945ポンド(約217万円)、鍛造ホイールが3985ポンド(約73万円)に相当する金額で設定されている。

ドライブトレインの効率に関しては、いまだ多くの競合モデルよりはるか上をいく。テストコースでは、1.6kmストレートを走るたびに充電量が5%ずつ減っていったが、平均電費は5.0km/kWhをマークし、計算上は484km走行可能。ブガッティ・ヴェイロンが12km/L以上走るのと同じくらい驚きだ。

スーパーチャージャー充電ネットワークは、やはりテスラ車に乗るとついてくる大きな特典だ。そして、プレイドの充電性能が他を圧倒すれば万々歳なのだが、計測してみるとポルシェアウディ、はたまたヒョンデやキアが用意する800Vシステム搭載車にきわめてわずかながらも及ばない。それでも、10〜90%の充電時間が38分というのは十分に早い部類だ。

スペック

レイアウト

モデルSは主にアルミ素材を用いた専用アーキテクチャーを使用。バッテリーは横置きモジュールを5つ組み合わせ、構造体の一部を構成している。

サスペンションは前ダブルウィッシュボーン/後5リンク。モーターは、標準モデルが前後1基ずつ、プレイドはリア側が2基になる3基構成。テスト車の前後重量配分は実測で48:52だった。

パワーユニット

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モデルSのシャシーはアルミ主体で、床下のバッテリーを構造の一部として使用。モーターは、標準モデルが前後1基ずつ、プレイドはリア側が2基になる3基構成だ。

駆動方式:フロント/リア横置き四輪駆動
形式:永久磁石同期電動機
駆動用バッテリーリチウムイオンニッケルマグネシウム・コバルト)・407V・100.0kWh(グロス値)/97.0kWh(ネット値)
最高出力:1034ps/-rpm
最大トルク:-kg-m/-rpm
最大エネルギー回生性能:-kW
許容回転数:-rpm
馬力荷重比:478ps/t
トルク荷重比:-kg-m/t

ボディ/シャシー

全長:5021mm
ホイールベース:2960mm
オーバーハング(前):961mm
オーバーハング(後):1100mm

全幅(ミラー含む):2189mm
全幅(両ドア開き):3760mm

全高:1431mm
全高:(テールゲート開き):2090mm

足元長さ(前):最大1115mm
足元長さ(後):840mm
座面~天井(前):最大1060mm
座面~天井(後):885mm

積載容量・前/後:89L/709~1739L

構造:アルミモノコック
車両重量:2167kg(公称値)/2220kg(実測値)
抗力係数:0.21
ホイール前/後:9.5Jx21/10.5Jx21
タイヤ前/後:265/35 ZR21 101Y XL/295/30 ZR21 102Y XL
ミシュラン・パイロットスポーツ4S T2
スペアタイヤ:なし(パンク修理剤)

変速機

形式:1速リダクションギア(各モーター毎)
ギア比
リダクション比:7.56:1 
1000rpm時車速:17.9km/h
113km/h/129km/h時モーター回転数:6362rpm/7271rpm

電力消費率

AUTOCAR実測値:消費率
総平均:5.0km/kWh
ツーリング:4.7km/kWh
動力性能計測時:1.3km/kWh

メーカー公表値:消費率
低速(市街地):7.1km/kWh
中速(郊外):-km/kWh
高速(高速道路):6.6km/kWh
超高速:5.1km/kWh
市街地:-km/kWh
混合:5.3km/kWh

公称航続距離:600km
テスト時航続距離:484km
CO2排出量:0g/km

サスペンション

前:ダブルウィッシュボーン/エアスプリング、スタビライザ
後:マルチリンク/エアスプリング、スタビライザ

ステアリング

形式:電動機械式、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:2.3回転
最小回転直径:12.3m

ブレーキ

前:395mm通気冷却式ディスク
後:365mm通気冷却式ディスク
制御装置:ABS
ハンドブレーキ電動式・全自動

静粛性

アイドリング:-dBA
全開走行時(145km/h):74dBA
48km/h走行時:60dBA
80km/h走行時:66dBA
113km/h走行時:70dBA

安全装備

ABS/ESC/LKA/前後AEB(交通弱者検知)/死角警告
Euro N CAP:5つ星
乗員保護性能:成人94%/子供91%
交通弱者保護性能:85%
安全補助装置性能:98%

発進加速

テスト条件:乾燥路面/気温17℃
0-30マイル/時(48km/h):1.2秒
0-40(64):1.6秒
0-50(80):2.0秒
0-60(97):2.4秒
0-70(113):2.8秒
0-80(129):3.3秒
0-90(145):3.9秒
0-100(161):4.6秒
0-110(177):5.4秒
0-120(193):6.2秒
0-130(209):7.1秒
0-140(225):8.2秒
0-150(241):9.4秒
0-160(257):10.9秒
0-402m発進加速:9.6秒(到達速度:244.8km/h)
0-1000m発進加速:17.9秒(到達速度:255.1km/h)

