右目を腫らしながらも「見えてはいた」というロドリゲス(左)。ロペスを打ち破る猛攻は圧巻だった。(C)Getty Images

 プエルトリコの名手がふたたび王座へ返り咲いた。

 現地8月12日ボクシングのIBF世界バンタム級王座決定戦12回戦が米メリーランド州で行われ、元王者で同級2位エマヌエル・ロドリゲスプエルトリコ)が、同級3位のメルビンロペスニカラグア)に判定(3-0)勝ち。約5年ぶりにベルトを手にした。

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 壮絶な戦いだった。ロペスの的確な攻撃を受け、中盤には右目上が大きく腫れる事態にも至ったロドリゲスだったが、的確に右のジャブとストレートを当ててポイントを稼いだ。そして圧巻だったのは最終12回だった。

 土壇場になって攻勢を強めたプエルトリカンは、残り50秒のところで左ボディー、さらに再開直後に顔面への連打で2度のダウンを奪取。そして残り10秒を切ったところで仕掛けると、時間切れとなってTKO決着とはならなかったが、3度目のダウンを奪った。

 2019年5月に井上尚弥(大橋)に2回TKOの完敗で王座から陥落していたロドリゲス。続く20年12月に実施されたレイマート・ガバリョ(フィリピン)とのWBC世界バンタム級暫定王座決定戦も判定の末に敗れ、タイトル戦線からは遠のいていた。

 しかし、昨年10月に行われた同級12回戦でゲーリー・アントニオラッセル(米国)を10回負傷判定勝ちで下してロペスへの挑戦権を獲得。そして今回の文字通りの大一番を制して見事に王座に返り咲いた。

 31歳が見せつけた闘志あふれる戦いぶりには、世界的な声価を高めている。米ボクシング専門サイト『Boxing Junkie』のマイケルローゼンタール記者は「ロドリゲスにとってベルト獲得はナオヤ・イノウエに大惨敗を喫して以来の出来事だ」とし、「彼の右目は痛々しく腫れあがっていたが、ロペスよりも優れた内容だった」と絶賛した。

 なお、試合後にロドリゲスは「俺はこの勝利をあげるために、家族と離れてメキシコで6か月も努力を続けてきた。俺は5年前までチャンピオンだった。そこから5年もかかったけど、またこうしてチャンピオンになれた」と感慨深くコメントしている。

 なお、昨年12月に4団体統一を果たした井上が転級によって、今年1月に全てのベルトを返上。それによってバンタム級は、井上の弟である拓真(大橋)がWBA、ジェイソン・マロニー(オーストラリア)がWBO、そして今年7月にノニト・ドネアを撃破したアレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)がWBCのタイトルをそれぞれ保持している。

 そうした状況下でロドリゲスは「サンティアゴが118ポンドで自分を倒せる選手はいないと言っているのを俺は見た。それは俺だ。彼を倒したい」と宣言。WBCとの2団体統一を誓っている。

 兄と同じく4団体統一を目指すであろう拓真の動向も含め、群雄割拠のバンタム級での戦いは興味深いものになりそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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