「ワンルーム投資」で損をする人があとを絶ちません。YouTubeで「不動産Gメン滝島」として“不動産業者に騙されないための情報”を発信している滝島一統氏は、ワンルーム投資で損をする元凶が、賃料を保証してもらえる「サブリース」にあると指摘します。なぜか。滝島氏の著書『誰でも儲かる、わけがない 初めての不動産投資必勝ルール 罠を見抜いてお金を増やす』(KADOKAWA)から、一部抜粋してご紹介します。

大損する元凶は「サブリース契約」にあり

ワンルーム投資の最大の問題は、「サブリース」です。

サブリースとは、不動産会社が家賃を一定程度保証してくれるものです。

サブリース業者が貸主(物件の所有者)から住戸を借り上げ、転貸人(入居者)と賃貸借契約を結びます。入居者はサブリース業者に家賃を支払い、その中から手数料を引いた額が貸主に保証賃料として支払われる仕組みです([図表1]参照)。

ワンルーム投資では、基本的にほとんどの物件にサブリースが付いており、不動産業界ではスキームワンルーム、スキーム物件などと呼んでいます。

不動産投資では入居者が入らない「空室リスク」があり、家賃が入らなければローンを貯蓄などから返さなければならず、大きな赤字になります。

サブリースの契約をすれば空室であっても家賃が入ってきますから、「それなら安心……」と思ってしまう人は少なくありません。しかし、それが大きな落とし穴なのです。

家賃から引かれる手数料が高い

サブリースがあると家賃が確実に入ってくる安心感(誤った安心感)があります。

しかし、デメリットがあります。前述のように、入居者から得た家賃の一部が、サブリース業者に「手数料」として吸い上げられることです。

手数料には明確な基準はなく、新築の時期は家賃の5〜10%程度、それ以降では同10〜20%程度です。家賃が10万円、手数料10〜20%なら、所有者に入ってくるのは8〜9万円です。この手数料は大きな負担です。

2,500万円の物件を頭金ゼロで購入する例を見ていきましょう。

登記費用と不動産取得税の約100万円のみ、自己資金として用意します(不動産会社が自社物件として販売するので仲介手数料はなしと仮定)。

頭金ゼロですから全額の2,500万円を金利1.5%、35年返済で借り入れます。

すると、毎月の返済額は7万6,500円です。

では収支はどうなるでしょうか。

不動産会社の想定では、家賃は9万円、年間108万円です。利回りは約4%です。

経費は固定資産税・都市計画税で10万円、修繕積立金・管理費が18万円、ローン返済が91万8,000円、火災保険料6万円です。

家賃収入108万円に対し、支出は125万8,000円。なんと年間で17万8,000円の赤字です。

さらにサブリースの手数料もかかります。この物件の場合、家賃の10%で年間10万8,000円です。実際の収入はサブリース手数料を引いた97万2,000円となり、ここから経費125万8,000円を引いた年間28万6,000円が赤字となるのです。

不労所得が得られるどころか、赤字を出し続けることになります。生活に余裕を持つため、将来に向けて資産形成するために投資をするのに、逆に毎月2万円以上の持ち出しになってしまうのでは、何のために投資したのか分かりません。

少なくとも5年で140万円以上もの損ですから、逆に生活が苦しくなってしまいます。

驚くのは、このシミュレーションは実際にワンルーム販売会社が自費出版している書籍からの引用だということです。

これだけでも驚きですが、さらにびっくりすることに、この物件のパンフレットには、「月2万円払うだけで2,500万円のマンションが手に入る」という趣旨のことが書いてありました。

収益どころか最初から月に2万円の持ち出しになることを正々堂々と謳い、むしろ、とても魅力的であるかのように書いているのです。ものは言い様とは言いますが、恐ろしいことです。

ワンルーム投資は罠だらけ

そのような結果になってしまう主な原因は、家賃から考えて物件価格が高いこと、頭金ゼロで借入額が多いこと、さらにサブリース手数料がかかること、の3つです。

家賃収入を得たり、ローン返済や税金の支払い等のお金の流れを「キャッシュフロー」と言います。

家賃収入だけではローンや経費が払いきれず持ち出しがあることを「キャッシュフローがマイナス」「キャッシュフローが赤字」などと言い、不動産投資としては「失敗」です。

しかし不動産会社の担当者は、「毎月2万円程度の持ち出しはあるけれど、ローンを完済すればマンションという資産が残る」と言います。本当でしょうか。

年間28万6,000円の持ち出しを35年続けると、合計1,001万円の持ち出しです。

もしも、もしもその時にマンションの価格が500万円上がっていれば、1,999万円得したことになります。1,000万円上がれば、2,499万円の得です。

しかし、高度成長などとっくに過ぎた日本において、35年後、ワンルームマンションの価格が新築時より上がっていることなどあるでしょうか。

「1,001万円持ち出したとしても、2,500万円で売れれば1,499万円の得です。だから、ワンルームは収支がマイナスでも問題ありません」、というのがワンルーム業者の常套句で、頭の中がファンタジーとしか言いようがありません。

なぜなら、35年間の間に家賃は下落し、修繕積立金と管理費は値上がりしますから、1,000万円程度の持ち出しでは済みません。加えて、300〜400万円の水回りを中心とした大規模修繕をする必要もあるからです。

それらを加味すると、ほとんどの場合、2,500万円のワンルームなら2,500万円程度支払うことになり、賃貸に出しても1円も得しません。

「でも大丈夫! 2,500万円払って2,500万円のマンションが手に入ったなら、ツーペイですよ、お客様!」

果たしてそうでしょうか?

考えてください。新築時に利回り4%前後のワンルームが、家賃が値下がりし、修繕積立金と管理費が値上がった状態で、新築当時と同じ価格を維持できるでしょうか?

未来のことは分かりませんが、今の不動産市況を考えると。その可能性はバラバラプラモデルの部品を箱に入れて振ったらたまたま完成していた確率くらい低いと思います。

個人的な予測ですが、よくて1,250万円くらい。悲観的観測だと500万円です。まとめると、頑張って節約して借金を抱えながら35年間かけて2,500万円払っても、1,250万円しか戻ってこないということです。

投資と呼べますかね、これ?

立地にかなりの希少性がある、嘘のような安い価格で買った、日本の経済成長が目覚ましく、不動産価格が高騰してワンルーム需要も爆発的な伸び、といった状況が起きれば売却によって大きなリターンが得られるということもありますが、それを期待するのはもはやギャンブルを通り越して奇跡を祈るようなものでしかありません。

日本において、希少立地でもない限り、長期的には価格は下がるとみるのが自然です。毎月、持ち出しがあり、なおかつ価格も下がっていくのなら、価値が目減りしていく資産のために毎月お金をつぎ込んでいるようなものです。

毎月赤字。価格はどんどん下がる。ということは……? 少し考えれば分かるはずなのに、ワンルーム投資の罠にかかってしまう人が少なくないのです。

滝島 一統

株式会社光文堂インターナショナル

代表

(※写真はイメージです/PIXTA)