ライバルの発進加速

ライバルの発進加速
ブガッティ・ヴェイロン・スーパースポーツ・ワールドレコードエディション(2011年)
テスト条件:乾燥路面・強風/気温6℃
0-30マイル/時(48km/h):1.4秒
0-40(64):1.8秒
0-50(80):2.2秒
0-60(97):2.6秒
0-70(113):3.1秒
0-80(129):3.6秒
0-90(145):4.3秒
0-100(161):5.0秒
0-110(177):5.7秒
0-120(193):6.6秒
0-130(209):7.6秒
0-140(225):8.8秒
0-150(241):10.2秒
0-160(257):11.8秒
0-402m発進加速:10.1秒(到達速度:238.0km/h)
0-1000m発進加速:18.0秒(到達速度:295.2km/h)

キックダウン加速

20-40mph(32-64km/h):0.8秒

30-50(48-80):0.8秒

40-60(64-97):0.8秒

50-70(80-113):0.9秒

60-80(97-129):1.0秒

70-90(113-145):1.1秒

80-100(129-161):1.3秒

90-110(145-177):1.4秒

100-120(161-193):1.6秒

110-130(177-209):1.8秒

120-140(193-225):2.0秒

130-150(209-241):2.2秒

140-160(225-257):2.7秒

制動距離

テスト条件:乾燥路面/気温17℃
30-0マイル/時(48km/h):7.8m
50-0マイル/時(80km/h):21.6m
70-0マイル/時(113km/h):43.1m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.44秒

ライバルの制動距離

ブガッティ・ヴェイロン・スーパースポーツ・ワールドレコードエディション(2011年)
テスト条件:乾燥路面・強風/気温6℃
30-0マイル/時(48km/h):8.5m
50-0マイル/時(80km/h):23.0m
70-0マイル/時(113km/h):45.2m

結論 ★★★★★★★☆☆☆

市販車最高の加速性能を持つクルマをつくろうと志したテスラは、たしかにそれを成し遂げた。このモデルSプレイドのパフォーマンスレベルは、これまでなら億単位の金額を積まないと買えなかったハイパーカー並みだが、それを機能的なサルーンで実現してみせたのだ。

11万3480ポンド(約2065万円)という価格は、絶対値としては決して安くはないが、同等の加速をするクルマと比較すればとんでもなく安い。パフォーマンスと価格のバランスという話なら、間違いなく成功を収めた1台だ。

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結論:驚くほど速いが、全面的に熟成されたパフォーマンスサルーンではなかった。    JOHN BRADSHAW

それ以外の点でもよくできたクルマだ。すばらしく効率的で、結果として航続距離は長い。しかもキャビンは広く、室内に用いられる技術は万人受けはせずとも十全に機能し、ほかの自動車メーカーとの差別化もバッチリだ。

しかしながら、日々のルーティンワークをこなすには十分満足できても、その洗練度はハンドリングを引き換えにできるだけのエクスキューズにはならない。よくてせいぜい活気のない、最悪はよそよそしくてイヤな気分にさえなるそれは、とくにトラックモードで思い知らされる。このモード、クローズドコースを攻めるようなときにはさらに、ブレーキ性能の不足も突きつけてくる。

このプレイド、とんでもなくみごとな仕事をやり遂げたのも事実だが、パフォーマンスサルーンであれば一芸にとどまらない能力を期待したいのもまた人情というもの。その一芸がどれだけとんでもない偉業であってもだ。

担当テスターのアドバイス

イリヤ・バプラート

はじめてプレイドのスロットルペダルを蹴っ飛ばしたときには、あまりの加速力によろめいたが、それでも全力は発揮されないスポーツモードだった。それでも、これを負かせるパフォーマンスカーはほとんど見つからないくらい速いのだから驚きだ。

マット・ソーンダース

テスト車にステアリングホイールが装着されていたのを喜ぶべきか悲しむべきか、確信が持てずにいる。例の操縦桿的な操縦系を試したかったのだ。しかし、丸いリムの有無にかかわらずギア比は一緒と聞いて、ぐるぐる回してみた途端イヤになる可能性が頭に浮かんだ。

オプション追加のアドバイス

操縦系はちゃんと丸いリムのステアリングホイールを選びたい。ホイールは21インチにして、来るべきトラックパッケージのブレーキを迎え入れる準備をしておきたい。パフォーマンスを引き出した走りには必須アイテムだ。エンハンストオートパイロットと完全自動運転機能は、欧州では用をなさない。

改善してほしいポイント

・早く右ハンドル仕様を用意していただきたい。
・このクルマに見合ったブレーキのアップグレードが必要だ。とくに、エネルギー回生をオフにした場合はそれを痛感する。
・運動性には、もっと透明性と優れたバランスがほしい。手始めにステアリングを改良するべきだ。


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